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第二章 月人《つきびと》

月と地球の違い2

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「そうですね、でも、良く地球を考えてごらんなさい、種族がある事で何が起きてます? ひいては国家間で何が起きてます? 」

 少し考えて答えた。

「戦争や格差ですか? 」

「そうですね、自分たちの利益を優先して争いばかりが起きてます。逆にいうと争いの無い世界には種族で人を分けるなど意味はないのです」
「どうして月ではそれができるんですか? 」
「月夜姫、月人の仕事はなんでしょう? 受け継いだ知識に入っている筈です」

「えーと、あったあったこれだ。地球人の争いを無くす事が、創造主から与えられたお仕事! ええー」

「びっくりしましたか、それともう一つ重要な仕組みがある事を思い出してください」

「えーと、月人がどれだけ仕事に気持ちを込めたかで、月の水が増える仕組みを創造主に与えられたって、なんですか、どういう事なんですか? 」

 私は自分で言って驚いた。

「その通りです。月ができた時、月には水が少ししかありませんでした、それが干上がる前に水を作る術が与えられたのです。
 どれだけ気持ちを込めて働いたか、個人の気持ちの強さに応じて相応の量の水に変換される。
 その二つの事が月を発展させ、争いの無い平和な世の中にしているのです」

「かぐや、さっぱりわからないです」

「無理もありません、今まで地球の価値観の中で育ってきたのですから、ですが月夜姫はかぐや姫の末裔です。ゆっくり考えれば理解できます。そして真の女王様になることでしょう、それも歴代の誰よりもお美しい女王様です」

 てへ、美しいんだ。照れちゃう。


「水が無いと月人は死んでしまいます。水は月人の労働の副産物ですが、それは個人のものじゃない、共有財産です。
 月には個人が生産した水の量を数値化して、生活に使うシステムがあり、それを地球のお金の代わりに利用してご飯を食べたり、服を買ったりしています。
 その記録は全て私の回路にインプットされて、必要な時に出し入れしています。

 月人の労働とは決して心を閉じ込め、肉体を動かすだけ動かしガムシャラに働く事ではありません。時間まで会社にいる事でお金が貰える事もありません。

 手先が器用ならばそれを活用して、足が早ければそれを活用して、頭がよければそれを活用して、釣りが得意ならばそれを活用して、主婦をしている女性の家事も全く同じです、気持ちを込めて自分の特技を活かして働けばいいのです。
 気持ちを込めれは込めるほど、もちろん真剣になって技術も向上します。
 その技術に特化して、農業が産まれ、漁業が産まれ、娯楽が産まれ、産業が生まれ、そうして分担化していく事で、地球の争いを無くすという大きな仕事がやり易くなってきました。

 つまり数値は、水という月人の共有財産を増やしている貢献度のようなものです。

 他人への貢献は喜びにつながります。

 自分が気持ちを込めて仕事に打ち込むことで、月人全体の幸福につながりその対価として、生きる喜びが得られるのです。
 そうした生活を送っていると、自分を他人と比較しなくて良くなるんですね。

 その事は協力や精神的な強いつながりを生み、結果、落ちこぼれもいなくなる。
 だから、生産性や技術、研究が飛躍的に伸びて、地球よりも何百年も先をいく科学力を持つ文明となったのです。

 成果主義が中心の地球と、全く違う発展の仕方です」
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