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〜最終章〜
178.『人質』
しおりを挟む便利屋『カモミール』の事務所へ向かうリンとしおん。
少し離れた距離でみつれとよつばが後を追う。
それを防犯カメラで怪しい人物がいないか監視するカエデ。
カエ「周りにまだ怪しい人はいません。」
インカムで全員に通達する。
リン「おっけー。そのままお願いねカエデちゃん。」
しお「カエデちゃん、事務所付近の防犯カメラをみてくれる?」
しおんはカエデに別のカメラを見るように指示する。
カエ「えっ…と……あっ、見れました!まだ事務所まわりは人がザワついてますが、今のところは怪しい人はいません。」
今朝方、シロサキによる爆破で半壊した事務所を一目見ようと野次馬が居る状態だった。
しお「もしかしたら野次馬に紛れてスタンバってるかもね…。カエデちゃん引き続き監視しててね。」
しおんはハナがもう事務所の中にいると予想した。
みつ「私とよつばさんは事務所の裏で待機する。必要になったらすぐ言ってくれ。」
リン「了解。」
リンとしおんは事務所付近まで到着した。
みつれとよつばはカエデの誘導で十分な距離から誰にも見つからず事務所裏まで辿り着いた。
リン「・・・行くよ、しおん君。」
しお「はい。」
2人は事務所に入っていった。
事務所内に入ると、しおんの椅子に座って電話をしているハナが居た。
ハナ「・・・はい、かしこまりました。……今現れました。……はい。では後ほど。」
ハナは振り返って二人を見た。
リン「ハナちゃん……」
リンの額から一粒の汗が流れる。
ハナ「早かったですね。」
ハナは椅子から立ち上がり、指を鳴らした。
すると続々と組織の構成員が現れる。
ハナ「他の2人も近くにいるんでしょ?大人しく出てきた方がいいですよ。さもないと……」
その時、4人のインカムからカエデの悲鳴が聞こえた。
しお「ッ!?カエデちゃん!?」
カエデの悲鳴を最後にそこからは声が聞こえなくなった。
ハナ「カエデちゃんの身柄はコチラが確保しました。大人しく私達の言うとおりにしないとカエデちゃんが大変な事になりますよ。」
想定外だった。
カエデがいるビルには警察官が10名程いたのにも関わらず、カエデは襲われてしまった。
リン「・・・みっちゃん、よつばちゃん、出てきて。カエデちゃんが襲われた。」
みつ「・・・わかった。」
みつれとよつばはゆっくりと事務所に入る。
4人は壁側へと並ばされる。
ハナ「カエデちゃんを一人にしたのは失敗でしたね。……正直、私もカエデちゃんを傷つけたくない。だから穏便に済ませたいです。」
ハナは銃を取り出し、みつれの腹部に発砲した。
みつ「グッ!?」
みつれはその場に倒れ込んだ。
リン「みっちゃんッ!?」
リンは動こうとするがすぐにハナに銃口を向けられる。
ハナ「動くな。」
もの凄い剣幕でリンを睨むハナ。
リンは一歩も動けなかった。
ハナ「アナタとしおん君は私と一緒に来てもらいます。残りの2人には死んでもらいます。」
そう言うとハナは躊躇無くよつばを撃った。
よつばはその場に倒れ込んだ。
しお「よつばさん!!!!」
しおんは思わずよつばの元へ動いてしまった。
ハナ「動くなって言ったでしょ。」
ハナは銃でしおんの頭を殴る。
しお「ぐっ……」
しおんは体勢を崩し、よつばの前で倒れる。
しお「よ、よつば……」
しおんはよつばのほうをみるとよつばはハナには聞こえない程の静かな声で囁いた。
よつ「ワタシ達は大丈夫だ……ここは任せろ……カエデちゃんを助け出せ。」
その言葉を信じることにしたしおんはよろけながら立ち上がった。
しおんはゆっくりハナのほうを見る。
しお「・・・」
ハナ「これ以上仲間を失いたくないなら言う事を聞いてください。」
するとハナのスマホに着信がはいる。
ハナ「・・・はい。……はい、確保しました。…………かしこまりました、シロサキ様。」
ハナは通話を切った。
ハナ「カエデちゃんはシロサキ様が預かってる。カエデちゃんがどうなるかはアナタ達次第です。」
ハナは手錠を2つ取り出した。
ハナ「場所をかえます。両手を後ろに回してください。」
リンとしおんは従うしかなかった。
2人は手錠をかけられ、事務所の外に待機していた組織のワゴン車に乗せられる。
ハナ「そこの2人は好きにしなさい。けど、必ず殺しなさい。」
ハナは構成員達にそう告げ、事務所を出てワゴン車に乗り込んだ。
ハナが乗り込むと、ワゴン車は猛スピードで事務所から走り出した。
事務所に残されたのは、みつれとよつば、組織の構成員十数人。
「・・・さて、どうするよ?」
「死ぬ前に犯してやるか。その後バラバラにしてやろうぜ。オレらの邪魔をした罰だ。」
