50 / 93
第4章
災害警報発令中 5
しおりを挟む
その頃親分と二は廃墟のビルにいた。
どんとがいつも、コンクリートの外階段下で本を読んでいるあのビルだ。
鍵の緊急業者だった二にしてみれば、廃墟ビルの鍵を開けて忍び込むなど朝飯前なのだ。
一はその朝飯を買いに行っている。
三人衆は、カルメラ焼きの道具一式もそのビルの中に持ち込んでいる。
二日間のお祭りで四百個くらいは出たので、四百円で売って、材料費と役場にショバ代を払っても、粗利で十万以上は稼げた。だが、そんなもんで満足する三人衆ではなかった。何故なら金脈がプンプン臭うのだ。ちなみに、二が残った材料でカルメラ焼きを作っているので、今、ビルの中は甘い匂いがプンプン臭っている──彼らの朝食の一品だ。
ザラメと水をナベに入れてグツグツ火にかける、木の棒でかき混ぜ、ぶくぶく泡立ち、泡が細かくなって音が変わると百二十五度だ。火から下ろしてそこに重曹と卵白を合わせた物をちょいといれて、続けてぐるぐるかき回すと、ふっくら膨らむ。
──膨らみ切ったらカルメラ焼きの完成だ。
土砂降りの雨の中、一はコンビニでカップラーメンカレー味を三つ買った。
カルメラ焼きとカップラーメンカレー味という素晴らしい組み合わせが今日の朝食になった。
一はコンビニの自動ドアの手間で外に出るのを躊躇した。物凄い勢いで雨が叩き付けているからだ。そして、自動ドアに貼られた貼り紙を見つめた。
「えっ」
貼り紙を読んだ一はにやりと笑うと、貼り紙を破りとり雨の中に飛び出して行った。
「親分、親分、いいものみっけた」
一はずぶ濡れで廃墟ビルに戻ってくると、そう言った。
「なんデェ」
親分が、廃墟に置き去りにされたソファにふんぞり返り偉そうに言った。
「これ見てくだせぇ」
一は破りとった貼り紙を親分に見せた。
二は既に自分の分のカルメラ焼きを食べ始めていた。
「おま、俺が帰るまで待ってるって言ってただろ」
「はら減っちゃって…」
「俺の分は焼いてあるんだろうな」
「任せとけって」
「なにー! 」
親分が貼り紙を見て声を張り上げた。
「へいそうなんでやんす」一はそんな親分に言った。
「大チャンスかもしれねぇ」親分は続ける。
「へいそうなんでやんす」
「なになになんですかー? 」二は聞く。
「これだよこれ、見てみやがれ」
貼り紙を二に見せる。
「地域のみなさん、ふるってご参加下さい。子どもたちの元気な姿を見に来て下さい。なんすか、これ? 」
「小学校の学校公開だよ、ガキどもの勉強中が見られんだ。今週の土曜日にな」
「それが、どうして…あーっ! もしかして」
「そうだ、ももがいるかもしれん、後をつけりゃ家が分かるだろ! 」
親分が嬉しそうに言った。
『うへへへ…』盗っ人三人衆は不気味に笑った。
どんとがいつも、コンクリートの外階段下で本を読んでいるあのビルだ。
鍵の緊急業者だった二にしてみれば、廃墟ビルの鍵を開けて忍び込むなど朝飯前なのだ。
一はその朝飯を買いに行っている。
三人衆は、カルメラ焼きの道具一式もそのビルの中に持ち込んでいる。
二日間のお祭りで四百個くらいは出たので、四百円で売って、材料費と役場にショバ代を払っても、粗利で十万以上は稼げた。だが、そんなもんで満足する三人衆ではなかった。何故なら金脈がプンプン臭うのだ。ちなみに、二が残った材料でカルメラ焼きを作っているので、今、ビルの中は甘い匂いがプンプン臭っている──彼らの朝食の一品だ。
ザラメと水をナベに入れてグツグツ火にかける、木の棒でかき混ぜ、ぶくぶく泡立ち、泡が細かくなって音が変わると百二十五度だ。火から下ろしてそこに重曹と卵白を合わせた物をちょいといれて、続けてぐるぐるかき回すと、ふっくら膨らむ。
