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第五章 人体再生

肉体改造装置2

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 足元のダイヤモンドは細かく振動を続けている。
 イガジウムが発した黄色い物は容赦なく人体再生ポットに流れ込む。

 そして私は信じられない光景を目にした。

 ガッシャーン!

 地球上で一番硬いとされるダイヤモンドが、共鳴が激しくなって細かく爆発するように四方八方に弾け飛んだ。
 そこに龍の首の珠から出た煙りが充満してくると、その途端、ダイヤモンドの破片が全て液体になり、霧のように取り込まれた。

 ダイヤモンドと白い煙りと黄色い物はポットの中で絡み合うように混ざり合っていく。
 そして鉄ちゃんの胸の傷口にも入り込んだ。

 ああー大丈夫なの?


「ルナママ、ダイヤモンドが鉄ちゃんの体に入った! 大丈夫!? 」

「問題ありません、たかが炭素の塊りです」

 そのうち二つの物は注入を辞めた。
 理論上の基準値に達したのでルナママが両方の電圧をゼロにしたからだ。

 ポットの中で混ざり合った物は、鉄ちゃんの体を包み込んだ。
 体表を充分に浸した後、一度掃除機のようなノズルが出てきて吸い込まれると、アームが鉄ちゃんの口をこじ開けた。

 そして今度は、ノズルから口の中に噴射すると一気に体内へと注がれた。

 ゴゴゴゴゴー!

 そこにもう一つアームが伸びてくる。
 先端には木の根の切れ端を持っていた。

 なんだこれ! えっ! ルナママの回路の一部じゃない。

「これってルナママの! 」

「そうです。最後に万能細胞を組み込まないといけません、これは私の組織を合成して培養した再生に特化した万能細胞です」
 というと口の中に落とした。
「後はこの三つが鉄ちゃんの体の隅々に行き渡るのを待つだけです」
「うん! 」

 アームが再び鉄ちゃんの口を閉じる。

 再生ポットの中では誰も経験した事のない状況が起きている。

 あとはルナママを信じて祈るしかない。

 そして、モニターは心電図と脳波の計測に切り替わった。
 どちらもまだ反応していない。

 しばらくすると心臓の傷口がみるみる塞がっていく。

「ああー傷口が消えていく! 」

「再生が始まりました」
 ルナママが冷静にそう言った。

「——」

 と、ピコン。

 あっ心電図が動いた!

 ドックン、最初はゆっくりな動きだったが、次第に感覚は狭まっていき、リズミカルな波形になると、モニターから心臓の音が聞こえたきた。

 ドックン、ドックン、ドックン………

 あ、あ、あ、動いた!

「成功です。鉄ちゃんの体は再生しました」

 動いた、鉄ちゃんが動き出したぁ!!!

「やりました! 」
 沈黙していた翁じいが大声を上げた。
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