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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第184話 初代聖女の残したもの…
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「じゃあ、エミリーが壊れてしまったら、もう魔傀儡師も魔傀儡もいなくなるってことなのね……」
「そうですね……」
リラーナが残念そうに言ったが、しかし、リラーナもフェリオの気持ちを理解したようだった。
「こんなに精巧なものを作ることが出来る技術が失われるのは残念で仕方ないけど……」
「ハハ……ありがとうございます」
フェリオは複雑そうな表情で笑った。
「うーん、じゃあ、もう帰るか? ここにいても魔傀儡を見られるわけじゃないしな」
「そうね……」
リラーナは項垂れつつも、立ち上がり、私もそれに続いた。
「あ、そうだ。ちょっと待っていてください」
フェリオは立ち上がり、そう言うと奥の部屋へと向かった。
「?」
私たちは顔を見合わせ、フェリオを待った。しばらくするとフェリオが慌てて戻って来る。
「すみません、お待たせしました」
そう言ってフェリオは私たちに向かい何かを差し出した。
「? なんですか?」
「貴女方はアシェルーダの方ですよね?」
「え? は、はい」
獣人でない姿を見ればアシェルーダの人間であることは一目瞭然だろう。私たちがアシェルーダの人間だったならなんだというのか。
「いつかアシェルーダの方とお会いしたらお渡ししたいとずっと思っていた物です」
そう言われ、フェリオの手の上に乗る物に目をやった。そこにはとても古そうな箱。
「箱……ですか?」
「いえ、箱というより、この中身を……」
フェリオは手の上の箱を大事なものを扱うように丁寧にゆっくりと開けた。
開かれた箱のなかには、なにかが横たわっている。
「鳥……?」
それはかなり古い物なのか、色もくすんでいるが、青い鳥のような物だった。フェリオはそっとそれを箱から取り出し、箱はテーブルに置き、その鳥らしき物を手に乗せた。そしてそれを手で包み込むと、しばらく目を瞑る。どうやら魔力を送っている?
フェリオがゆっくりと目を開き、包み込んでいた手を広げると、フェリオの手の中にいた青い鳥はぎこちない動きで動き出し、身体を起こした。
「!! 動いた!!」
全員が驚いた顔となり、フェリオの手の中にいるその鳥を凝視した。鳥はフェリオの手の上で首をきょろきょろと動かしている。
『キュル……ピィ、ピチチ……』
鳴き声が聴こえ、私たちは驚いた。見た目はまさに鳥。ぎこちない動きのおかげで、きっとこれもおそらく魔傀儡なのだろう、ということは分かるが、あまりの精巧さに目を見張る。
そしてさらに驚いたことが……
『ピュイ……ガガッ……ルギ……ニアス……』
「「「「!?」」」」
私たちは驚愕の顔となり、そしてルギニアスを見た。ルギニアスも目を見開いている。
『ルギ、ニアス……ラフィー、ジア……ガガッ』
「な、なんでルギニアスの名前……しかもラフィージア? な、なんなの……一体……」
「アリシャ……アリシャの声……」
ルギニアスが目を見開いたまま茫然と呟いたその言葉に驚愕した。アリシャ!? アリシャって初代聖女の!? 初代聖女の声なの!? そのルギニアスの言葉は小さく、私にしか届いていないようだった。皆、青い鳥に釘付けになっている。そのことに少しホッと息を吐き、しかし、アリシャの声って一体……。
「これは魔傀儡師の師匠から引き継いだものなのですが、初代聖女様に贈ったものらしいのです。聖女様がお亡くなりになったとき、こちらに戻って来たらしく、ずっと代々魔傀儡師が保管していたらしいのですが、いつかアシェルーダの方にお会い出来たら、現代の聖女様へお渡し願いたいとずっと思っていたのです」
「こ、この声って……」
「この魔傀儡は聴いた音を覚える機能があったらしく、初代聖女様のお声じゃないか、と言われています」
「「「「初代聖女!?」」」」
全員が驚きの声を上げ、リラーナとディノとイーザンはチラリとルギニアスを見た。ヴァドとオキも聖女の声、ということよりも、ルギニアスの名が出たことにチラリとルギニアスを見る。
だ、駄目だ……今、ルギニアスをこのままにしておきたくない……。
「ルギニアス」
聞こえるか聞こえないかの小さな声でルギニアスを呼び、腕を掴む。
「小さくなって」
そっと呟いた言葉に、茫然としたままのルギニアスは私のほうを向いた。そして、苦しそうな表情をし、小さな姿となり私の手の上に乗った。
フェリオは驚き、皆が私を見詰めるなか、小さくなったルギニアスを隠すように両手でぎゅっと抱き締めた……。
*******
※更新についてのお知らせ
いつもお読みくださる皆様ありがとうございます!
現在平日更新をしておりますが、リアルが少しバタバタとしておりますので、4月中旬くらいまでは不定期になるかもしれません。
なるべく頑張って更新したいとは思っておりますが、執筆出来ず急遽不定期になるかもしれませんのでご了承ください。
落ち着き次第更新ペースも戻そうと思っていますのでよろしくお願いします。
「そうですね……」
リラーナが残念そうに言ったが、しかし、リラーナもフェリオの気持ちを理解したようだった。
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フェリオは複雑そうな表情で笑った。
「うーん、じゃあ、もう帰るか? ここにいても魔傀儡を見られるわけじゃないしな」
「そうね……」
リラーナは項垂れつつも、立ち上がり、私もそれに続いた。
「あ、そうだ。ちょっと待っていてください」
フェリオは立ち上がり、そう言うと奥の部屋へと向かった。
「?」
私たちは顔を見合わせ、フェリオを待った。しばらくするとフェリオが慌てて戻って来る。
「すみません、お待たせしました」
そう言ってフェリオは私たちに向かい何かを差し出した。
「? なんですか?」
「貴女方はアシェルーダの方ですよね?」
「え? は、はい」
獣人でない姿を見ればアシェルーダの人間であることは一目瞭然だろう。私たちがアシェルーダの人間だったならなんだというのか。
「いつかアシェルーダの方とお会いしたらお渡ししたいとずっと思っていた物です」
そう言われ、フェリオの手の上に乗る物に目をやった。そこにはとても古そうな箱。
「箱……ですか?」
「いえ、箱というより、この中身を……」
フェリオは手の上の箱を大事なものを扱うように丁寧にゆっくりと開けた。
開かれた箱のなかには、なにかが横たわっている。
「鳥……?」
それはかなり古い物なのか、色もくすんでいるが、青い鳥のような物だった。フェリオはそっとそれを箱から取り出し、箱はテーブルに置き、その鳥らしき物を手に乗せた。そしてそれを手で包み込むと、しばらく目を瞑る。どうやら魔力を送っている?
フェリオがゆっくりと目を開き、包み込んでいた手を広げると、フェリオの手の中にいた青い鳥はぎこちない動きで動き出し、身体を起こした。
「!! 動いた!!」
全員が驚いた顔となり、フェリオの手の中にいるその鳥を凝視した。鳥はフェリオの手の上で首をきょろきょろと動かしている。
『キュル……ピィ、ピチチ……』
鳴き声が聴こえ、私たちは驚いた。見た目はまさに鳥。ぎこちない動きのおかげで、きっとこれもおそらく魔傀儡なのだろう、ということは分かるが、あまりの精巧さに目を見張る。
そしてさらに驚いたことが……
『ピュイ……ガガッ……ルギ……ニアス……』
「「「「!?」」」」
私たちは驚愕の顔となり、そしてルギニアスを見た。ルギニアスも目を見開いている。
『ルギ、ニアス……ラフィー、ジア……ガガッ』
「な、なんでルギニアスの名前……しかもラフィージア? な、なんなの……一体……」
「アリシャ……アリシャの声……」
ルギニアスが目を見開いたまま茫然と呟いたその言葉に驚愕した。アリシャ!? アリシャって初代聖女の!? 初代聖女の声なの!? そのルギニアスの言葉は小さく、私にしか届いていないようだった。皆、青い鳥に釘付けになっている。そのことに少しホッと息を吐き、しかし、アリシャの声って一体……。
「これは魔傀儡師の師匠から引き継いだものなのですが、初代聖女様に贈ったものらしいのです。聖女様がお亡くなりになったとき、こちらに戻って来たらしく、ずっと代々魔傀儡師が保管していたらしいのですが、いつかアシェルーダの方にお会い出来たら、現代の聖女様へお渡し願いたいとずっと思っていたのです」
「こ、この声って……」
「この魔傀儡は聴いた音を覚える機能があったらしく、初代聖女様のお声じゃないか、と言われています」
「「「「初代聖女!?」」」」
全員が驚きの声を上げ、リラーナとディノとイーザンはチラリとルギニアスを見た。ヴァドとオキも聖女の声、ということよりも、ルギニアスの名が出たことにチラリとルギニアスを見る。
だ、駄目だ……今、ルギニアスをこのままにしておきたくない……。
「ルギニアス」
聞こえるか聞こえないかの小さな声でルギニアスを呼び、腕を掴む。
「小さくなって」
そっと呟いた言葉に、茫然としたままのルギニアスは私のほうを向いた。そして、苦しそうな表情をし、小さな姿となり私の手の上に乗った。
フェリオは驚き、皆が私を見詰めるなか、小さくなったルギニアスを隠すように両手でぎゅっと抱き締めた……。
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