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第4章

災害警報発令中 5

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 その頃親分と二は廃墟のビルにいた。
 どんとがいつも、コンクリートの外階段下で本を読んでいるあのビルだ。
 鍵の緊急業者だった二にしてみれば、廃墟ビルの鍵を開けて忍び込むなど朝飯前なのだ。
 一はその朝飯を買いに行っている。
 三人衆は、カルメラ焼きの道具一式もそのビルの中に持ち込んでいる。
 二日間のお祭りで四百個くらいは出たので、四百円で売って、材料費と役場にショバ代を払っても、粗利で十万以上は稼げた。だが、そんなもんで満足する三人衆ではなかった。何故なら金脈がプンプン臭うのだ。ちなみに、二が残った材料でカルメラ焼きを作っているので、今、ビルの中は甘い匂いがプンプン臭っている──彼らの朝食の一品だ。
 ザラメと水をナベに入れてグツグツ火にかける、木の棒でかき混ぜ、ぶくぶく泡立ち、泡が細かくなって音が変わると百二十五度だ。火から下ろしてそこに重曹と卵白を合わせた物をちょいといれて、続けてぐるぐるかき回すと、ふっくら膨らむ。

 ──膨らみ切ったらカルメラ焼きの完成だ。

 土砂降りの雨の中、一はコンビニでカップラーメンカレー味を三つ買った。
 カルメラ焼きとカップラーメンカレー味という素晴らしい組み合わせが今日の朝食になった。
 一はコンビニの自動ドアの手間で外に出るのを躊躇した。物凄い勢いで雨が叩き付けているからだ。そして、自動ドアに貼られた貼り紙を見つめた。
「えっ」
 貼り紙を読んだ一はにやりと笑うと、貼り紙を破りとり雨の中に飛び出して行った。

「親分、親分、いいものみっけた」
 一はずぶ濡れで廃墟ビルに戻ってくると、そう言った。
「なんデェ」
 親分が、廃墟に置き去りにされたソファにふんぞり返り偉そうに言った。
「これ見てくだせぇ」
 一は破りとった貼り紙を親分に見せた。
 二は既に自分の分のカルメラ焼きを食べ始めていた。
「おま、俺が帰るまで待ってるって言ってただろ」
「はら減っちゃって…」
「俺の分は焼いてあるんだろうな」
「任せとけって」
「なにー! 」
 親分が貼り紙を見て声を張り上げた。
「へいそうなんでやんす」一はそんな親分に言った。
「大チャンスかもしれねぇ」親分は続ける。
「へいそうなんでやんす」
「なになになんですかー? 」二は聞く。
「これだよこれ、見てみやがれ」
 貼り紙を二に見せる。
「地域のみなさん、ふるってご参加下さい。子どもたちの元気な姿を見に来て下さい。なんすか、これ? 」
「小学校の学校公開だよ、ガキどもの勉強中が見られんだ。今週の土曜日にな」
「それが、どうして…あーっ! もしかして」
「そうだ、ももがいるかもしれん、後をつけりゃ家が分かるだろ! 」
 親分が嬉しそうに言った。

『うへへへ…』盗っ人三人衆は不気味に笑った。
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