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本編
38.バニラ王子からの差し入れ
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翌日、訓練場に現れた白豚王子に騎士団長は用意していた訓練用の木剣を手渡した。
「この道は易しいものではありません。道は険しく厳しいものです。ですが、怠らず精進し続ければ、それは必ず貴方の力になり、貴方を救います。だから、決して諦めてはなりません! 邁進あるのみ!!」
「……は、はい! ……」
強面の騎士団長の真剣な表情に驚いたのか、白豚王子はぷるぷると震えて、木剣を強く強く握り締めていた。
騎士団長の厳しい指導にも、白豚王子は投げ出す事もなく、一生懸命に取り組んでいた。
「そうそう、なかなか筋が良い。体幹はしっかりしているようだ」
厳しい騎士団長が珍しく褒めても、白豚王子はニコリとも笑う事なく、終始、緊張した面持ちで真剣に取り組んでいた。
「……ま、まだ、できます! もっと、教えて下さい!! ……」
その様子に、騎士団員達は本当に白豚王子は成長し、心を入れ替え変わろうとしているのだと、感心し見直した。
そんな白豚王子の姿を騎士団員達は微笑ましく見守り、いつもよりも和やかな雰囲気で訓練は行われた。
「よし、本日の訓練はここまで!! 各自休憩!」
騎士団長の号令と共に、厳しい訓練が終わり休憩に入る。
騎士団員達が一息付いていると、騎士団長の前に人影が現れた。
「訓練、お疲れ様です。ベルガモット団長」
そこに現れたのは、バニラ王子と宰相の姿だった。
「……これは、バニラ殿下と宰相殿。このような形で失礼致しました……」
「あ、いえいえ、そのまま楽にしていてください! 休憩中ですし……」
崩していた様相を正そうとする騎士団長をバニラ王子が止める。
「ならば、失礼して………ご要件はおありですか?」
「はい、いつもお世話になっている騎士団の皆さんに、何かお礼がしたいと思いまして……宰相殿に相談させて頂いて、差し入れを用意したんです。休憩中に皆さんに食べてもらおうと思いまして……」
そう言って、バニラ王子は騎士団長や団員達に天使のような微笑みを向ける。
敬愛する王族の天使のような王子に労われて、喜ばない臣下がいる筈がない。
「それは、至極幸福な事です。お心遣い感謝します」
「喜んで頂けると僕も嬉しいです。部屋に用意しているので、案内しますね」
騎士団長は団員達を呼び集め、バニラ王子に連れ立って歩こうとして、ふと白豚王子がいない事に気が付く。
「……第一王子の姿が見当たらないな……どちらに行かれた?」
「第一王子がこちらにいらしたんですか?」
「なっ! 第一王子が!?」
騎士団長の言葉にバニラ王子は不思議そうに訊き返し、宰相は酷く驚いた様子でいた。
「えぇ、本日から剣術の訓練に参加されているんです。これが、予想以上に筋が良いようで……」
「おお、そうなのですか? 剣術の才能が有るとは素晴らしいですね!」
「あの第一王子が剣術を? 更に才が有る? ご冗談を……」
皆が辺りをキョロキョロと見回して探すが、白豚王子の姿は見当たらなかった。
「……訓練が終了してから姿が見えないようなので、離宮に帰られたのでしょう」
「そうですか、ご一緒したかったのですが、残念です……」
「第一王子などいない方が良いのです! 何かと問題を起こしますからな!!」
「そこまで、警戒する必要はありませんよ。第一王子は己を改め、変わろうと努力しているのですから」
「そうなのですね、ならば僕も応援したいです! これからはもっと、ご一緒できれば良いのですが……」
バニラ王子は騎士団と話しながら、チラッと宰相の方を伺い見る。
宰相は白豚王子の事を鼻で笑い、バニラ王子に言い聞かせた。
「……はっ……まさか、そんな訳がありませんな……きっと、何か良からぬ事でも企んでいるに違いありません……バニラ殿下、騙されてはなりません!」
そんな話をしながら、騎士団員を引き連れたバニラ王子一行は部屋の前に到着する。
