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√エリザベース act.1
② ~ノーギャラ助っ人の成れの果て~
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それから市民エルマーとお会いしてお話する日が続きましたわ。しかし今週は、彼の工場でのお仕事が忙しいらしく、お休憩ということで。
バルコニーから眺めるフランポフルトの街は、オシャンティで爽快ですわ。
「のりえはもう流暢に話せるようになったんだから、彼を解放してあげるピコよ」
「いやですわ。私、彼と一緒にいると、なんだか心がふわふわしますの。ところでポコポコさぁ」
「ピコピコだポコ! いやピコ!」
「なんだか私、会話や行動かえりみたら、自分がエリザベースレベルになってると感じるんだけど……」
「そりゃ地頭がエリザベースなんだから仕方ないピコ」
はぁ。溜め息出るわ。
「あまり彼に夢中にならない方がいいピコ。令嬢と平民じゃ釣り合わないピコ」
「でもやっぱり、家柄ではなくて、心から求める方と結ばれたいですわ」
これはエリザベースの気持ちが伴う行動だもん、彼女は本当はそういうキャラなんだ。
「それに彼ってば学習中に、恋心を伝える言葉、一生懸命聞いてくるんですのよ。これって私にアプローチしたいという証なのでは? 身分差からダイレクトに言えないから……みたいな!」
ピコピコがご都合主義に出てきたハーブティーをたしなみ始めた。
「彼に会いたくなってきましたわ! お散歩に行きましょう!」
「令嬢そんな簡単に徒歩で出かけていいのかなぁ……」
聞いていた彼の工場の住所まで、すっとんで行きましたわ。
「そういうことしてるから通りすがりの老人に悪役押し付けられたりするってことを学んだ方がいいピコ~~」
「あ、エルマ~~!」
彼は工場の隣の木陰で腰を落として溜め息をついていました。
「あ、エリザベース様」
「どうかなさったの?」
「求められているクオリティの製品開発が滞っていて……。ああ、せっかくこんなところまでいらしてくださったんだ。父に紹介させてください」
えっ。これはもう婚約までいっちゃう流れでは……!
「明らかに金目当てだピコ~~」
「おおこれはこれは、エリザベース様、息子がお世話になっております」
「お世話して差し上げてますわ。よろしくってよ」
ここぞという時にエリザベースの地頭出てくるの、止めてくれないかな。
「うちの工場はワイヤー作ってるんですがねぇ……。最近はより“強く”“長く”を求められていまして……しかしうちの製品はどうにも、さくっと折れてしまうのです」
「ワイヤーも男も、強く長くは必須事項ですわね」
エリザベースの中の人、絶対中年のシナリオライターだわ。(怒)
「のりえが言ってるピコ~~。ごまかし良くないピコ~~」
でも助けてあげたい。お金は出さずに、どうにか。
ちょっと胡坐をかいて、指舐めて、頭でくるくる~~。木魚ぽこぽこ~~考え中~~チーン!
「それ高3の持ってるネタじゃないピコ……」
「思い出した! これ プロジェクティW~挑戦者の成れの果て~ で観たことあるぅぅ――!!」
「サブタイトルが不穏な番組ピコね……」
「お義父さま!」
「は、はい!」
「熱処理ですわ! ワイヤーが強くなる方法!」
「ね、熱……?」
「鋼を変態点以上の温度までなんちゃらかんちゃら~~、クエンチバードニングほにゃららら~~テンパリングでほいほいほい~~とかなんとかやってみるといいですわ!」
「おおっやってみます!!」
「ええ、私もお手伝いしますわ!」
からの作業着着用である。
「プロジェクティWのテーマソングが聞こえてきそうピコよ」
ところで、プロジェクティWを思い出せて、なんで本名思い出せないのか。
「まぁ、のりえがテレビっ子で良かったピコね」
「あら、あなたもお手伝いさんですか?」
作業着で手伝ってる私のところに同じく作業着の、東洋人の娘が話しかけてきました。たどたどしい現地語で。しかしこの辺りに東洋人とはこれいかに。
「え、ええ、頑張りましょうね!」
そして夜になりましたわ。
「ばんざーい! ばんざーい!!」
「ありがとうございます! エリザベース様のおかげだ! 誰にも負けない、最強のワイヤーが、うちで作れるようになったなんて」
「これで逃げた従業員も戻ってくるだろう!」
エルマーもお義父様もこんなに喜んで、私もツナギで工場勤務頑張った甲斐があろうというもの。
ところで、あなたの隣にちょこんと立っている、その東洋人の娘は何ですの?
