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第二章

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「クラウス、何を見ているのです! 目を潰しますよ!」

 エーナであるウォーレンならまだしも、フィル同様ペニンダであるクラウスがリースの裸体を見るなんてとんでもない。フィルは鬼の形相でクラウスを制止した。

「ウォーレン、早く! 早く坊ちゃまを捕まえてください!」

 再度声を上げて訴えると、ウォーレンが慌ててリースへと手を伸ばす。しかし、リースは華麗な身のこなしでさっとそれを避けてしまった。

「な、坊ちゃま……っ!」

 せっかくのチャンスだったのにとうなだれかけた直後、ふいにリースの体がひょいと持ち上げられる。

「そこまでだ、アイル様。大人を手こずらせるんじゃねえよ」

 片腕片足が負傷しているのもお構いなしに、クラウスは無事だった片腕で軽々とリースを担ぎ上げてしまった。その体勢だと、間違いなくリースのリースがクラウスの肩に当たっている。

「わー! 離せー!」

 リースはジタバタと暴れ、クラウスの背中をぽこぽこと叩く。

「そうですよクラウス! 今すぐ坊ちゃまを離してください! 坊ちゃまの坊ちゃまが当たっているでしょう!」

 一緒になって言うと、クラウスが「ああ?」と眉を顰めた。

「おまえが捕まえてくれって頼んだんだろ。そんじゃ、また坊ちゃまを逃してもいいのか」
「そ、それは……っ」

 今リースを逃したら、また捕まえるのに時間がかかるのは目に見えている。

「着替えの途中だったんじゃねえのか。このまま部屋まで運んでやるよ」

 歩き出したクラウスを見て、フィルはしぶしぶ手を借りることにした。いつの間にかリースは抵抗を止め、きゃっきゃと肩からの景色を楽しんでいる。

「わー! 僕、飛んでるよー!」
「おう。落ちるなよアイル様。部屋に戻ったらちゃんと着替えするんだぞ」

 随父然として言ったクラウスに、「はーい!」とリースが元気に返事をする。

「アイル様って……」

 複雑に呟いたフィルに代わって、ウォーレンがはっきりと否定した。

「クラウス、その方はリース様だと言っているだろう! 妙な呼び方はよせ!」
「あー、ほいほい。詳しい話はアイル様の着替えのあとな。な、アイル様?」
「僕、お着替えするー!」

 ウォーレンの指摘も虚しく、リースはアイルと呼ばれてにこにこと返事をした。
 どうにかリースを部屋へと連れ戻すと、今度こそあっちを向いているようにとフィルはクラウスに釘を差す。

「わーかったって。ったく、俺は野獣か何かかってんだ。未成年の子どもの裸を見たからって何とも思わねえよ」

 その未成年の子ども相手に恋情を抱くフィルには、刺さりすぎる台詞だった。
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