上 下
7 / 15
王太子妃→王妃→王太后→后王太后……疲れた

第7話:王子から逃げ出した……しかし、回り込まれてしまった

しおりを挟む
 正門を、マリアンヌ様……というか、マリアンヌ嬢と抜けるとすぐに、他の貴族子息令嬢の方が挨拶をしてこられた。
 ふむ……やはり、この頃はフィアンス侯爵家の勢力は旺盛で、あのバカとの婚約もあってか人気があるね。

「ごきげんよう、リース嬢」

 おずおずといった様子で近づいてきた少女にマリアンヌ嬢が声をかけている。

「あっ、あの……そちらのご令嬢はどちらの家門の方でしょうか? お怪我もされているみたいですし」
「私? へへぇ……ただの、平民でございます。名乗るほどのものでも、ありませんよ」
「えっ?」
「……エリスさん、馬車では普通に喋ってらしたのに」

 おお……どうやら、この平民っぽい喋り方は違うんだね。
 村に視察に行ったときに、こんな喋り方をする人がいたが。
 
「平民? マリアンヌ様、そちらの平民は制服を着てらっしゃるみたいですが……もしかして、学園内専用の召使いですか?」
「さ……さすが、フィアンス侯爵家……学園生活を快適にするためなら、平民の侍女の学費くらい払っても小動こゆるぎもしないのか」
「ぱねぇな」

 ……なるほど。
 それは、良い案だね。
 彼女の侍女ってことにすれば、彼女の周りで色々とサポートでき……いや、無しだね。
 あのバカとの遭遇率があがるのは、真っ平ごめんだね。

「そうさね。わたしゃ、マリアンヌ嬢の侍女さ」
「また、おかしな喋り方を……さきほど出会ったばかりですが、とても楽しい方で気も合うのでお友達になってもらいましたの」

 なんだ……と?
 いつの間に、お友達にクラスアップしたんだい?
 昔の私なら、馴れ馴れしいと一喝していただろう……一番ストレス過多だった第一子出産後なら。
 ガルガル期はその一度っきりだったけどね。
 あのバカと、王族との縁繋ぎの下心の透けた相手限定だったけどさ。

「平民ですよ?」
「だから、私は平民だって何度も言ってるでしょうに……リース嬢でしたっけ? そう何度も同じことを確認するのは、淑女として色々と残念な方に見えますよ。一度状況を飲み込んで情報を整理してから、言葉を変えて別の場所で確認なさい」
「……平民ですよね?」
「平民のはずですわ」

 リース嬢とマリアンヌ嬢が揃って首を傾げているが。 
 数分前にした自己紹介の内容どころか、たったいま念押しした内容を疑うとか……本当に、大丈夫かねぇ。 
 とくに王太子妃教育を受けているはずの、マリアンヌまで。

「なぜか、おばあさまに叱られたような気持になったのですが……」
 
 そりゃ、わたしゃ中身がクソババアだからねぇ。
 
 そんなやり取りをしていたら、前を歩いていた集団がパッと二手に分かれた。
 なんだい、突然……

 本当に、なんなんだい……
 割れた人だかりの先に、仁王立ちする見覚えのある馬鹿面が。

「殿下……」

 周囲の子たちもざわざわしてるから、そんな目立つ立ち方するんじゃないよ。
 そういう無駄に自信過剰で自意識過剰なところが、昔から腹が立つんだよ。

「君は「マリアンヌ様! 殿下ですよ! ダーラシナス殿下! この国の第一王子で、マリアンヌ様の婚約者であらせられる殿下が、わざわざ初登校の日にお出迎えですわよ! 素敵ですわー! ロマンチックですわー! ドキドキが止まりませんね!」」
「えっ? いま、殿下はエリスさんの方を「ええ? そんなわけないでしょうに。婚約者の晴れの日に、他の女性になんの用があるんですか? 婚約者に対する入学の謝辞より先に声を掛けるべき相手、ましてや異性なんて存在するわけないでしょう!」」

 明らかに嫌な予感がしたので、全力で先手を打たせてもらって流れはこっちで作らせてもらおう。
 マリアンヌまでおかしなことを言いだしそうだったが、上手くいったはずだ。
 これで、私に声を掛けてきたら……あのバカを本気で殴ってしまいそうだ。
 今は平民だから、間違いなく社会的にか法律的に殺されるだろうが……城内の隠し通路を網羅している私なら、逃げられる気がするね。

「そ……そうだな。マリ「ちょっとリース嬢、何をしているのですか? ここは、私たちはお邪魔虫ですよ! ほら、あとは若い二人に任せて、私たちは先に行きましょう」」
「えっ? あっ……はい」
「「あっ……」」

 あのバカが近づいてきたので、リースを巻き込んで戦場離脱をはかる。
 ダーラシナスが何か言ってるが無視だ。
 いや、マリアンヌまで寂しそうな声を出してきたのは、驚いたけど。
 
 二人を結び付けるために頑張ろうと思ったが……マリアンヌのためには婚約を破棄させて、もっと良い男性を探してあげた方が良い気がしてきた。
 改めて、この頭の軽い馬鹿の馬鹿な行動を見て……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本日をもって、魔術師団長の射精係を退職するになりました。ここでの経験や学んだことを大切にしながら、今後も頑張っていきたいと考えております。

シェルビビ
恋愛
 膨大な魔力の引き換えに、自慰をしてはいけない制約がある宮廷魔術師。他人の手で射精をして貰わないといけないが、彼らの精液を受け入れられる人間は限られていた。  平民であるユニスは、偶然の出来事で射精師として才能が目覚めてしまう。ある日、襲われそうになった同僚を助けるために、制限魔法を解除して右手を酷使した結果、気絶してしまい前世を思い出してしまう。ユニスが触れた性器は、尋常じゃない快楽とおびただしい量の射精をする事が出来る。  前世の記憶を思い出した事で、冷静さを取り戻し、射精させる事が出来なくなった。徐々に射精に対する情熱を失っていくユニス。  突然仕事を辞める事を責める魔術師団長のイースは、普通の恋愛をしたいと話すユニスを説得するために行動をする。 「ユニス、本気で射精師辞めるのか? 心の髄まで射精が好きだっただろう。俺を射精させるまで辞めさせない」  射精させる情熱を思い出し愛を知った時、ユニスが選ぶ運命は――。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話

下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。 主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。 小説家になろう様でも投稿しています。

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

処理中です...