「そうだ、彼女も紹介させていただけますか!」
あ――これヤな予感キター。
「日本に亡命していた時、恋に落ちた娘です」
「おちづと申します。ぺこり」
あああやっぱり~~~~。
「エルマー様ったら、“でーとしたい”なんて恋文をくださったので……亡命して参りました。きゃっ(照)」
ソレたぶん亡命でもなんでもなくて、ただの旅行、もしくは移住!
「エリザベース様、僕と父からお礼に、心ばかりの品を受け取っていただけますか?」
「うん……?」
ああもう疲れた、早く帰りたい。
「もらえるものはもらいますが、宅配でお願いしますわ……」
「了解です!」
帰ってきました。もう寝る。しくしくしく。ふかふかキングサイズベッドが空しい。やっぱり古今東西、イイ男は売却済みなのよ。
「のりえ~~。こういう時のための歯車だピコ~~。気分転換するピコ~~」
「むにゃむにゃ、起きたら使いますわzzz」
「仕事疲れですぐ寝られるなんて、貫徹ゲーの毎日よりよっぽど健康的だピコ~~すやすやぁ」
ん~~。気持ちのいい朝ですわ! ピコピコの勧めで、今から移動アイテム“歯車”を使ってマリーヤルートの方へ行くことにしたのですが。
「歯車ってどう使えばいいんですの?」
おぼんみたいなサイズのそれを渡されたのですが。
「これを片手に持って、ジャンプするだけでいいピコ」
うーん? こうかな?? 普通にジャンプしてみたけど。
「何も起こりませんわ」
「それじゃぁだめピコ! もっとスピード感を持つピコ!」
「ス、スピード感?」
「某配管工がブロック壊す時のようなジャンプをするピコ!」
……何でそんなことしなきゃいけないの。
「ゲーム制作者はこういった形で彼にリスペクトの意を示すんだピコ」
マリーヤさながらの舌打ちしたいわ。
バルコニーから眺めるフランポフルトの街は、オシャンティで爽快ですわ。
「のりえはもう流暢に話せるようになったんだから、彼を解放してあげるピコよ」
「いやですわ。私、彼と一緒にいると、なんだか心がふわふわしますの。ところでポコポコさぁ」
「ピコピコだポコ! いやピコ!」
「なんだか私、会話や行動かえりみたら、自分がエリザベースレベルになってると感じるんだけど……」
「そりゃ地頭がエリザベースなんだから仕方ないピコ」
はぁ。溜め息出るわ。
「あまり彼に夢中にならない方がいいピコ。令嬢と平民じゃ釣り合わないピコ」
「でもやっぱり、家柄ではなくて、心から求める方と結ばれたいですわ」
これはエリザベースの気持ちが伴う行動だもん、彼女は本当はそういうキャラなんだ。
「それに彼ってば学習中に、恋心を伝える言葉、一生懸命聞いてくるんですのよ。これって私にアプローチしたいという証なのでは? 身分差からダイレクトに言えないから……みたいな!」
ピコピコがご都合主義に出てきたハーブティーをたしなみ始めた。
「彼に会いたくなってきましたわ! お散歩に行きましょう!」
「令嬢そんな簡単に徒歩で出かけていいのかなぁ……」
聞いていた彼の工場の住所まで、すっとんで行きましたわ。
「そういうことしてるから通りすがりの老人に悪役押し付けられたりするってことを学んだ方がいいピコ~~」
「あ、エルマ~~!」
彼は工場の隣の木陰で腰を落として溜め息をついていました。
「あ、エリザベース様」
「どうかなさったの?」
「求められているクオリティの製品開発が滞っていて……。ああ、せっかくこんなところまでいらしてくださったんだ。父に紹介させてください」
えっ。これはもう婚約までいっちゃう流れでは……!
「明らかに金目当てだピコ~~」
「おおこれはこれは、エリザベース様、息子がお世話になっております」
「お世話して差し上げてますわ。よろしくってよ」
ここぞという時にエリザベースの地頭出てくるの、止めてくれないかな。
「うちの工場はワイヤー作ってるんですがねぇ……。最近はより“強く”“長く”を求められていまして……しかしうちの製品はどうにも、さくっと折れてしまうのです」
「ワイヤーも男も、強く長くは必須事項ですわね」
エリザベースの中の人、絶対中年のシナリオライターだわ。(怒)
「のりえが言ってるピコ~~。ごまかし良くないピコ~~」
でも助けてあげたい。お金は出さずに、どうにか。
ちょっと胡坐をかいて、指舐めて、頭でくるくる~~。木魚ぽこぽこ~~考え中~~チーン!
「それ高3の持ってるネタじゃないピコ……」
「思い出した! これ プロジェクティW~挑戦者の成れの果て~ で観たことあるぅぅ――!!」
「サブタイトルが不穏な番組ピコね……」
「お義父さま!」
「は、はい!」
「熱処理ですわ! ワイヤーが強くなる方法!」
「ね、熱……?」
「鋼を変態点以上の温度までなんちゃらかんちゃら~~、クエンチバードニングほにゃららら~~テンパリングでほいほいほい~~とかなんとかやってみるといいですわ!」
「おおっやってみます!!」
「ええ、私もお手伝いしますわ!」
からの作業着着用である。
「プロジェクティWのテーマソングが聞こえてきそうピコよ」
ところで、プロジェクティWを思い出せて、なんで本名思い出せないのか。
「まぁ、のりえがテレビっ子で良かったピコね」
「あら、あなたもお手伝いさんですか?」
作業着で手伝ってる私のところに同じく作業着の、東洋人の娘が話しかけてきました。たどたどしい現地語で。しかしこの辺りに東洋人とはこれいかに。
「え、ええ、頑張りましょうね!」
そして夜になりましたわ。
「ばんざーい! ばんざーい!!」
「ありがとうございます! エリザベース様のおかげだ! 誰にも負けない、最強のワイヤーが、うちで作れるようになったなんて」
「これで逃げた従業員も戻ってくるだろう!」
エルマーもお義父様もこんなに喜んで、私もツナギで工場勤務頑張った甲斐があろうというもの。
ところで、あなたの隣にちょこんと立っている、その東洋人の娘は何ですの?
「そうだ、彼女も紹介させていただけますか!」
あ――これヤな予感キター。
「日本に亡命していた時、恋に落ちた娘です」
「おちづと申します。ぺこり」
あああやっぱり~~~~。
「エルマー様ったら、“でーとしたい”なんて恋文をくださったので……亡命して参りました。きゃっ(照)」
ソレたぶん亡命でもなんでもなくて、ただの旅行、もしくは移住!
「エリザベース様、僕と父からお礼に、心ばかりの品を受け取っていただけますか?」
「うん……?」
ああもう疲れた、早く帰りたい。
「もらえるものはもらいますが、宅配でお願いしますわ……」
「了解です!」
帰ってきました。もう寝る。しくしくしく。ふかふかキングサイズベッドが空しい。やっぱり古今東西、イイ男は売却済みなのよ。
「のりえ~~。こういう時のための歯車だピコ~~。気分転換するピコ~~」
「むにゃむにゃ、起きたら使いますわzzz」
「仕事疲れですぐ寝られるなんて、貫徹ゲーの毎日よりよっぽど健康的だピコ~~すやすやぁ」
ん~~。気持ちのいい朝ですわ! ピコピコの勧めで、今から移動アイテム“歯車”を使ってマリーヤルートの方へ行くことにしたのですが。
「歯車ってどう使えばいいんですの?」
おぼんみたいなサイズのそれを渡されたのですが。
「これを片手に持って、ジャンプするだけでいいピコ」
うーん? こうかな?? 普通にジャンプしてみたけど。
「何も起こりませんわ」
「それじゃぁだめピコ! もっとスピード感を持つピコ!」
「ス、スピード感?」
「某配管工がブロック壊す時のようなジャンプをするピコ!」
……何でそんなことしなきゃいけないの。
「ゲーム制作者はこういった形で彼にリスペクトの意を示すんだピコ」
マリーヤさながらの舌打ちしたいわ。
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