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本編
75.白豚王子の謝罪と涙
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瞬く間に、大量にあった筈の砂糖菓子が第一王子によって食べ尽くされてしまった。
圧倒され呆然としていた貴族が我に返り、第一王子の姿を目にして声を上げる。
「何方かと思えば、これはこれは、白豚王子ではありませんか! このような所にお出でになるとはお珍しい」
貴族は砂糖菓子を第一王子に食べ尽くされてしまった腹癒せなのか、慇懃無礼な態度で第一王子を『白豚王子』と揶揄して、獣人達を『獣』と蔑み嘲笑する。
ガトー王子は暫し、信じ難いといった面持ちで第一王子を見つめていた。
御供達は急に静止したガトー王子に戸惑い、ガトー王子の視線を追って第一王子の存在に気付く。
「……あれは、第一王子ですか?」
「白豚王子とはまた随分な言われ様ですな……」
第一王子を見つめながら、ガトー王子は疑問に思っていた。
(……また……どうしてまた、こんな所に第一王子がいるんだ? ……それに、あの危険な代物を食べ尽くしてしまった……一つ残らず、一欠片たりとも残さずに、全てだ……何故、そんな事をする? 何故、そんな事ができる?)
ガトー王子が疑問に思考を巡らせれば、見捨てられた者達を救う為に身体を張って脅威に立ち向かっていた、第一王子の姿が脳裏を過る。
(……まさか……また、助けようとしたのか? ……衰弱する難民達を助けようと、難民達が食べてしまわないようにと、第一王子は自らが全て食べ尽くしたのか!? ……自国の国民だけではなく他国からの難民まで、魔法使いにとっては侮蔑の対象である獣人でも……第一王子はその身体を張って、救おうとしてくれるのか……)
ガトー王子は胸がじんわりと熱くなっていくように感じた。
「…………」
第一王子は難民達を見回すと、砂糖菓子を手に取ろうとしていた子供の前で、膝を折り地に手を突いた。
そして、第一王子は獣人達に対して深々と頭を垂れて言う。
「……ご、ごめんね……謝って許される事じゃないけど、それでも……本当に、本当にごめん……ごめんなさい……」
第一王子の謝罪する姿を見て、ガトー王子達は驚嘆する。
「「「!!?」」」
ガトー王子は強い衝撃を受け思う。
(……王族が、謝罪した!? ……王国最高位の身分である王族が、身分も無いような下賤の者に! ……王族でありながらも、第一王子は頭を垂れて謝罪するのか!! ……それも、臣下である貴族の犯した罪を、己の罪として重く受け止めて、責を負い深謝するのか……)
その姿が、その姿勢が、ガトー王子の目には元来あるべき王族の姿のように映り、ガトー王子は感銘を受けていた。
暫くして、第一王子は深々と下げていた頭を上げ、ゆっくりと難民達を見渡して、目の前の子供に視線を戻す。
ぽろり
すると、第一王子の目元から、透明な雫が零れ落ちた。
涙の雫は次から次へと溢れ出て、ぽろぽろと零れ落ちていく。
涙を堪えようとする第一王子の仕草が見て取れるが、溢れる涙は止まる事を知らないように零れ続ける。
さめざめと泣く第一王子の姿を見て、ガトー王子の胸は詰まり切なくなっていく。
(……何故、涙を零している? 何故、そんなに泣いている? ……第一王子は……難民達の為に、獣人達の為に、心を痛めてくれるのか? ……それとも、何か辛く悲しい思いでもしているのか? ……ああ、そんなに涙を零すな……泣くな……)
ガトー王子は、獣人の為に涙してくれる事を嬉しく思う反面、第一王子に心を痛めて欲しくないとも、辛く悲しい思いをして泣いて欲しくないとも思う。
第一王子は泣き濡れる頬を拭いながら、何かを思い出したように、持っていた鞄の中から包みを取り出して子供に差し出す。
「……あっ、そうだ、お菓子持っていたんだ…………さっきの綺麗なお菓子の代わりにはならないけど…………これ、良かったら受け取って、食べて……」
「……ぉ……お菓子? ……」
包みを開けようとしてもたついている子供を手伝い、第一王子は包みを開けてやり手渡す。
包みの中にあったのは、雑穀や木の実を砕いたような粒状の物だった。
(……あれは、なんだろうか? 何かの材料だろうか? ……魔法石のような臭いはしないし、嫌な臭いもしないな……危険な代物ではなさそうだが…………否、むしろ、良い匂いがする……ほんのり甘くて、美味そうな匂いが……)
圧倒され呆然としていた貴族が我に返り、第一王子の姿を目にして声を上げる。
「何方かと思えば、これはこれは、白豚王子ではありませんか! このような所にお出でになるとはお珍しい」
貴族は砂糖菓子を第一王子に食べ尽くされてしまった腹癒せなのか、慇懃無礼な態度で第一王子を『白豚王子』と揶揄して、獣人達を『獣』と蔑み嘲笑する。
ガトー王子は暫し、信じ難いといった面持ちで第一王子を見つめていた。
御供達は急に静止したガトー王子に戸惑い、ガトー王子の視線を追って第一王子の存在に気付く。
「……あれは、第一王子ですか?」
「白豚王子とはまた随分な言われ様ですな……」
第一王子を見つめながら、ガトー王子は疑問に思っていた。
(……また……どうしてまた、こんな所に第一王子がいるんだ? ……それに、あの危険な代物を食べ尽くしてしまった……一つ残らず、一欠片たりとも残さずに、全てだ……何故、そんな事をする? 何故、そんな事ができる?)