構成員達は倒れているみつれとよつばに近づく。
構成員がみつれとよつばの身体を起こすと2人は一斉に目を開け、構成員に攻撃する。
「うわっ!?」
ザワつく構成員達。
2人はユラっと立ち上がった。
よつ「ふぅ……みつれさんの読みは当たりましたね。これ付けといて正解でした。」
よつばは腹部から防弾チョッキの一部を取り出した。
みつ「腹に撃ってくれて助かったな。頭撃ち抜かれてたらお終いだった。」
みつれはサバイバルナイフを取り出して構える。
「生きてやがったか!!……連絡だ!幹部に連絡しろ!」
構成員の1人がスマホを取り出す。
よつ「おっと、連絡は困る。」
よつばはポケットからボタンを取り出し、スイッチを押した。
するとスマホの電源がショートした。
みつ「しおんが作った小型の小規模電磁パルス発生装置だ。ホントはここで使いたくなかったが……。これではスマホは使えない。」
「くそッ!ぶっ殺せ!!」
構成員達は一斉に2人に襲いかかる。
よつ「・・・好き勝手暴れていいんですよね?みつれさん。」
みつ「あぁ、構わない。早く片付けてしおんとリンを追うぞ。」
満面の笑みでよつばは笑った。
よつ「あはは!よっしゃー!!」
みつれとよつばは構成員達と対峙する。
一方リンとしおんを乗せたワゴン車は猛スピードで街中を駆け巡る。
しお「・・・いったいどこへ向かうんだ…」
リン「わからない。けど下手に動いたらカエデちゃんが危ない。大人しくしていよう。」
2人の会話にハナが入ってきた。
ハナ「今向かってるのはシロサキ様のところです。」
無表情で言うハナ。
ハナ「・・・ハナちゃん、もうやめてよ…。私達の元に戻ってきて……」
するとハナは顔色をかえた。
ハナ「私を捨てたのに良く言えたもんだな。」
ハナの目には憎悪が満ちあふれているのにリンは気がついた。
リン「ハナちゃん……私はハナちゃんを捨ててなんかいない!信じて!ハナちゃんはクスリを使われてシロサキの都合のいいように吹き込まれたんだよ!!」
リンがそう言うと車内に銃声が鳴り響いた。
弾丸はリンの顔の横に被弾した。
ハナ「黙れ、喋るな。」
これ以上刺激してはいけないと思い、リンは口を閉じた。
ハナ「・・・もうすぐ到着する。それまで黙ってろ。カエデちゃんを死なせたくないならな。」
2人はただ沈黙するしかなかった。
自身の行動ひとつでカエデが殺されるかもしれないからだ。
走り出してから数十分。
ワゴン車は目的地に着いた。
着いたのは埠頭だった。
ハナ「降りろ。」
ハナはリンとしおんを車から降ろした。
するとそこにはユウゼンが立っていた。
しお「と、父さん!?」
ユウゼンの姿を確認するとハナはしおんの手錠を外した。
しお「父さん、これはいったい……」
しおんは状況がわからず混乱していた。
裏切りがバレたと思っていた父親が始末されずに、今自分の目の前にいるからだ。
ユウ「しおん……」
ユウゼンがしおんの名前を呼ぶと、1台の車が現れた。
その車から出てきたのはシロサキと捕らわれたカエデだった。
リン「ッ!?カエデちゃん!!!」
カエデは目隠しをされ、身体も拘束されていた。
シロサキはリンを見てニッと笑った。
シロ「久しぶりだねクソ刑事。」
リン「シロサキぃ!!カエデちゃんを離せ!!」
2人のやり取りをみていたユウゼンは動揺していた。
ユウゼンはカエデを人質にしているのを知らなかったからだ。
シロ「ユウゼン、どうした?お前のやるべき事、忘れたのか?」
ユウ「・・・子どもを誘拐したのか?」
シロ「今更どうした?このガキは便利屋とつるんでたんだ、無関係のガキじゃない。それにそんなことお前が気にしてる場合じゃないだろユウゼン。」
ユウゼンはギリっと噛み締める。
シロ「やるべき事をやれ。お前の生きる道はそれしか無い。」
シロサキはカエデの髪を引っ張りあげた。
しお「シロサキぃ!!」
しおんは走り出した。
しかしユウゼンが立ち塞がる。
しお「どけぇぇぇ!!!」
しおんは飛び蹴りをユウゼンの顔面に当てる。
しかしユウゼンはそれを受けとめてしおんの脚を掴み、投げ飛ばす。
しお「くっ!」
ユウゼンはしおんの前に立つ。
ユウ「・・・助けたいなら俺を殺してみろ、しおん。」
ユウゼンは毅然と構え、しおんに拳をいれる。
しお「……許さない……許さないッ!!」
ユウゼンの拳を受け流し、ユウゼンの額に頭突きをして反撃するしおん。
ユウ「グッ!」
ユウゼンは少し後ろによろめく。
しお「これが父さんのしたかったことなの!?子どもを人質にしてまでしたかったことなの!?」
これまで以上に怒りをあらわにするしおん。
しおんとユウゼン。
2人は埠頭で拳をまじ合わせる。
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