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〜最終章〜
175.『更なる展開』
しおりを挟むカエデの機転により九死に一生を得たみつれ。
みつれ、カエデ、リンは車で安全な場所へ移動した。
リン「今向かってるところならとりあえず安全だよ。しおん君とよつばちゃんもそこに向かってる。そこでもう一度、これからどうするか考えよう。」
みつ「あぁ。」
移動の最中、みつれはリンに現在の状況を聞いた。
警察署は半壊。
負傷者多数、死者は無し。
刑務所は7割崩壊。
負傷者、死者共に不明。
脱獄者数十名。現在調査、捜索中。
リンの話いわく、爆破の規模から推測するに、組織の目的は便利屋『カモミール』とリン。
『カモミール』からの襲撃に特殊部隊が使われることを知った組織は、刑務所を爆破して警察全体を混乱させることにあった。
脱獄者が多ければ多いほど、国は特殊部隊を使ってでも自体の沈静化に急ぐ。
そうすれば特殊部隊は使えなくなる。
・・・というのがリンの見解だった。
みつ「・・・なるほどな。恐らくその線で間違いないだろうな。ユウゼンの裏切りが完全にバレているんだ。」
リン「・・・ユウゼンの命が危ないね…。」
みつ「ユウゼンはしおんの父親だ。死なせる訳にはいかない。だが、もしかしたらもう始末されてる可能性もある…。」
車内に沈黙の時間が流れる。
そうしているうちに目的地に到着した。
リン「着いたよ。とりあえずみっちゃんの怪我の手当てをしよう。」
みつ「ここは………」
そこは街中の雑居ビル。
どこにでもある雑居ビルだが、みつれはそのビルを覚えていた。
リン「懐かしいでしょ?このビルは私が監禁されたビルだよ。あの事件から警察が管理してるから組織の手から完全に離れてるし組織が出入りしにくい数少ない安全地帯なんだ。」
そこは以前、リンがシロサキに拉致されて監禁されていた雑居ビルだった。
現在は警察が管理しており、常備警察を数人配置してパトロールしている。
みつ「なるほどな……。確かにここなら大丈夫だな。」
ビルの中に入り、傷の手当てを受けるみつれ。
程なくしてしおんとよつばもビルに到着した。
しお「もう着いてたんだね。みつれさん!?ボロボロじゃん!大丈夫!?」
みつ「あぁ、大丈夫だ。そっちも大丈夫だな。」
みつれは2人の様子を見て安堵する。
リン「じゃあ、これからなんだけど…まずは状況を全員で共有しよう。」
リンはしおんとよつばにも現在の状況を報告した。
リン「ちょうど特殊部隊の人達と居たタイミングでカエデちゃんからSOSがきたから助けに行けたけど、残念だけどもう特殊部隊は使えないよ。」
しお「なるほど……。じゃあ僕たちだけでやるしかないね。」
みつ「あぁ。あと気になるのがユウゼンの安否だ。ヤツらの行動…恐らくユウゼンの裏切りがバレてるぞ。」
しお「それは僕らも思ってた。だからコレ。」
しおんはポケットからスマホを取り出した。
しお「僕らを襲ってきたヤツらのスマホだよ。もしかしたら指示を出したヤツから連絡くると思って持ってきた。スマホのGPSは切ってるから安心して。」
リン「なるほど。そのスマホの着信履歴とかは?」
しお「それはこれから。僕らも急いできたから。」
しおんはスマホの着信履歴を確認する。
しかし着信履歴は0件。
しお「ん?おかしい…。履歴が無い。」
よつばがしおんが持つスマホを覗き込む。
よつ「・・・これ、なんか通知きてるぞ?」
よつばはホーム画面のアプリを指さす。
それは真っ黒のアイコンをしたアプリだった。
しお「・・・『BOX』?聞いたことないなぁ…。まさか……組織内のアプリ?」
冗談みたいな話だが有り得る。
ユウゼンならアプリくらいは朝飯前でプログラミング出来る。
しお「・・・多分直接開かない方がいいね。居場所が特定されるかも。」
しおんは逆探知を恐れてアプリの起動を諦めた。
