27 / 93
第3章
鬼王神社の夏祭り 3
しおりを挟む
その日の放課後、中道商店街のパティオの入り口シャッターは開けられていた。
周りの建物は全て、パティオに背を向けて建てられており、裏口もないのでここからしか入れない。
やがて、子どもや保護者たちが、入り口を通って次々と芝生広場に集まってきた。
広場には和太鼓が二組置かれている。
そして、すみれおばあちゃんを先生にして、数十人の子どもたちが盆踊りの練習を初めた。
ももとさくら、たもっちゃんもその中に混ざって、練習している。
和太鼓のバチを叩いているのは、ボブとジョニーのアメリカンブラザーズだ──二人とも日本人だけど…。
しかし遺伝子に組み込まれた音感は、やはり突飛でていた。ごく普通の盆踊り曲がノリノリになるから不思議だ。
確かに子ども用の盆踊り曲は今やノリノリのものも多いが、大人が踊るような曲でさえ、そうなる。
ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…
子どもの盆踊りが終わると、続いて大人の稽古が行われる事になっている。こういう場合シャッターは開けっ放しにしておくが、夜になると、防犯協会のジャンパーを着た影の氏子衆が、交代で出入口を見守る事になっていた。
中道商店街のパティオに、盆踊り曲と太鼓の音色が響きわたった。
ここは、多目的広場や防災拠点としての性格も併せ持っている。
取り囲む町役場と防災倉庫に土地を無償で提供する条件で、町の予算に組み入れてごんちゃんの要望通りの設備を整備したのだ。屋上の反射板もその一部だ。
勿論、住居部分などの建設費用や、設備の建設費用の一部は、ごんちゃんもかなりの額を負担している。しかし、町の殆どが神馬家の土地で、言い方を変えれば昔は殿様のような存在だったのだから、桁外れの金持ちだ、痛くも痒くもなんともない。それどころか町の行く末を考えて、喜んで出資した。出資にあたっては、すみれおばあちゃんの承認が必要だったのは、言うまでもない。
うまい具合に、角度を調節した四枚の反射板が、お互いに光を反射させ、芝生広場に柔らかな日差しをもたらしていた。
子どもたちは、一様に元気で笑い声が絶えない。
身重のももたちのお母さん、お腹の大きいかえでも負担にならない範囲で、集まった保護者たちと冷たい麦茶やお菓子を振舞っていた。
ごんちゃんはそんな風景を、10階の町長室から嬉しそうに見ていた。
また今日は、お祭りの出店申し込み最終日でもあった。
町役場の一階ロビーの特設会場で、それは行われている。
そこにやって来たのが、盗っ人三人衆の親分と一、二だ。
この三人の表向きの商売はテキ屋なのだ。売り物である自分たちで作るカラメル焼きは絶品と、自分たちで言っている。
神社に忍び込んだ時は、黒のお揃いのジャージだったが、今日はハイビスカス柄の黄色いアロハシャツに白のスラックス、カンカン帽に雪駄。
三人揃えて洒落たテキ屋風を決めている…つもりだ。
周りの建物は全て、パティオに背を向けて建てられており、裏口もないのでここからしか入れない。
やがて、子どもや保護者たちが、入り口を通って次々と芝生広場に集まってきた。
広場には和太鼓が二組置かれている。
そして、すみれおばあちゃんを先生にして、数十人の子どもたちが盆踊りの練習を初めた。
ももとさくら、たもっちゃんもその中に混ざって、練習している。
和太鼓のバチを叩いているのは、ボブとジョニーのアメリカンブラザーズだ──二人とも日本人だけど…。
しかし遺伝子に組み込まれた音感は、やはり突飛でていた。ごく普通の盆踊り曲がノリノリになるから不思議だ。
確かに子ども用の盆踊り曲は今やノリノリのものも多いが、大人が踊るような曲でさえ、そうなる。
ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…ドンドン、ドン、カカッカ、ドドンド、ドン…
子どもの盆踊りが終わると、続いて大人の稽古が行われる事になっている。こういう場合シャッターは開けっ放しにしておくが、夜になると、防犯協会のジャンパーを着た影の氏子衆が、交代で出入口を見守る事になっていた。
