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第五章 人体再生
魂の注入装置6
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翁じいの運転する軽トラックで、ケリーのナビゲートを頼りに笹木養鶏場に飛んで行くと、お爺さんは簡単に孵化機の中の卵を一個売ってくれた。
それも今朝入れたばかりの新鮮卵だ。
「うん、30円でよかよ」
お爺さんは普通にそう言った。
私は大切に卵を受け取ると、再びお屋敷へと高速移動で向かった。
そして、軽トラックの助手席で思った。
——お金じゃないんだ。
「ルナママあと何分? 」
「あと15分18秒がリミットです」
「分かった」
そう言って、助手席に置いておいた天の羽衣を首にかけ、余りの布で卵を包んだ。
翁じいは最高速度で運転している。
いつもの「ひゃっほー」が聞こえない。
無言でアクセルを踏み続ける。
「ルナママシールドを開けて、『蔵』から入る」
お屋敷の上空で私が叫ぶ。
すると、首から下げている満月ペンダントが、お守りのように光った。
「了解です」
『蔵』に戻った私は、素早く全ての鍵を開けると、天の羽衣を首にかけたまま頭から通路に向かってダイブした。
重力に加えて天の羽衣の推進力で、重力よりも早く落ちていく。
「あと残り150秒」
満月ペンダントからルナママのカウントダウンが聞こえてくる。
ラボの床が見えてきた。
「重力クッションを利かせます」
ルナママが言った。
「大丈夫! 」
「えっ? 」
「えい」
私は床にぶつかるすれすれで、水平に飛行すると、足から着地して立ち上がった。
「月夜姫凄いです」
「あと残り何秒? 」
「は、はい、140秒」
よし!
一歩踏み出す。
と、と、と………
あれれ、足がもつれる。
——バランスを崩した。
ああー
それと同時に天の羽衣に包んでいた卵を手放してしまった!
卵が宙に浮かぶ。
そして弧を描いて落ちていく。
「いやああああああああああああ」
と、ママのふかふかパソコンチェアが、音もなく動き、落ちてくる卵の真下に移動した。
これはママの魂がやってくれてる——私は直感した。
ぽーん!
卵はクッションに跳ね返って再び軽く浮かぶと、今度はパパのパソコンチェアが移動して卵を受け止めた。
ぼふん………
今度はパパだ!
「パパ、ママ、ありがとう! 」
「月夜、早くしなさい」
パパの声が聞こえた。
生まれて初めて聞いた、これがパパの本当の声なんだ。
「うん! 」
私は天の羽衣を放り出し、パソコンチェアに駆けて行った。
それも今朝入れたばかりの新鮮卵だ。
「うん、30円でよかよ」
お爺さんは普通にそう言った。
私は大切に卵を受け取ると、再びお屋敷へと高速移動で向かった。
そして、軽トラックの助手席で思った。
——お金じゃないんだ。
「ルナママあと何分? 」
「あと15分18秒がリミットです」
「分かった」
そう言って、助手席に置いておいた天の羽衣を首にかけ、余りの布で卵を包んだ。
翁じいは最高速度で運転している。
いつもの「ひゃっほー」が聞こえない。
無言でアクセルを踏み続ける。
「ルナママシールドを開けて、『蔵』から入る」
お屋敷の上空で私が叫ぶ。
すると、首から下げている満月ペンダントが、お守りのように光った。
「了解です」
『蔵』に戻った私は、素早く全ての鍵を開けると、天の羽衣を首にかけたまま頭から通路に向かってダイブした。
重力に加えて天の羽衣の推進力で、重力よりも早く落ちていく。
「あと残り150秒」
満月ペンダントからルナママのカウントダウンが聞こえてくる。
ラボの床が見えてきた。
「重力クッションを利かせます」
ルナママが言った。
「大丈夫! 」
「えっ? 」
「えい」
私は床にぶつかるすれすれで、水平に飛行すると、足から着地して立ち上がった。
「月夜姫凄いです」
「あと残り何秒? 」
「は、はい、140秒」
よし!
一歩踏み出す。
と、と、と………
あれれ、足がもつれる。
——バランスを崩した。
ああー
それと同時に天の羽衣に包んでいた卵を手放してしまった!
卵が宙に浮かぶ。
そして弧を描いて落ちていく。
「いやああああああああああああ」
と、ママのふかふかパソコンチェアが、音もなく動き、落ちてくる卵の真下に移動した。
これはママの魂がやってくれてる——私は直感した。
ぽーん!
卵はクッションに跳ね返って再び軽く浮かぶと、今度はパパのパソコンチェアが移動して卵を受け止めた。
ぼふん………
今度はパパだ!
「パパ、ママ、ありがとう! 」
「月夜、早くしなさい」
パパの声が聞こえた。
生まれて初めて聞いた、これがパパの本当の声なんだ。
「うん! 」
私は天の羽衣を放り出し、パソコンチェアに駆けて行った。
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