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本編
42.白豚王子は城下町に行く
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城内は広い、めちゃくちゃ広い。
そして、城を出る為に門を潜るのも本来は一苦労なのだが、僕は日々のランニングでそれらをショートカットできる場所を知っていた。
勿論、騎士達が常に巡回しているので、通常は出入りなどできる筈はないのだが、僕は騎士達と遭遇してしまうと気まずくなってしまうので、出くわさない為にと巡回時間を全て把握していた。
なので、巡回の合間を掻い潜り外に出る事も容易くできてしまう訳なのだ。
(別に、悲しくなんてない……ちょっと寂しいけど……)
見つからないよう隠れて移動するのは、スリルがあってちょっとドキドキする。
(スパイごっこみたいで、ちょっとだけ楽しいかもしれない)
そんな事を思いながら、僕はスパイになりきって騎士達の巡回を掻い潜っていく。
物陰に隠れ、隙を見て駆け出し、茂みに滑り込み、塀を乗り越えて、僕は城の外へと飛び出した。
ぷよん、ぽよよよよん、ぱいん、ぽよぽよ、ぼよよーん、ぷよよよよん。
脱出成功! ミッションクリア!! テレレッテレー♪(脳内効果音)
そして、僕はワクワクする気持ちで城下町へと向かって走ったのだ。
◆
城下町の入り口に到着すると、その光景に僕は感嘆の声を上げた。
「うわぁー! 本物だぁー!!」
大好きだったゲームと同じファンタジー世界が、現実世界として僕の目の前に広がっているのだ。
僕は感激して、辺りをひたすら見回しながら歩いてしまう。
城下町の雰囲気は明るく華やかで、とても賑わっていた。
多くの人々が行き交う街中には、魔法の杖や長いローブや大きな帽子を身に纏った魔法使いを思わせる装いの人が沢山いる。
店先には魔道具や様々な商品がずらりと並び、商品宣伝用の魔法ポップなどが常時展開されていた。
異国風の装いの人は、国外から訪れている商人や旅人なのだろうか、店先で交渉してる者や、魔道具を買い求め持ち歩いている者が多い。
そこは、正にゲームで見た魔法使いの国、アイス・ランド王国の城下町だった。
物珍しげに辺りをキョロキョロと見回しながら歩く僕は、傍から見たら周囲から少し浮いていて、地元人でない事は明らかだろう。
あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、興味を引かれるままに見て回る。
そんな事をしていたせいか、僕は不意に誰かとぶつかってしまった。
「あ、ぶぅっ!?」
ぶつかった勢いで、僕はゴロンと地べたに転がり、相手もズシャッと倒れ伏す。
僕が慌てて起き上がり見ると、その相手は僕よりも少し小さい少年だった。
「ご、ごめん! だ、だいじょうぶ?」
「……っ……」
手を差し出して僕が声をかけると、その少年は僕に目もくれず走り出して行ってしまう。
呆気に取られてポカンとしていた僕は、ローブの中がなんだかスカスカするなと、ベルトが軽くなったなと思い、チラリとお腹の辺りに目を向ける。
「……あっ! ポーチがない!?」
僕はポーチを盗まれたのだと気付き、走り去った少年を急いで追いかける。
――そんな二人の姿を見ていた不審な人物の影に、白豚王子は気付いていなかった。――
◆
少年は裕福そうな子供のポーチを盗み、逃げきったと思っていた。
中身を確認しようとしてポーチに手をかけると、何か音が聞こえてくる。
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
少年がなんだろうと、音のする方へと訝しげな視線を向けると、丸いシルエットがどんどん近付いて来る。
「待てぇぇぇぇ!」
「げぇっ!?」
それが先程ポーチを盗んだ子供だと気付き、少年は慌てて逃げる。
「くそっ、見つかったか!」
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
少年は必死に走り逃げるのだが、その子供はどんどんと近付いて来る。
「待てえぇぇぇぇ! 僕のポーチ返してよぉぉぉぉ!!」
「なっ! なんて足の早さだ!! なんでデブなのに足が早いんだよ!?」
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
このままでは追いつかれて子供に捕まってしまうと少年は焦り、何か逃げ道は無いかと考える。
「ちっ……仕方ない、裏路地に逃げるか……」
少年は子供から逃れる為に、正常な者ならば近付く事のない、決して踏み入る事のない、この国の暗部へと逃げ込んだ。
◆
そして、城を出る為に門を潜るのも本来は一苦労なのだが、僕は日々のランニングでそれらをショートカットできる場所を知っていた。
勿論、騎士達が常に巡回しているので、通常は出入りなどできる筈はないのだが、僕は騎士達と遭遇してしまうと気まずくなってしまうので、出くわさない為にと巡回時間を全て把握していた。
なので、巡回の合間を掻い潜り外に出る事も容易くできてしまう訳なのだ。
(別に、悲しくなんてない……ちょっと寂しいけど……)
見つからないよう隠れて移動するのは、スリルがあってちょっとドキドキする。
(スパイごっこみたいで、ちょっとだけ楽しいかもしれない)
そんな事を思いながら、僕はスパイになりきって騎士達の巡回を掻い潜っていく。
物陰に隠れ、隙を見て駆け出し、茂みに滑り込み、塀を乗り越えて、僕は城の外へと飛び出した。
ぷよん、ぽよよよよん、ぱいん、ぽよぽよ、ぼよよーん、ぷよよよよん。
脱出成功! ミッションクリア!! テレレッテレー♪(脳内効果音)
そして、僕はワクワクする気持ちで城下町へと向かって走ったのだ。
◆
城下町の入り口に到着すると、その光景に僕は感嘆の声を上げた。
「うわぁー! 本物だぁー!!」
大好きだったゲームと同じファンタジー世界が、現実世界として僕の目の前に広がっているのだ。
僕は感激して、辺りをひたすら見回しながら歩いてしまう。
城下町の雰囲気は明るく華やかで、とても賑わっていた。
多くの人々が行き交う街中には、魔法の杖や長いローブや大きな帽子を身に纏った魔法使いを思わせる装いの人が沢山いる。
店先には魔道具や様々な商品がずらりと並び、商品宣伝用の魔法ポップなどが常時展開されていた。
異国風の装いの人は、国外から訪れている商人や旅人なのだろうか、店先で交渉してる者や、魔道具を買い求め持ち歩いている者が多い。
そこは、正にゲームで見た魔法使いの国、アイス・ランド王国の城下町だった。
物珍しげに辺りをキョロキョロと見回しながら歩く僕は、傍から見たら周囲から少し浮いていて、地元人でない事は明らかだろう。
あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、興味を引かれるままに見て回る。
そんな事をしていたせいか、僕は不意に誰かとぶつかってしまった。
「あ、ぶぅっ!?」
ぶつかった勢いで、僕はゴロンと地べたに転がり、相手もズシャッと倒れ伏す。
僕が慌てて起き上がり見ると、その相手は僕よりも少し小さい少年だった。
「ご、ごめん! だ、だいじょうぶ?」
「……っ……」
手を差し出して僕が声をかけると、その少年は僕に目もくれず走り出して行ってしまう。
呆気に取られてポカンとしていた僕は、ローブの中がなんだかスカスカするなと、ベルトが軽くなったなと思い、チラリとお腹の辺りに目を向ける。
「……あっ! ポーチがない!?」
僕はポーチを盗まれたのだと気付き、走り去った少年を急いで追いかける。
――そんな二人の姿を見ていた不審な人物の影に、白豚王子は気付いていなかった。――
◆
少年は裕福そうな子供のポーチを盗み、逃げきったと思っていた。
中身を確認しようとしてポーチに手をかけると、何か音が聞こえてくる。
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
少年がなんだろうと、音のする方へと訝しげな視線を向けると、丸いシルエットがどんどん近付いて来る。
「待てぇぇぇぇ!」
「げぇっ!?」
それが先程ポーチを盗んだ子供だと気付き、少年は慌てて逃げる。
「くそっ、見つかったか!」
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
少年は必死に走り逃げるのだが、その子供はどんどんと近付いて来る。
「待てえぇぇぇぇ! 僕のポーチ返してよぉぉぉぉ!!」
「なっ! なんて足の早さだ!! なんでデブなのに足が早いんだよ!?」
ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ
このままでは追いつかれて子供に捕まってしまうと少年は焦り、何か逃げ道は無いかと考える。
「ちっ……仕方ない、裏路地に逃げるか……」
少年は子供から逃れる為に、正常な者ならば近付く事のない、決して踏み入る事のない、この国の暗部へと逃げ込んだ。
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