ガトー王子が疑問に思考を巡らせれば、見捨てられた者達を救う為に身体を張って脅威に立ち向かっていた、第一王子の姿が脳裏を過る。
(……まさか……また、助けようとしたのか? ……衰弱する難民達を助けようと、難民達が食べてしまわないようにと、第一王子は自らが全て食べ尽くしたのか!? ……自国の国民だけではなく他国からの難民まで、魔法使いにとっては侮蔑の対象である獣人でも……第一王子はその身体を張って、救おうとしてくれるのか……)
ガトー王子は胸がじんわりと熱くなっていくように感じた。
「…………」
第一王子は難民達を見回すと、砂糖菓子を手に取ろうとしていた子供の前で、膝を折り地に手を突いた。
そして、第一王子は獣人達に対して深々と頭を垂れて言う。
「……ご、ごめんね……謝って許される事じゃないけど、それでも……本当に、本当にごめん……ごめんなさい……」
第一王子の謝罪する姿を見て、ガトー王子達は驚嘆する。
「「「!!?」」」
ガトー王子は強い衝撃を受け思う。
(……王族が、謝罪した!? ……王国最高位の身分である王族が、身分も無いような下賤の者に! ……王族でありながらも、第一王子は頭を垂れて謝罪するのか!! ……それも、臣下である貴族の犯した罪を、己の罪として重く受け止めて、責を負い深謝するのか……)
その姿が、その姿勢が、ガトー王子の目には元来あるべき王族の姿のように映り、ガトー王子は感銘を受けていた。
暫くして、第一王子は深々と下げていた頭を上げ、ゆっくりと難民達を見渡して、目の前の子供に視線を戻す。
ぽろり
すると、第一王子の目元から、透明な雫が零れ落ちた。
涙の雫は次から次へと溢れ出て、ぽろぽろと零れ落ちていく。
涙を堪えようとする第一王子の仕草が見て取れるが、溢れる涙は止まる事を知らないように零れ続ける。
さめざめと泣く第一王子の姿を見て、ガトー王子の胸は詰まり切なくなっていく。
(……何故、涙を零している? 何故、そんなに泣いている? ……第一王子は……難民達の為に、獣人達の為に、心を痛めてくれるのか? ……それとも、何か辛く悲しい思いでもしているのか? ……ああ、そんなに涙を零すな……泣くな……)
ガトー王子は、獣人の為に涙してくれる事を嬉しく思う反面、第一王子に心を痛めて欲しくないとも、辛く悲しい思いをして泣いて欲しくないとも思う。
第一王子は泣き濡れる頬を拭いながら、何かを思い出したように、持っていた鞄の中から包みを取り出して子供に差し出す。
「……あっ、そうだ、お菓子持っていたんだ…………さっきの綺麗なお菓子の代わりにはならないけど…………これ、良かったら受け取って、食べて……」
「……ぉ……お菓子? ……」
包みを開けようとしてもたついている子供を手伝い、第一王子は包みを開けてやり手渡す。
包みの中にあったのは、雑穀や木の実を砕いたような粒状の物だった。
(……あれは、なんだろうか? 何かの材料だろうか? ……魔法石のような臭いはしないし、嫌な臭いもしないな……危険な代物ではなさそうだが…………否、むしろ、良い匂いがする……ほんのり甘くて、美味そうな匂いが……)
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