152 / 247
第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第149話 船内
しおりを挟む
ヴァドはニッと笑うと再び話し合いをしに船内へと戻った。そしてしばらくすると再び現れ、二日後に出航することになったと言った。
私たちはそれに合わせ、アランとララさんに別れを告げに行き、最後の夜には再びララさんのお店でアランと共に夕食を共にした。新鮮な魚料理を堪能し、アランとは魔石について語り合い、ガルヴィオに渡ることを話すと驚いた顔をされたが、頑張れと応援してくれた。
そしていよいよ出航の日を迎える!
私たちは宿から荷物を引き上げ、港へと向かう。港にはすでに船員たちが出航のための準備か、船の上で忙しそうに動き回っていた。
「よう、遅いぞ! 早く乗れ!」
ヴァドが船の上から私たちを見付けると手を振った。私たちは桟橋を渡り船へと乗り込む。オキはすでに船へ乗り込んでいた。
「遅いぞー」
ニッと笑ったオキは船の縁に座り、こちらに向かいひらひらと手を振っていた。
「オキ……いつの間に……」
ディノは呆れたような顔になり、リラーナは嬉しそうにキョロキョロしている。
「とりあえずお前らの部屋に案内するからそこに荷物を置いておけ」
「船内に部屋があるの?」
「ハハ、まあ狭いがな」
ヴァドは「付いて来い」と言いながら歩き出す。甲板では多くの獣人が作業に忙しそうだ。甲板から見上げる帆柱は太く高い。見上げると船員たちが帆を広げようとしているのか、上部に登っていた。
船尾へ向かい、ヴァドは一つの扉を叩き、なかへと声を掛けた。
「船長、ガルヴィオに行きたいって言ってたアシェルーダの人間だ」
声を掛けた先には茶色の髪色に同じ色の丸い耳、金色の瞳をしたヴァドよりも年上そうな獣人がいた。
「おー、そいつらか、連れて行くならちゃんと面倒みろよー」
「ハハ、分かってるって」
厳しい人って聞いていた気がするんだけど、気さくそうな人だな。挨拶を交わし、そのままヴァドに連れられ、船長室の横にある階段を降りて行くと、なにやら上から怒声が聞こえた……。
階段を降りると船内が広がる。さらにもう一階分下があるようだが、船員の部屋は今いる階で、さらに下は荷室らしい。そしてさらにその下には動力部が……リラーナがうずうずしている。
甲板で忙しくなく走り回っている船員たちの足音が天井で響き渡っている。思わず上を見上げてしまう。
「ハハ、うるさいかもしれんが、船はこんなもんだからな? 慣れろよー?」
「うん、びっくりしただけだから大丈夫。すぐ天井に人の気配を感じるって面白いね」
そうやって辺りを眺めながら歩くうちに、ヴァドが振り向き促した。
「ここの部屋を使ってくれ。女だからと分ける部屋はない。すまんな」
「ううん、私たちが無理を言ったんだから、それは分かってる」
船員は男ばかりだった。ならば女性用に部屋などないだろうことは容易に想像がつく。部屋を別で与えてくれるだけでも有難い話だ。
ディノたちは向かいの部屋のようだ。
「ルギニアスはどうしたんだ?」
「あ」
ヴァドがキョロッと見回し、ルギニアスの姿が見えないと疑問の目を向けた。
「ルギニアスはここ……」
鞄のなかからルギニアスを引っ張り出すと、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。船のなかでは傍にいやすいように小さい姿のままでいるらしい。
「うおっ、こ、これがルギニアスか!? はー、面白いやつだな」
身体を屈ませ、顔を近付けたヴァドは、ルギニアスをじーっと見詰めた。ルギニアスは明らかに嫌そうな顔をし、小さいまま片手を持ち上げ、ヴァドに掌を向けた。掌に魔力を込めたのが分かり、ヴァドが慌てて顔をひっこめる。
「お、おい、こんなところで魔法を放つなよ!?」
「フン」
ルギニアスは魔力をおさめると私の肩に乗った。
「あー、とりあえずじゃあ荷物を置いたら他を説明するから付いて来い」
