44 / 113
第二章 月人《つきびと》
リフトオフ3
しおりを挟む
「そうだ! 」
私の気持ちを察知した翁じいが、わざと明るく声を上げた。
「なに、突然? 」
「地球の雲を見ていて思い出しました」
「何を? 」
「竹取物語に出てくる月からの使者は何に乗ってきました? 」
「えーっと雲の乗り物」
「ですよね、あるんですよ『蔵』にその乗り物が! 」
「マジですか! 」
驚いた。
さすがに平安時代に使った乗り物が残っているとは思わなかった。
「はい、『蔵』で未だに浮いています。ふわふわと! 」
「ひゃあ、それは凄い」
「あれのどこに人が乗ったのか想像つきませんが」
私はその時閃いた。
「じゃあ、かぐや姫が使った『天の羽衣は? どこにあるのか思い出せないんだけど………」
「それは月菜女王様もおばあさまも同じ事を言ってらっしゃいましたぞ、つまり行方不明らしいのです」
「おとぎばなしじゃないの? 」
「製作して利用した履歴は、月夜姫のご記憶にありませんか? 」
「ちょっと待って、ん、あるある。ママもおばあさんも受け継いでいる」
「でしょう、でもどこに保管されたのか分からないでしょう」
「その記憶はどこにもないなぁ」
「おそらく誰かがどこかに持っていって、その記憶だけ遺伝させていなかったのです」
「どうしてそんな事したんだろうね………」
とその時、ルナママから通信が入った。
車内のどこかにあるスピーカーから声が聞こえてきた。
「月夜姫、快適ですか? 」
「うん、バッチリ、ルナママのメンテナンスのおかげだよ、ありがとう」
「それは良かったです。お腹は空いていませんか? お夜食作りましょうか? 」
「全然大丈夫」
「翁じいはどうですか? 」
「おーワシも大丈夫です」
「あ、私、ミルクティー飲もうかな」
「いいですよ、お淹れしましょうね、でも冷たいミルクティーですよ」
「どうして? 」
「もう宇宙空間に到達しています。地球の重力がありませんから、液体は浮かんで球体になります。それをストローで飲まないといけませんもの、熱いと火傷します」
「キャハハ、そうっか楽しそう」
「じゃあ後ほど作りましょう、翁じいはどうします」
「じゃあワシ、アイスコーヒー」
くすくす、おじいさんなのにいつも子どもみたいな話し方する。というよりルナの声が優しくって、翁じいよりずっと長く生きてるし、やっぱりルナママだ。翁じいも子どもに返っちゃうんだ。
「了解しました」
ルナママがそう言った。
私の気持ちを察知した翁じいが、わざと明るく声を上げた。
「なに、突然? 」
「地球の雲を見ていて思い出しました」
「何を? 」
「竹取物語に出てくる月からの使者は何に乗ってきました? 」
「えーっと雲の乗り物」
「ですよね、あるんですよ『蔵』にその乗り物が! 」
「マジですか! 」
驚いた。
さすがに平安時代に使った乗り物が残っているとは思わなかった。
「はい、『蔵』で未だに浮いています。ふわふわと! 」
「ひゃあ、それは凄い」
「あれのどこに人が乗ったのか想像つきませんが」
私はその時閃いた。
「じゃあ、かぐや姫が使った『天の羽衣は? どこにあるのか思い出せないんだけど………」
「それは月菜女王様もおばあさまも同じ事を言ってらっしゃいましたぞ、つまり行方不明らしいのです」
「おとぎばなしじゃないの? 」
「製作して利用した履歴は、月夜姫のご記憶にありませんか? 」
「ちょっと待って、ん、あるある。ママもおばあさんも受け継いでいる」
「でしょう、でもどこに保管されたのか分からないでしょう」
「その記憶はどこにもないなぁ」
「おそらく誰かがどこかに持っていって、その記憶だけ遺伝させていなかったのです」
「どうしてそんな事したんだろうね………」
とその時、ルナママから通信が入った。
車内のどこかにあるスピーカーから声が聞こえてきた。
「月夜姫、快適ですか? 」
「うん、バッチリ、ルナママのメンテナンスのおかげだよ、ありがとう」
「それは良かったです。お腹は空いていませんか? お夜食作りましょうか? 」
「全然大丈夫」
「翁じいはどうですか? 」
「おーワシも大丈夫です」
「あ、私、ミルクティー飲もうかな」
「いいですよ、お淹れしましょうね、でも冷たいミルクティーですよ」
「どうして? 」
「もう宇宙空間に到達しています。地球の重力がありませんから、液体は浮かんで球体になります。それをストローで飲まないといけませんもの、熱いと火傷します」
「キャハハ、そうっか楽しそう」
「じゃあ後ほど作りましょう、翁じいはどうします」
「じゃあワシ、アイスコーヒー」
くすくす、おじいさんなのにいつも子どもみたいな話し方する。というよりルナの声が優しくって、翁じいよりずっと長く生きてるし、やっぱりルナママだ。翁じいも子どもに返っちゃうんだ。
「了解しました」
ルナママがそう言った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる