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第3章:覚醒編(開き直り)

第17話:グリッドジャストール邸にて朝食

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「おはようございます」

 ミラーニャの町にあるグリッド邸で、祖母であるカーラに起こされた。
 使用人がいるのにわざわざおばあさまが起こしにくることに愛されているなと実感しつつ、顔を洗って食堂に向かう。
 朝食はみんな揃ってが、グリッドジャストール家のお約束だ。
 面倒なことこの上ない……子供の精神に合わせて精神年齢を落としているとはいえ、客観的に内面だけ見ると爺と婆しかいない。
 父や母、ヘンリーとサリアはジャストールの本邸に帰ってしまったからな。
 子供のフリをすることは同調のお陰で苦ではないが、たまに我に返ったときになんか微妙な気分になってしまうのはどうしようもない。
 さらにいえば、ジェノスやフォルスはもっと爺だからな。
 せめてアルトやヘンリー達がいれば、もう少し子供らしくなれるのだが。
 コーヒーを口に運びながら、目の前でニコニコとこちらを見ている祖父母に目をやる。
 孫の成長を噛み締めているのが、見て取れる。
 
「いつまで、ここにいるつもりですか?」
「あとはアルトお兄さまが、ご友人を連れてこられて再度町を紹介するくらいまでですかね?」

 祖母の質問に答えてからクロックマダムを口に運ぶ。
 美味しい……ちなみにこれも俺が広めた。
 パンにハムとチーズを挟んで、フライパンにバターをひいて焼いたサンドイッチ。
 上からさらにベシャメルソースやモルネーソースを掛けただけのものをクロックムッシュ、そこに目玉焼きを乗せたものをクロックマダムと呼ぶ。
 クロックマダム……目玉焼きトーストの進化版だな。
 
「あの子から、また確認の手紙が来てますよ」

 父ゴートは、俺がいつジャストールの町に戻るのか、気になって仕方ないらしい。
 夏休みは長いんだから、気長に待っていて欲しい。
 ああ、別に催促というわけじゃないのか。
 俺が戻るとなると、下手するとリック殿下やジェニファ嬢が着いてくるから、事前に準備が必要ということか。
 といっても、こればっかりはアルト次第というか。
 アルトが連れてくる予定のゲスト次第というか……

「で、今日の予定はどうなっておるのじゃ?」

 今度は祖父から質問が投げかけられる。
 といっても、今日の予定は特に決まっていない。
 というのが、アルト達が到着予定だから。
 その受け入れ準備があるというか。

 ジャスパーにキーファ、マリアとガーラントも一緒に来るから。
 マリアとキーファ、ガーラントとジャスパーがそれぞれ姉弟、兄弟にあたる。
 そして上2人は兄と、下2人は俺と同級生。
 つくづく縁があるというか。

 キーファはなんだかんだで最初から、そこまで俺に対して敵意を持っている感じじゃなかったが。
 ジャスパーは……まあ、なんというか敵意とは違うけど、睨まれてたのは確かだな。
 今は違った感じで、面倒くさい子になったけど。
 良い友達でもある。

 俺のことを素直に認めて師と仰ぎだしてから、ブレード家での謹慎も解けたらしい。
 まあ、ガーランド自体、俺の兄のアルトに勝てたことが無いからな。
 実際はその実力よりも傲慢で高い自尊心が問題視されていたようで、俺から素直に教えを乞うようになってからはガーランドの報告で彼の家族も許す方向にはなっていたらしい。
 本人には言ってないらしいが。
 いや、事実凄い真剣に訓練して、剣の腕なら同級生の中なら他の追随を許さないレベルだ。
 俺?
 俺はほら……いろいろと反則チートだから、仕方ないよね?
 前世の記憶や経験、スキルや加護込みでいったら……ね?