──膨らみ切ったらカルメラ焼きの完成だ。
土砂降りの雨の中、一はコンビニでカップラーメンカレー味を三つ買った。
カルメラ焼きとカップラーメンカレー味という素晴らしい組み合わせが今日の朝食になった。
一はコンビニの自動ドアの手間で外に出るのを躊躇した。物凄い勢いで雨が叩き付けているからだ。そして、自動ドアに貼られた貼り紙を見つめた。
「えっ」
貼り紙を読んだ一はにやりと笑うと、貼り紙を破りとり雨の中に飛び出して行った。
「親分、親分、いいものみっけた」
一はずぶ濡れで廃墟ビルに戻ってくると、そう言った。
「なんデェ」
親分が、廃墟に置き去りにされたソファにふんぞり返り偉そうに言った。
「これ見てくだせぇ」
一は破りとった貼り紙を親分に見せた。
二は既に自分の分のカルメラ焼きを食べ始めていた。
「おま、俺が帰るまで待ってるって言ってただろ」
「はら減っちゃって…」
「俺の分は焼いてあるんだろうな」
「任せとけって」
「なにー! 」
親分が貼り紙を見て声を張り上げた。
「へいそうなんでやんす」一はそんな親分に言った。
「大チャンスかもしれねぇ」親分は続ける。
「へいそうなんでやんす」
「なになになんですかー? 」二は聞く。
「これだよこれ、見てみやがれ」
貼り紙を二に見せる。
「地域のみなさん、ふるってご参加下さい。子どもたちの元気な姿を見に来て下さい。なんすか、これ? 」
「小学校の学校公開だよ、ガキどもの勉強中が見られんだ。今週の土曜日にな」
「それが、どうして…あーっ! もしかして」
「そうだ、ももがいるかもしれん、後をつけりゃ家が分かるだろ! 」
親分が嬉しそうに言った。
『うへへへ…』盗っ人三人衆は不気味に笑った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
異世界でスローライフを送りたいと願ったら、最強の投擲術を手に入れました
佐竹アキノリ
ファンタジー
過労死してしまった南伊吹は、せめて次の人生ではスローライフを送りたいと願う。神様はその願いを叶えてくれたのだが――得られたスキルは「投擲術LV MAX」
「そっちのスローじゃねえ!」
平穏な暮らしをしたい伊吹の思いに反して、彼の投擲術はあまりにも強すぎて、あちこちから依頼が舞い込み、放っておいてはくれない。石を投げれば魔物の大群は吹き飛び、ドラゴンだって宇宙の彼方まで飛んでいく!
波瀾万丈の生活を抜け出すことはできるのか!? 伊吹の最強スロー(投擲)ライフが今始まる!
※小説家になろうでも投稿しています
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
お后たちの宮廷革命
章槻雅希
ファンタジー
今は亡き前皇帝・現皇帝、そして現皇太子。
帝国では3代続けて夜会での婚約破棄劇場が開催された。
勿論、ピンク頭(物理的にも中身的にも)の毒婦とそれに誑かされた盆暗男たちによる、冤罪の断罪茶番劇はすぐに破綻する。
そして、3代続いた茶番劇に憂いを抱いた帝国上層部は思い切った政策転換を行なうことを決めたのだ。
盆暗男にゃ任せておけねぇ! 先代皇帝・現皇帝・現皇太子の代わりに政務に携わる皇太后・皇后・皇太子妃候補はついに宮廷革命に乗り出したのである。
勢いで書いたので、設定にも全体的にも甘いところがかなりあります。歴史や政治を調べてもいません。真面目に書こうとすれば色々ツッコミどころは満載だと思いますので、軽い気持ちでお読みください。
完結予約投稿済み、全8話。毎日2回更新。
小説家になろう・pixivにも投稿。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる