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第二章 月人《つきびと》

戴冠式2

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「さあ、これがドレスですよ」
「これってママが着たドレス? 」
 私はピンときた。
「はい」

 うわー、嬉しい。あのホノグラムのそのままのドレスだ。

「さあお手伝いいたしますので、お召し替えいたしましょう」

「はい」

 ドレスを着終わると、控室から会場の袖へと移動した。もちろん首には満月のペンダントをつけている。

『月夜姫、準備はいいですか? 』
 ジーヤンの声が頭に聞こえてきた。
『はい』
 私も声に出さずに応えた。
『司会が月夜姫のご入場ですと言ったらゆっくり壇へと向かって下さい』
『分かりました』
 緊張してきた。
『ゆっくりですぞ、ヒールの靴はバランスが悪いですから、けっつまづいてばっぱーんどーんきゃああ、んが、に気をつて』

 くす、変な言い方。
 あははは………
 緊張が解けた。

『そうそう、その笑顔でね』

『はい』

『じゃあはじめましょう』



「月夜姫のご入場です」

 司会者の声にしたがって、私はゆっくり袖を出た。
 そしてけっつまずかないように慎重に壇へと向かった。初めて履くヒールはやっぱり歩きづらい。

 と、会場から大きな拍手が巻き起こった。
 会場にいる全員が暖かい眼差しで私を見守っている。
 会場にいるのは300人の月人だけどこの向こうには10億人が見てるんだ。
 不思議な感じがした。
 そして壇に無事たどり着くと、拍手が鳴り止んだ。
 天井の照明が暗くなり、私にスポットライトがあたる。
 レッドカーペットの向こうから、ジーヤンがおごそかに、金色に輝くティアラを木製のトレーに載せて持ってきてくれた。

 ホノグラムでママが頭につけていたティアラだった。
「これママのティアラじゃない? 」
「はい、かぐや姫の系統に代々受け継がれたティアラです」
 私は感慨深く見つめた。
「おめでとうございます。そしてこれからもよろしくお願いします」
 ジーヤンは手を使わずにティアラを持ち上げると、頭に載せてくれた。

 私は頭のティアラを確認すると、ドレスの両脇を持ち上げて膝をちょこんと曲げておじきをした。
 すると列席していた観客から、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「さあここに新しい女王様が誕生いたしました。月夜つきよ女王様です」
 司会者が張り切ってそういった。

 私どうすりゃいいの?

 そう思った途端、
『笑って笑って、微笑んでいればいいんです』
 ジーヤンは『念』を使って教えてくれた。
『分かりました』

 私は自分で上品と思える最高の? 笑顔を作ってみた。

『おおおおおおおおお』

 今度は拍手に歓声が加わった。

 あ、たくさんの月人に混じって翁じいが見てる。今日は背広じゃなくて燕尾服なんて着てるぞ。

 あーあーもう号泣してる。

 きっとパパになったような心境なのかな………。
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