上 下
199 / 247
第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編

第196話 作戦会議

しおりを挟む
「あぁ、サパルフェンって名の魔魚なんだが、その魔魚が主みたいになっている湖があるんだ。湖底ではなにやら海と繋がっているらしくてな、湖自体に海流のように流れがあり、人間が潜るにはかなり苦労する。そんな湖をサパルフェンは海と行き来し、住処にしているようなんだ。そいつの魔石がラフィージアへ行くだけの浮力を発動させるだけの力を持っていてな」

 ヴァドが説明をしてくれるが、皆で顔を見合わせ考え込む。

「なかなか難しそうなやつだな」

 ディノが苦笑しながら言う。イーザンも顎に手をやり考え込む。

「湖底や海にいるのなら水上に出て来ることはあるのか?」

 イーザンはヴァドに視線を向け聞いた。ヴァドは苦笑する。

「それがなぁ……なかなか水上には出て来ないんだよな。だからそいつで魔石を精製するにはかなり大変なんだ」
「水上に出て来ないなら、今までどうやって魔石を精製していたの?」

 魔石を作るには魔石精製師が必要だし、精製するには死んだ直後でないと出来ない。水中なんかで精製は出来ないし、今までどうやって精製していたのか。

「うん、まあ無理矢理?」

 そう言い苦笑するヴァド。

「無理矢理って?」
「俺たちが潜水艇で潜って刺激し、無理矢理水上まで誘き出す」
「おぉ……本当に無理矢理だな」

 ディノも苦笑し、そしてリラーナの目が輝いた。ん?

「潜水艇!? そんなのもあるの!?」
「え? あ、あぁ」
「見たい!!」

 リラーナが勢いよくヴァドに詰め寄り目を輝かせる。ヴァドは「またか」といった顔で苦笑し、国王とラオセンさんは目を丸くしていた。

「アハハ、お嬢さんは魔導具師だったか? 潜水艇に興味があるなら、一緒に乗り込めばいい。三人ほどは乗り込める」
「え! 良いんですか!? やった!!」
「え、ちょ、ちょっとリラーナ! そんな簡単に……」

 どんな代物かも分からないうえに、そんな魔魚を刺激させに行くなんて危険なんじゃ……。そう思っていると国王がハハと笑った。

「少々危険かもしれんが……まあ、今まで失敗したことはないし、なんとかなるだろう。アハハ」
「あぁ、失敗したことはないな」

 国王とヴァドは二人で笑っている……。

 えー、そんな適当な……と、たじろいでいると、「この二人はこんなだから」と、オキが乾いた笑いで私の肩にポンと手を置いた。

 国王とヴァドの気楽な発言に、ラオセンさんは大きく溜め息を吐いていた。な、なんだか大変ですね……と、ラオセンさんにちょっぴり同情。

「では、とりあえず魔石はヴァドルア様が用意されるのですね?」
「あぁ、だから飛行船の修繕は頼んだ」
「分かりました。手配しておきます」

 そう話が落ち着くと、私たちは国王の執務室を後にした。部屋を用意してもらい、ラフィージア行きのために、王城へと泊まることになった。
 飛行船の修繕と並行して、私たちはサパルフェンの魔石を精製しに行くために準備をする。

 王城のなかに用意してもらった部屋はさすがというかなんというか、とても豪華な部屋で、調度品も一級品なのだろうということが容易に想像がつく。
 一人ずつ部屋を用意してもらえたが、広すぎてどうにも落ち着かない。全員が苦笑していた。

 夜、夕食を国王と共にと言われ、緊張しつつも、相変わらずの気さくな感じの国王で、意外にも緊張せず楽しい晩餐となった。

 そしてその後、私の部屋に皆が集まり話し合い。

「とりあえず魔石の精製はルーサに任せるとして、潜水艇に乗り込むやつ、サパルフェンが水上に出て来たときに攻撃するやつ、と担当を決めよう」

 皆が頷き話し合う。

 潜水艇は小さく、身体の大きなヴァドが乗り込むと、他は二人しか乗ることは出来ないとのことだった。操縦はヴァドが行う。という訳で、リラーナは絶対乗り込みたい、と引かないので、一人はリラーナ、もう一人は誰が乗り込むか、という話になった。

「私が乗ろうか」

 イーザンがそう呟き、皆が考える。

「いや、でもイーザンが乗り込むと魔法攻撃出来なくなるよね」
「だよな。水上ということは、俺はあんま役に立たなそうだし、俺が乗ろうか?」

 ディノがそう言葉にする。

「となると、水上で待機はイーザンとオキ……、オキはでも暗器よね。毒だと死んだ瞬間って分かりにくいんじゃ……」
「あ、確かにな……」

 そう話し合いながら、全員がオキを見た。オキは全く話し合いには参加していなく、ボーッとしていたのか、全員の視線が集まると「え?」といった顔をした。

「なに? 俺?」
「オキが潜水艇に乗るので大丈夫?」
「えー、俺が乗るの? めんどくさい……別にヴァドとリラーナだけでも……」

 そうブツブツ言うオキに、ヴァドが苦笑した。

「まあ二人でも問題はないんだが、万が一なにかあったときのためにな」

 ブツブツ言うオキは渋々ながら最後には頷いていた。翌日からその湖に行ってみようということで、この日は解散したのだった。



*************

☆次回、4月8日更新予定です。
しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...