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第3章

鬼王神社の夏祭り 3

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 その日の放課後、中道商店街のパティオの入り口シャッターは開けられていた。
 周りの建物は全て、パティオに背を向けて建てられており、裏口もないのでここからしか入れない。
 やがて、子どもや保護者たちが、入り口を通って次々と芝生広場に集まってきた。
 広場には和太鼓が二組置かれている。
 そして、すみれおばあちゃんを先生にして、数十人の子どもたちが盆踊りの練習を初めた。
 ももとさくら、たもっちゃんもその中に混ざって、練習している。
 和太鼓のバチを叩いているのは、ボブとジョニーのアメリカンブラザーズだ──二人とも日本人だけど…。
 しかし遺伝子に組み込まれた音感は、やはり突飛でていた。ごく普通の盆踊り曲がノリノリになるから不思議だ。
 確かに子ども用の盆踊り曲は今やノリノリのものも多いが、大人が踊るような曲でさえ、そうなる。

ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…

 子どもの盆踊りが終わると、続いて大人の稽古が行われる事になっている。こういう場合シャッターは開けっ放しにしておくが、夜になると、防犯協会のジャンパーを着た影の氏子衆が、交代で出入口を見守る事になっていた。

 中道商店街のパティオに、盆踊り曲と太鼓の音色が響きわたった。

 ここは、多目的広場や防災拠点としての性格も併せ持っている。
 取り囲む町役場と防災倉庫に土地を無償で提供する条件で、町の予算に組み入れてごんちゃんの要望通りの設備を整備したのだ。屋上の反射板もその一部だ。
 勿論、住居部分などの建設費用や、設備の建設費用の一部は、ごんちゃんもかなりの額を負担している。しかし、町の殆どが神馬家の土地で、言い方を変えれば昔は殿様のような存在だったのだから、桁外れの金持ちだ、痛くも痒くもなんともない。それどころか町の行く末を考えて、喜んで出資した。出資にあたっては、すみれおばあちゃんの承認が必要だったのは、言うまでもない。

 うまい具合に、角度を調節した四枚の反射板が、お互いに光を反射させ、芝生広場に柔らかな日差しをもたらしていた。
 子どもたちは、一様に元気で笑い声が絶えない。
 身重のももたちのお母さん、お腹の大きいかえでも負担にならない範囲で、集まった保護者たちと冷たい麦茶やお菓子を振舞っていた。
 ごんちゃんはそんな風景を、10階の町長室から嬉しそうに見ていた。

 また今日は、お祭りの出店申し込み最終日でもあった。
 町役場の一階ロビーの特設会場で、それは行われている。
 そこにやって来たのが、盗っ人三人衆の親分と一、二だ。
 この三人の表向きの商売はテキ屋なのだ。売り物である自分たちで作るカラメル焼きは絶品と、自分たちで言っている。
 神社に忍び込んだ時は、黒のお揃いのジャージだったが、今日はハイビスカス柄の黄色いアロハシャツに白のスラックス、カンカン帽に雪駄。
 三人揃えて洒落たテキ屋風を決めている…つもりだ。
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