みつ「・・・これからどう動く?奴らがここで引くとは思えない。」
リン「そうだね。けど特殊部隊は使えないよ…。」
警察、特殊部隊は使えない。
街には組織の人間が血眼になってみつれ達を捜している。
目的地の組織の工場へは一筋縄ではいかなそうだ。
カエ「あ、あの………」
先程まで口を閉じていたカエデが口を開いた。
カエ「ハナさんは今外で行動してますよね。なら工場に行かなくても、誘き出して助け出せないでしょうか?」
リン「・・・確かに、先にハナちゃんを助けるのが先だね。本当はさっきの段階でハナちゃんを保護したかったけど……」
カエデの案に場の全員が賛成した。
みつ「ハナさんの身柄をこっちでおさえれば奴らも出てくるかも知れない。特にシロサキは。」
しお「そうだね。問題はどう誘き出すかだけど……僕に案がある。これをわざと使おう。」
しおんは『BOX』のアプリを起動することで敢えて居場所をバラし、ハナを誘き出すという提案をした。
しお「上手くいけばシロサキも誘き出せるかも。かなりリスクはあるけど……どうかな?」
よつ「どこで居場所をバラすかにもよるな。退路がしっかり確保出来る場所じゃないと一斉に来て逃げれなくなるぞ?」
しお「そうだね。もちろん居場所によってはハナさんが来るとも限らないし、大勢で囲まれたら一巻の終わり。場所は重要だね。」
リン「・・・」
4人がディスカッションしている中、リンはしばらく俯いて考えていた。
みつ「・・・お前はどう思う?リン。」
みつれはリンに問いかけた。
リン「・・・ココ、使えないかな?」
リンは床を指さす。
リンは今いるビルを指定した。
みつ「このビルか?……悪くないが退路が限られるぞ。それにビルごと爆破されたら終わりだ。」
元々は組織の所有物だったビル。
逃げ道を塞ぐことなど組織にとっては容易なこと。
自分達にはかえって不利と考えたみつれ。
リン「・・・実はね、ヤツらが知らない場所があるの。」
みつ「どういうことだ?」
リンは全員を地下に案内する。
このビルの地下は以前リンがシロサキに監禁されていた場所だった。
カエ「ビルにこんな場所が……」
リン「ここは私が閉じ込められていた場所だよカエデちゃん。」
リンはカエデに当時のことを説明した。
みつ「それでリン、ヤツらの知らない場所というのは?」
リン「・・・これだよ。」
リンは床のタイルを一枚剥がした。
そこには梯子が続いていた。
しお「これって……」
リン「警察でビルを管理してる間に作ったの。この先は下水道に繋がってる。ここからならたとえ退路を無くしても脱出出来る。」
リンは準備していた。
いつか来るこの日、この時のために。
みつ「なるほどな。確かにここならビルを爆破されても大丈夫だな。」
しお「じゃあここにする?」
みつれはこくりと頷いた。
するとリンのスマホに着信が入る。
電話の相手はリンの部下だった。
リン「ちょっとごめん。」
リンは少し離れて電話に出る。
リン「もしもし、そっちはどう?」
「リン先輩……そ、その……」
なにか様子がおかしい部下。
リン「どうしたの?」
「ハ、ハナさんが………ひっ!?」
リンの通話越しからカチャっと音が聞こえた。
リンは拳銃の音だとすぐに分かった。
リン「どういう状況!?今どこ!?そこにハナちゃんがいるの!?」
リンは嫌な予感がした。
「あっ……あ………べ、便利屋の事務所に……しおんと2人で……来い……」
部下は震えた声で言った。
ハナ「よく出来ました。」
ハナの声が聞こえた後、銃声が鳴り響いた。
ドサッと身体が倒れる音が聞こえ、スマホが地面に着く音が聞こえた。
そして電話は切れてしまった。
リン「・・・・・ッ。」
リンは唖然とした。
まさか、ハナがリンの部下を……。
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