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本編
19.傾国の魔女が残した醜い子
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アイス・ランド王国の王族は特に美男美女揃いと国内外でも有名だった。
その中で白豚王子だけが異質で、醜い姿をしていたのだ。
僕の陰口を叩いていた下位貴族達が、また僕を一瞥して噂話をする。
「……それにしても……違い過ぎる……」
僕の容姿はどの部分を見てみても、国王の容姿とはまるで違い、似ても似つかなかった。
それも、王族の中で僕だけが丸々と肥え太り酷く醜い、異質なのだ。
「……やはり、あの噂は……本当なのでしょう……」
「……そうでしょう、そうでしょう……あのようにお美しい国王陛下の御子が、あんなにも醜い筈がないのですから……それも、あの『傾国の魔女』とも謳われた、絶世の美女である妾妃との間の御子ですよ……」
僕の母とされる妾妃は、その類稀な美貌から国王に見初められ妾妃に召し上げられた、元は放浪の民だった。
王国が傾くと言われるほど、国王からの寵愛を一身に受けていた、絶世の美女だ。
鮮やかに艶めくワインレッドの波打つ長い髪、眩く煌めく宝石のようなルビーレッドの目、雪のように真っ白で滑らかな肌、咲き誇る薔薇のように色付いた頬と紅い唇は花の顔、細く長い手足に悩ましい豊満な曲線美は奇跡の造形。
一目見るだけで、異性だけではなく同性をも虜にしてしまったとされる、『傾国の魔女』だった――らしい。
何故、らしいと僕が言うのか、その理由は――
「……何か後ろめたい事があるから、忽然と姿を晦ませたのでしょう……」
――僕には生まれた時から母が居なかったからだ。
僕が生まれたその日、妾妃は出奔して姿を晦ませた。
「……それも、人の出入りの多い国王誕生祭の式日にですよ……とんでもない話です……これだから、卑しい下民は……」
妾妃が出奔した日は、国王誕生祭の式日でもあった。
だから、今日この日は僕の誕生日でもある――けれど、僕は今まで誰からも誕生を祝われた事は無い。
「……国王陛下の御子が、あのように醜い姿で生まれる筈がない……あれは、きっと妾妃の不義の子に違いありません……だから、妾妃は姿を晦ませたのでしょう……汚らわしい……」
妾妃が姿を晦ませた事から、僕は不義の子と疑われている。
「……それにしても、醜すぎる……本当に『傾国の魔女』の子ならば、もっと美しい姿に生まれていてもおかしくないのでは……アレは何処からか拾ってきた、拾い子の説の方が有力なのではありませんか……」
「……ああ、確かに……あの醜さは魔法使いとは思えませんからね……人でないかもしれません……妾妃に色彩の似たハーフオークの子供でも拾ってきて、置いて行ったのかもしれませんよ……あはははは……」
「……ふはははは……それはそれは、悍ましい……色彩が似ていると言っても、肌の白さくらいのものですがな……あの醜い姿では、ハーフオークと言われても納得してしまいますぞ……がはははは……」
僕は貴族達の嘲り嗤う声が遠く響いているように感じていた。
その中で白豚王子だけが異質で、醜い姿をしていたのだ。
僕の陰口を叩いていた下位貴族達が、また僕を一瞥して噂話をする。
「……それにしても……違い過ぎる……」
僕の容姿はどの部分を見てみても、国王の容姿とはまるで違い、似ても似つかなかった。
それも、王族の中で僕だけが丸々と肥え太り酷く醜い、異質なのだ。
「……やはり、あの噂は……本当なのでしょう……」
「……そうでしょう、そうでしょう……あのようにお美しい国王陛下の御子が、あんなにも醜い筈がないのですから……それも、あの『傾国の魔女』とも謳われた、絶世の美女である妾妃との間の御子ですよ……」
僕の母とされる妾妃は、その類稀な美貌から国王に見初められ妾妃に召し上げられた、元は放浪の民だった。
王国が傾くと言われるほど、国王からの寵愛を一身に受けていた、絶世の美女だ。
鮮やかに艶めくワインレッドの波打つ長い髪、眩く煌めく宝石のようなルビーレッドの目、雪のように真っ白で滑らかな肌、咲き誇る薔薇のように色付いた頬と紅い唇は花の顔、細く長い手足に悩ましい豊満な曲線美は奇跡の造形。
一目見るだけで、異性だけではなく同性をも虜にしてしまったとされる、『傾国の魔女』だった――らしい。
何故、らしいと僕が言うのか、その理由は――
「……何か後ろめたい事があるから、忽然と姿を晦ませたのでしょう……」
――僕には生まれた時から母が居なかったからだ。
僕が生まれたその日、妾妃は出奔して姿を晦ませた。
「……それも、人の出入りの多い国王誕生祭の式日にですよ……とんでもない話です……これだから、卑しい下民は……」
妾妃が出奔した日は、国王誕生祭の式日でもあった。
だから、今日この日は僕の誕生日でもある――けれど、僕は今まで誰からも誕生を祝われた事は無い。
「……国王陛下の御子が、あのように醜い姿で生まれる筈がない……あれは、きっと妾妃の不義の子に違いありません……だから、妾妃は姿を晦ませたのでしょう……汚らわしい……」
妾妃が姿を晦ませた事から、僕は不義の子と疑われている。
「……それにしても、醜すぎる……本当に『傾国の魔女』の子ならば、もっと美しい姿に生まれていてもおかしくないのでは……アレは何処からか拾ってきた、拾い子の説の方が有力なのではありませんか……」
「……ああ、確かに……あの醜さは魔法使いとは思えませんからね……人でないかもしれません……妾妃に色彩の似たハーフオークの子供でも拾ってきて、置いて行ったのかもしれませんよ……あはははは……」
「……ふはははは……それはそれは、悍ましい……色彩が似ていると言っても、肌の白さくらいのものですがな……あの醜い姿では、ハーフオークと言われても納得してしまいますぞ……がはははは……」
僕は貴族達の嘲り嗤う声が遠く響いているように感じていた。
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