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第6章

決戦 10

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「こわーい」ももがそう言うと、その周りをさくらが、浮き輪を頭の上にかざしてグルグル回っている。
「きゃーどうしましょ、きゃー」
 さくらは幼稚園でお遊戯でもしてる感じだ。
「くっそーおちょくりやがってー」
 ようやく分かった親分。カンカンになって真っ赤な顔でどっしり立ち上がる。
「やっちまいましょう、手加減なんてするもんか! 」
 続いて二がひょろひょろ立ち上がる。
「がははは、ぶっとばす」
 厳つい表情で睨んで立ち上がる一。

 ──ザッザッザッ…

 ジリジリ間を詰めると、
「いっけー!」
 親分の雄叫びで一気に走り出す。
「へえ」
「へぇへぇ」

 だだだだだ…

「逃げろー」
 ももが言った。
「はーいおねえちゃん」
 さくらが言った。
 二人はビルの角を曲がって、シャッターの前まで駆けていく。
 シャッターは二メートル程の下部がきっちり閉められている。伸さんが閉めたそのままだ。
 その上にはシャッターに向けられている防犯カメラとビル方向に向けられた防犯カメラが備えてある、24時間録画されていた。
「親分ビルの間入ったぜ」
 二がひょろひょろ走りながら指をさした。
「あそのこ先はシャッターで行き止まりだ」
 一が嬉しそうにいった。ガシガシ走りながら、手に持ったロープをグルグル回している。
「もらったぁ」
 親分はどたどた走りながら、ロープをビンビンさせる。
 そして角を曲がると、ビルとビルの間の、車が一台通り抜けれるくらいの道に入った。
 と、シャッターの前でももとさくらは浮き輪を地面に下ろし、シャッターを背にして立っていた。
 ももはズボンのポケットの中のリモコンを握りしめている。

「ゲヘヘヘ、とうとう追い詰めました、大人しく来てもらおうかね」
 親分は二にロープを渡すと、ポケットから果物ナイフを取り出し、キャップを取った。

 ──キラリン!
 刃渡り十五センチの鋭利なナイフが光る。
 盗っ人三人衆は横並びに間を詰めると、不気味にももとさくらの前に立ちはだかる。
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