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第5章

嵐の後の学校公開 7

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 ──金曜日

 だんだんと用心深さが消えてきた盗っ人三人衆は昼過ぎにはアジトを出ていた。
 もうカップラーメンの昼食には飽きたのだ。
 今日もアーケード街には多様な人種が、行き交っていた。
 それを、鬼王神社の方に向かって歩いていく、
「いやーエリちゃん最高っすね」
 二が言った。
「俺はマキちゃん、親分は…」
「うーん、サキちゃんかな」
「久々に楽しかったっす」二は嬉しそうだ。
「おかげてだいぶ財布が寂しくなったけどな、そういや駐車場代をとっとかないと出られなくなるなぁ…」
「土曜日までで六日、一日900円だから…えーっと…5600円すかね」
 ピシッ!
 親分は二の頭を小突いた。
「アホ! もっかい勘定しろ」
「えーっと、ろくご30、ろくろく36、ろくちしち42、ろっぱ、40…9? 」
「あー親分鰻だ、香ばしいっす」
 一が足をとめた。
 親分は店先で焼いてる鰻を見て匂いにトロンとなると、純和風の木の看板を見上げた。
「こりゃ、浅草の名店だぜ、すげぇなこんなところに店だしてんだ」
「はいっちゃいましょうぜ」調子のいい一。
「え、違うか、ろっぱ48、ろっく54、わかったぁ5400だ」
 二が嬉しそうにそういって周りを見渡した時には、既に親分と一は店に入って行くところだった。
「まってーまって、置いてかないで…」

 鰻が焼ける間、骨せんべいに冷酒、板わさでちびちびやっていた盗っ人三人衆だったが、今日は酔っ払らわないようにセーブしていた。
 そして鰻重が出てくると嬉しそうに蓋をあける。二段重ねで肉厚の香ばしい鰻がピカピカの銀シャリにのっかっていた。
 勿論肝吸いに香の物付きだ。
「うめぇ! 」
 親分が一口食べて、雄叫びをあげると全員ががつがつ食べ始めた。
「オネーサン、冷酒追加ぁ」
 思わず一がオーダーするのを親分が制しした。
「な、なし、今のなし」
 ペシッ!
 一の頭を小突いた。
「いてっ」
「アホか、これが下見の最後のチャンスだぞ」
「すんません」
「オネーサンビール、…」今度は二が声を上げる。
「なし、なし、今のなし! 」
 ペシッ!
 二の頭を小突いた。
「いてぇ」
「馬鹿、また朝までコースになるじゃないか、調子に乗るの辞めろってぇの」
「へい」

 ──そして三人は鰻重をかっこんだ。

「食ったかぁ」

『へい、ご馳走さまです』

 そしてお会計を済ませて店を出て、赤ら顔でアーケードを鬼王神社方面にむかって歩くと、もう既に夕方近くなっていた。
 そしてアーケードの外れまで来ると、大通りに突き当たった。
 大通りを左に曲がり、しばらく行った交差点を右に、その先を左にいくと遠くに鬼王神社の鳥居が見えてくる。
 その手前にあるのが小学校だ。
 神社の境内を抜けた裏道の方がよっぽど近いのは一目瞭然だ。
「親分、こんなところに小学校があったんすね」一が言った。
「そうだな、全く気がつかんかった」
 三人衆は校庭をグルリと取り囲むフェンス沿いに校門まで来ると立ち止まった。
 校門は既にオートロックがかかっており児童は誰もいない。随分と日が落ちて、月が姿を現していた。
「おい一、あのチラシ見せてみろ」
「へい」
 一はズボンのポケットからくしゃくしゃのチラシを取り出すと、広げた。
「うむ、同じ学校名だ。間違いないな」
「そうでやんす」一がにやける。
「また、鬼もち買っていいすかぁ! 」二が物欲しそうに訴える。
「お前また、腹減ったのかぁ! 」
 親分が大声を上げる。
「いえね、甘い物は別腹っす」
『確かに』
 そして、鳥居にまっすぐにつながる表参道の出店通りへ入っていった。 こうした表参道も中道商店街の一角になる。アーケード街、表参道、ビル街の商店街や、『子犬のさんぽみち』など、中道商店街は多様な顔を持っていて範囲が広い。
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