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第二章 月人《つきびと》

月人の仕事3

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 漁港から二人でゆっくり歩いて行った。
ぽかぽか暖かい穏やかな日ざしだった。
「月の内部だって四季はあるのですよ」
 ジーヤンがそう言った。
「地球みたいに? 」
「はい、太陽光を取り込んで太陽球で生活してますが、一年中全く同じ季節だと木や植物の成長に影響がありますから、かぐやと太陽庁が管理しています」
「天気はどうなの? 」
「それは月の状態によって、水が蒸発して雲になり、雨が降ります。冬は雪になりますし、地球ほど激しくはないですが風も吹きます」
「ふーん」

「ああ見えてきたあそこがマスターシズカの家です。マスターとはブレインを何十人も束ねるリーダーの事です。マスターシズカは12歳の才女ですね、頭が良く切れて並列処理ができる。そう言った特技の持ち主です」

 マスターシズカの家はキノコみたいな赤い屋根に、切り株みたいな外壁の丸く可愛いらしい家だった。

 その家で一人で働いているらしい、地球だといわゆる在宅勤務ってやつだ。

 玄関に近づくとジーヤンが止まった。
 何やら念を使って聴いてるみたいだ。

「ちょっと佳境に入って忙しそうだから外で聞きましょう、私がハブになって私を通して月夜女王様にお聞かせします」
「そんな事ができるんだ! 」
「はい、私はかつてグランドマスターをやっていましたから、マスターシズカの仕事交信にアクセス権があります。地球だといわゆる部下ですね、月だとちょっと年長の仲間ですが………」

「………」

「そうそう月夜女王様は月人全員の仕事交信にアクセス権があるんですよ」

「マジ! ですか」

「マジです」
 そう言って私を見てにこりと笑った。
「ただ突然入っていくと驚くでしょうから」

「………」

「さあいきますよ」
 というと目を瞑ったので、私も目を瞑って集中した。
 すると聞こえてきた、何やら忙しそうに『念』で交信している。
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