そして、部屋の扉を開けた。
「…………第一王子? …………」
その先には、白豚王子の姿があった。
◆
「この道は易しいものではありません。道は険しく厳しいものです。ですが、怠らず精進し続ければ、それは必ず貴方の力になり、貴方を救います。だから、決して諦めてはなりません! 邁進あるのみ!!」
「……は、はい! ……」
強面の騎士団長の真剣な表情に驚いたのか、白豚王子はぷるぷると震えて、木剣を強く強く握り締めていた。
騎士団長の厳しい指導にも、白豚王子は投げ出す事もなく、一生懸命に取り組んでいた。
「そうそう、なかなか筋が良い。体幹はしっかりしているようだ」
厳しい騎士団長が珍しく褒めても、白豚王子はニコリとも笑う事なく、終始、緊張した面持ちで真剣に取り組んでいた。
「……ま、まだ、できます! もっと、教えて下さい!! ……」
その様子に、騎士団員達は本当に白豚王子は成長し、心を入れ替え変わろうとしているのだと、感心し見直した。
そんな白豚王子の姿を騎士団員達は微笑ましく見守り、いつもよりも和やかな雰囲気で訓練は行われた。
「よし、本日の訓練はここまで!! 各自休憩!」
騎士団長の号令と共に、厳しい訓練が終わり休憩に入る。
騎士団員達が一息付いていると、騎士団長の前に人影が現れた。
「訓練、お疲れ様です。ベルガモット団長」
そこに現れたのは、バニラ王子と宰相の姿だった。
「……これは、バニラ殿下と宰相殿。このような形で失礼致しました……」
「あ、いえいえ、そのまま楽にしていてください! 休憩中ですし……」
崩していた様相を正そうとする騎士団長をバニラ王子が止める。
「ならば、失礼して………ご要件はおありですか?」
「はい、いつもお世話になっている騎士団の皆さんに、何かお礼がしたいと思いまして……宰相殿に相談させて頂いて、差し入れを用意したんです。休憩中に皆さんに食べてもらおうと思いまして……」
そう言って、バニラ王子は騎士団長や団員達に天使のような微笑みを向ける。
敬愛する王族の天使のような王子に労われて、喜ばない臣下がいる筈がない。
「それは、至極幸福な事です。お心遣い感謝します」
「喜んで頂けると僕も嬉しいです。部屋に用意しているので、案内しますね」
騎士団長は団員達を呼び集め、バニラ王子に連れ立って歩こうとして、ふと白豚王子がいない事に気が付く。
「……第一王子の姿が見当たらないな……どちらに行かれた?」
「第一王子がこちらにいらしたんですか?」
「なっ! 第一王子が!?」
騎士団長の言葉にバニラ王子は不思議そうに訊き返し、宰相は酷く驚いた様子でいた。
「えぇ、本日から剣術の訓練に参加されているんです。これが、予想以上に筋が良いようで……」
「おお、そうなのですか? 剣術の才能が有るとは素晴らしいですね!」
「あの第一王子が剣術を? 更に才が有る? ご冗談を……」
皆が辺りをキョロキョロと見回して探すが、白豚王子の姿は見当たらなかった。
「……訓練が終了してから姿が見えないようなので、離宮に帰られたのでしょう」
「そうですか、ご一緒したかったのですが、残念です……」
「第一王子などいない方が良いのです! 何かと問題を起こしますからな!!」
「そこまで、警戒する必要はありませんよ。第一王子は己を改め、変わろうと努力しているのですから」
「そうなのですね、ならば僕も応援したいです! これからはもっと、ご一緒できれば良いのですが……」
バニラ王子は騎士団と話しながら、チラッと宰相の方を伺い見る。
宰相は白豚王子の事を鼻で笑い、バニラ王子に言い聞かせた。
「……はっ……まさか、そんな訳がありませんな……きっと、何か良からぬ事でも企んでいるに違いありません……バニラ殿下、騙されてはなりません!」
そんな話をしながら、騎士団員を引き連れたバニラ王子一行は部屋の前に到着する。
そして、部屋の扉を開けた。
「…………第一王子? …………」
その先には、白豚王子の姿があった。
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