 そんなこんなで、なんだかんだと最初の人生とは比べるべくもなく周りに人が増えたのは、良いことだろう。
 とはいえ第二の人生でも、それなりに楽しい生活を送れたんだけどな。
 結婚もできて玄孫にまで恵まれて、多くの家族に恵まれた大往生。
 その経験があったから、最初の人生2周目も腐ることなくここまで来られた。
 本来なら魔王化、もしくはその兆候が現れているくらいの年齢だろう。
 家族が殺されるのも、このころだったと思う。
 あとは、残すところはリカルドの問題だけだな。
 光の女神に唆されて、勇者気取りで俺を殺した元親友……
 最初の人生でも、二周目でも相変わらずの傀儡っぷりに憐れにすら思えてくる。
 いや二周目に至っては道化師ピエロだな。
 救ってやりたい気持ちがないわけでもないが……

「お兄さまと私の級友たちが到着しますので、とりあえずそちらの対応をしようかと」
「ふむ、なんやかんやと忙しいのう」
「まあまあ、この町のことを一番知っているのはルークですからね」

 祖父の質問に答えると、少し呆れたような寂しいような返事がかえってきた。
 祖母がすぐにフォローをしてくれたが、確かにこの町の開発にずっと携わってきたから。 
 町を案内することに関していえば、ジェノスか俺かといった感じだろう。
 いや、祖父や祖母も、よく町の方にデートに出かけているようではあるが。
 本当に仲が良くて、見ていて微笑ましくなる2人だ。
 とはいえ、やはり祖父母と俺とじゃ見る物が違うというか。
 確かに祖父は領主視点で、住人の暮らしぶりなんかも視察しているようだが。
 俺の場合は、自身の特性を活かして年齢層別の視点で、現状を視察し続けていたような状態だからな。
 うん、こういった時に精神年齢を身体に寄せたり、死んだときの年齢に寄せられるのは便利だなと感じた。
 当時はざっくりとした感覚での操作だったが、いまはだいぶコントロールできるようになってきた。

「いえ、学校に通っている間にさらに発展していて、戸惑うばかりですよ。住人の方々の頑張りにはただただ頭が下がります」
「持って回ったような言い方ね」
「いいんじゃないか? 貴族の子供としては、優秀で立派じゃと思うぞ……まあ、もう少し子供らしさもいると思うが」
「前から、子供らしくない子だったじゃないですか」
「うむ……そうじゃな」

 2人から呆れられたような表情を向けられたが、気にしたら負けだ。
 とりあえず、昼頃にアルト達が到着予定だから、昼食会場の場所を決めておかないと。
 あー、ジェニファも来るだろうし、エルザとクリスタも一緒の方が良いか。
 ジャスパーたちは同級生だから、多少は話しやすいだろうし。
 アルトが来るから、リック殿下達の対応は任せられるけど。
 今日は疲れているだろうし、なるべく疲れないようなルートが良いか。
 となると、ホテル近辺かな。
 街中を移動できる馬車も手配しないと。
 あー、でもリック殿下とビンセントは、放っておいたらプールに行きそうだな。
 声を掛けた方がいいとは思うけど、正直大所帯過ぎるのも……

「ごちそうさまでした」
「うむ、今日もしっかりと楽しむんじゃぞ?」
「そろそろ、予定を立ててお父様にお伝えするんですよ?」
「はい、分かりました」

 祖父母に声を掛けて食堂を後にすると、外に出る準備をする。

「今日は2人で補佐に回りますので、大丈夫ですよ」
「ああ、そうしてもらえると助かる」

 部屋であれこれと用意していたら、フォルスが現れて声を掛けてくる。
 今日はジェノスとフォルスの2人ともがついてくれるらしいので、かなり楽ができる。
 どちらかにリック殿下の方を任せてもいいかもしれない。

「とりあえず、昼食の会場の予約は済んでおりますので、あとはアルト様方の到着を待つだけですね。一応、馬車の場所と速度から割り出したところ、11時頃には正門前に着くと思われます」
「ありがとう、入場手続きはパスできるように根回ししておこう」
「ええ、いちおうその時間の受付の者には、伝えております。馬車の紋章から分かるとは思いますが」
「ああ、うちの領地の謹製の馬車だから、それ以前に客車の造りで分かってもらえると思うけど」

 サスペンション搭載型の、最新の馬車だからな。
 あー……第3陣の子たちもテンション高そうだな。
 とりあえず、ジェノスにリック殿下達の方に伝言をお願いしておこう。
 プールに行くか、こっちに合流するかの返事をもらって帰ってもらえばいいか。
 どっちに転んでも、2人のサポートがあれば問題ないだろうし。
 
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