中道商店街のパティオに、盆踊り曲と太鼓の音色が響きわたった。
ここは、多目的広場や防災拠点としての性格も併せ持っている。
取り囲む町役場と防災倉庫に土地を無償で提供する条件で、町の予算に組み入れてごんちゃんの要望通りの設備を整備したのだ。屋上の反射板もその一部だ。
勿論、住居部分などの建設費用や、設備の建設費用の一部は、ごんちゃんもかなりの額を負担している。しかし、町の殆どが神馬家の土地で、言い方を変えれば昔は殿様のような存在だったのだから、桁外れの金持ちだ、痛くも痒くもなんともない。それどころか町の行く末を考えて、喜んで出資した。出資にあたっては、すみれおばあちゃんの承認が必要だったのは、言うまでもない。
うまい具合に、角度を調節した四枚の反射板が、お互いに光を反射させ、芝生広場に柔らかな日差しをもたらしていた。
子どもたちは、一様に元気で笑い声が絶えない。
身重のももたちのお母さん、お腹の大きいかえでも負担にならない範囲で、集まった保護者たちと冷たい麦茶やお菓子を振舞っていた。
ごんちゃんはそんな風景を、10階の町長室から嬉しそうに見ていた。
また今日は、お祭りの出店申し込み最終日でもあった。
町役場の一階ロビーの特設会場で、それは行われている。
そこにやって来たのが、盗っ人三人衆の親分と一、二だ。
この三人の表向きの商売はテキ屋なのだ。売り物である自分たちで作るカラメル焼きは絶品と、自分たちで言っている。
神社に忍び込んだ時は、黒のお揃いのジャージだったが、今日はハイビスカス柄の黄色いアロハシャツに白のスラックス、カンカン帽に雪駄。
三人揃えて洒落たテキ屋風を決めている…つもりだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
異世界でスローライフを送りたいと願ったら、最強の投擲術を手に入れました
佐竹アキノリ
ファンタジー
過労死してしまった南伊吹は、せめて次の人生ではスローライフを送りたいと願う。神様はその願いを叶えてくれたのだが――得られたスキルは「投擲術LV MAX」
「そっちのスローじゃねえ!」
平穏な暮らしをしたい伊吹の思いに反して、彼の投擲術はあまりにも強すぎて、あちこちから依頼が舞い込み、放っておいてはくれない。石を投げれば魔物の大群は吹き飛び、ドラゴンだって宇宙の彼方まで飛んでいく!
波瀾万丈の生活を抜け出すことはできるのか!? 伊吹の最強スロー(投擲)ライフが今始まる!
※小説家になろうでも投稿しています
日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~
海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。
そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。
そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
お后たちの宮廷革命
章槻雅希
ファンタジー
今は亡き前皇帝・現皇帝、そして現皇太子。
帝国では3代続けて夜会での婚約破棄劇場が開催された。
勿論、ピンク頭(物理的にも中身的にも)の毒婦とそれに誑かされた盆暗男たちによる、冤罪の断罪茶番劇はすぐに破綻する。
そして、3代続いた茶番劇に憂いを抱いた帝国上層部は思い切った政策転換を行なうことを決めたのだ。
盆暗男にゃ任せておけねぇ! 先代皇帝・現皇帝・現皇太子の代わりに政務に携わる皇太后・皇后・皇太子妃候補はついに宮廷革命に乗り出したのである。
勢いで書いたので、設定にも全体的にも甘いところがかなりあります。歴史や政治を調べてもいません。真面目に書こうとすれば色々ツッコミどころは満載だと思いますので、軽い気持ちでお読みください。
完結予約投稿済み、全8話。毎日2回更新。
小説家になろう・pixivにも投稿。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる