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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第159話 馬車のない国
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結局ディノが散々ヴァドにからかわれたまま、私たちは街を歩いた。大通りを歩いていると、街の雰囲気自体はアシェルーダとさほど変わらないのだが、お店の雰囲気はよく見るとなんとなく違う。
魔導具屋には見知らぬ魔導具が多く並び、カフェなども店内で食べるようなところがあまりないようだ。外にテーブルが並び、店のなかよりも外で皆飲食している。
街自体もどうやら山が近いようで、高低差のある坂が多く見受けられる。全ての道幅が広いため、裏通りといった印象もない。
そしてなにより違ったのは……
「馬車が通らないわね」
リラーナが呟いた言葉にハッとする。そうなのよね、先程から散策していても一度も馬車を見掛けない。馬車が通れそうなほどの道幅はあるのに、全く通らない。
「ん? あー、ガルヴィオには馬車はないぞ?」
「え!! 馬車がないの!? じゃあどうやって長距離移動するの!?」
リラーナがガバッとヴァドに振り向き聞いた。
「んー、小型の飛行艇だな」
「飛行艇……エルシュで空輸に使っていたあれ?」
「あれよりは小さいけどな。あれは貨物運搬用だからデカい」
「「へぇぇ」」
リラーナが構造を見たい、とヴァドに詰め寄っているが、ヴァドは笑いながら躱している。
「ということは王都へ行くのにも飛行艇で行くの?」
「そうだな」
「!!」
オキとルギニアス以外の全員がウキウキ顔になったことは言うまでもない。
「どこから乗るの!? 乗合馬車みたいな感じなの!?」
リラーナが矢継ぎ早に色んなことを聞き、ヴァドは苦笑した。
「おいおい、とりあえず今は飯にしようぜ。腹減った」
そう言うとヴァドはスタスタと歩いて行く。リラーナは「待ってよ!」とヴァドに詰め寄り、歩きながらも色々質問をしている。そんな姿に私たちは笑うのだった。
「それにしてもオキは全然驚いてないわね。ガルヴィオに来たことがあるの?」
オキは相変わらずの飄々とした態度で、辺りをキョロキョロと見回してはいるが、私たちほどは興奮している様子もない。
「ん? あー、そこは秘密ってことで。アハハ」
「なによ、ケチね」
「ハハ、そんな俺のこと知りたい?」
ぐいっと顔を近付けたオキに後退るが、おもむろにルギニアスがオキの頭をワシッと掴み睨んだ。そしてグググッと頭を押さえつけたせいで、オキの頭が下へと下がる。
「うおぃ! 離せこら! 冗談も通じないのかよ!」
グギギギとオキが必死に頭を上げようとしているのに、ルギニアスが平然な顔で押さえつけている。
「ブフッ。ルギニアス、離してあげてよ。オキには全く興味ないし」
「酷い」
正直なところは、オキがどんな人物なのかは知りたいところだけど、別に無理矢理聞くものでもない。職業柄知られたくないのだろうしね。
ルギニアスはパッとオキの頭から手を離すと、バランスを崩したオキがよろけてこけそうになりぷんすかと怒っていた。その姿はおそらく素なんだろうな、と思うと、少しだけ嬉しかった。少しだけね。
フフ、と笑いながらヴァドがずんずん歩くのに付いて行くと、ヴァドは一軒の店へと入った。その店も店内にはあまりテーブルなどはなく、店先にテーブルや椅子が並ぶ。ヴァドは躊躇することなく、店内を進むとカウンターでなにかを注文していた。
漂う良い匂いで、飲食店なのは分かるのだが、なんの料理の店なんだろう、ときょろっと周りを見渡すと、客だろう獣人たちが食べているものは巨大な肉の塊だった。
「な、なんか凄いの食べてる……」
「お、おぉ……」
全員それに釘付けとなるが、半獣姿の獣人も獣姿の獣人もそれを豪快に齧り付いて食べている。ヴァドもいつも通り、といった様子で注文し終え戻って来る。
「適当に座っていたら持って来てくれるぞ」
そう促され、空いている席に座る。しかし全員そわそわ。
「ね、ねえ、ヴァド。ここって肉料理のお店?」
「ん? あぁ、肉以外もあるけどな、まあメインは肉か」
メニューを思い出しているのか、斜め上の方向を見詰めながら言った。
しばらくすると店員が料理を運んで来るのだが、その量というか大きさというか……唖然。
とんでもなく巨大な肉が人数分……。
「え、これ、無理でしょ!!」
リラーナが思わず叫ぶ。よく食べるディノですら苦笑しているし、イーザンは若干蒼褪めているような。オキは笑ってるし、ルギニアスは呆れたような顔……。
「ん? 無理か? これくらい普通だろ。まあ、残ったら食うから心配すんな」
そう言ってワハハと笑うヴァドに全員苦笑。そのあとサラダらしきものが運ばれて来て、リラーナと「良かった!」と顔を見合わせてから、再び顔が引き攣った。サラダもまたとんでもない量だった……。
肉は切り分けてもらえて一安心でした……。
魔導具屋には見知らぬ魔導具が多く並び、カフェなども店内で食べるようなところがあまりないようだ。外にテーブルが並び、店のなかよりも外で皆飲食している。
街自体もどうやら山が近いようで、高低差のある坂が多く見受けられる。全ての道幅が広いため、裏通りといった印象もない。
そしてなにより違ったのは……
「馬車が通らないわね」
リラーナが呟いた言葉にハッとする。そうなのよね、先程から散策していても一度も馬車を見掛けない。馬車が通れそうなほどの道幅はあるのに、全く通らない。
「ん? あー、ガルヴィオには馬車はないぞ?」
「え!! 馬車がないの!? じゃあどうやって長距離移動するの!?」
リラーナがガバッとヴァドに振り向き聞いた。
「んー、小型の飛行艇だな」
「飛行艇……エルシュで空輸に使っていたあれ?」
「あれよりは小さいけどな。あれは貨物運搬用だからデカい」
「「へぇぇ」」
リラーナが構造を見たい、とヴァドに詰め寄っているが、ヴァドは笑いながら躱している。
「ということは王都へ行くのにも飛行艇で行くの?」
「そうだな」
「!!」
オキとルギニアス以外の全員がウキウキ顔になったことは言うまでもない。
「どこから乗るの!? 乗合馬車みたいな感じなの!?」
リラーナが矢継ぎ早に色んなことを聞き、ヴァドは苦笑した。
「おいおい、とりあえず今は飯にしようぜ。腹減った」
そう言うとヴァドはスタスタと歩いて行く。リラーナは「待ってよ!」とヴァドに詰め寄り、歩きながらも色々質問をしている。そんな姿に私たちは笑うのだった。
「それにしてもオキは全然驚いてないわね。ガルヴィオに来たことがあるの?」
オキは相変わらずの飄々とした態度で、辺りをキョロキョロと見回してはいるが、私たちほどは興奮している様子もない。
「ん? あー、そこは秘密ってことで。アハハ」
「なによ、ケチね」
「ハハ、そんな俺のこと知りたい?」
ぐいっと顔を近付けたオキに後退るが、おもむろにルギニアスがオキの頭をワシッと掴み睨んだ。そしてグググッと頭を押さえつけたせいで、オキの頭が下へと下がる。
「うおぃ! 離せこら! 冗談も通じないのかよ!」
グギギギとオキが必死に頭を上げようとしているのに、ルギニアスが平然な顔で押さえつけている。
「ブフッ。ルギニアス、離してあげてよ。オキには全く興味ないし」
「酷い」
正直なところは、オキがどんな人物なのかは知りたいところだけど、別に無理矢理聞くものでもない。職業柄知られたくないのだろうしね。
ルギニアスはパッとオキの頭から手を離すと、バランスを崩したオキがよろけてこけそうになりぷんすかと怒っていた。その姿はおそらく素なんだろうな、と思うと、少しだけ嬉しかった。少しだけね。
フフ、と笑いながらヴァドがずんずん歩くのに付いて行くと、ヴァドは一軒の店へと入った。その店も店内にはあまりテーブルなどはなく、店先にテーブルや椅子が並ぶ。ヴァドは躊躇することなく、店内を進むとカウンターでなにかを注文していた。
漂う良い匂いで、飲食店なのは分かるのだが、なんの料理の店なんだろう、ときょろっと周りを見渡すと、客だろう獣人たちが食べているものは巨大な肉の塊だった。
「な、なんか凄いの食べてる……」
「お、おぉ……」
全員それに釘付けとなるが、半獣姿の獣人も獣姿の獣人もそれを豪快に齧り付いて食べている。ヴァドもいつも通り、といった様子で注文し終え戻って来る。
「適当に座っていたら持って来てくれるぞ」
そう促され、空いている席に座る。しかし全員そわそわ。
「ね、ねえ、ヴァド。ここって肉料理のお店?」
「ん? あぁ、肉以外もあるけどな、まあメインは肉か」
メニューを思い出しているのか、斜め上の方向を見詰めながら言った。
しばらくすると店員が料理を運んで来るのだが、その量というか大きさというか……唖然。
とんでもなく巨大な肉が人数分……。
「え、これ、無理でしょ!!」
リラーナが思わず叫ぶ。よく食べるディノですら苦笑しているし、イーザンは若干蒼褪めているような。オキは笑ってるし、ルギニアスは呆れたような顔……。
「ん? 無理か? これくらい普通だろ。まあ、残ったら食うから心配すんな」
そう言ってワハハと笑うヴァドに全員苦笑。そのあとサラダらしきものが運ばれて来て、リラーナと「良かった!」と顔を見合わせてから、再び顔が引き攣った。サラダもまたとんでもない量だった……。
肉は切り分けてもらえて一安心でした……。
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