苦笑しながらヴァドは気を取り直す。私たちは言われるがまま部屋へと荷物を運び入れる。部屋のなかは簡素な二段ベッドが両脇に並び、人ひとりが通る程度の通路があるだけで、部屋はベッドだけでいっぱいだった。部屋の一番奥には小さな丸い窓があり外が見える。
入り口付近の少しばかりある場所に荷物を置き、再び外へと戻った。
「風呂はない、浄化魔法を使えるやつがいるから、全身浄化してもらえ。トイレはこの階の通路前後に二ヶ所だ。階段は船首、船尾、両方から降りられる階段があるが、食堂は船首側にある。船員は交代制で作業をしているから、いつでも食事は出来るようになっている。好きなときに食べに行くといい」
歩きながら食堂も見せてくれ、説明をしてくれる。それなりに広さのある食堂は扉と反対側の奥に厨房らしきものがあったが、街で見かけるような店とは違い、厨房も丸見えだ。その場で作っているのが見える。料理をカウンターに並べ、各々自分で取って行くようだ。
「この階の下は荷室だから降りるなよ?」
リラーナが動力部を見たくてうずうずしているが、さすがにそれは見せてもらえなさそうだ。しかし以前外から船を眺めたときに感じた魔石はどうやらその動力部にあるようで、大量の魔石の気配が船底から感じる。どういった造りになっているのか私も気になってしまったのだった。
私たちはそれに合わせ、アランとララさんに別れを告げに行き、最後の夜には再びララさんのお店でアランと共に夕食を共にした。新鮮な魚料理を堪能し、アランとは魔石について語り合い、ガルヴィオに渡ることを話すと驚いた顔をされたが、頑張れと応援してくれた。
そしていよいよ出航の日を迎える!
私たちは宿から荷物を引き上げ、港へと向かう。港にはすでに船員たちが出航のための準備か、船の上で忙しそうに動き回っていた。
「よう、遅いぞ! 早く乗れ!」
ヴァドが船の上から私たちを見付けると手を振った。私たちは桟橋を渡り船へと乗り込む。オキはすでに船へ乗り込んでいた。
「遅いぞー」
ニッと笑ったオキは船の縁に座り、こちらに向かいひらひらと手を振っていた。
「オキ……いつの間に……」
ディノは呆れたような顔になり、リラーナは嬉しそうにキョロキョロしている。
「とりあえずお前らの部屋に案内するからそこに荷物を置いておけ」
「船内に部屋があるの?」
「ハハ、まあ狭いがな」
ヴァドは「付いて来い」と言いながら歩き出す。甲板では多くの獣人が作業に忙しそうだ。甲板から見上げる帆柱は太く高い。見上げると船員たちが帆を広げようとしているのか、上部に登っていた。
船尾へ向かい、ヴァドは一つの扉を叩き、なかへと声を掛けた。
「船長、ガルヴィオに行きたいって言ってたアシェルーダの人間だ」
声を掛けた先には茶色の髪色に同じ色の丸い耳、金色の瞳をしたヴァドよりも年上そうな獣人がいた。
「おー、そいつらか、連れて行くならちゃんと面倒みろよー」
「ハハ、分かってるって」
厳しい人って聞いていた気がするんだけど、気さくそうな人だな。挨拶を交わし、そのままヴァドに連れられ、船長室の横にある階段を降りて行くと、なにやら上から怒声が聞こえた……。
階段を降りると船内が広がる。さらにもう一階分下があるようだが、船員の部屋は今いる階で、さらに下は荷室らしい。そしてさらにその下には動力部が……リラーナがうずうずしている。
甲板で忙しくなく走り回っている船員たちの足音が天井で響き渡っている。思わず上を見上げてしまう。
「ハハ、うるさいかもしれんが、船はこんなもんだからな? 慣れろよー?」
「うん、びっくりしただけだから大丈夫。すぐ天井に人の気配を感じるって面白いね」
そうやって辺りを眺めながら歩くうちに、ヴァドが振り向き促した。
「ここの部屋を使ってくれ。女だからと分ける部屋はない。すまんな」
「ううん、私たちが無理を言ったんだから、それは分かってる」
船員は男ばかりだった。ならば女性用に部屋などないだろうことは容易に想像がつく。部屋を別で与えてくれるだけでも有難い話だ。
ディノたちは向かいの部屋のようだ。
「ルギニアスはどうしたんだ?」
「あ」
ヴァドがキョロッと見回し、ルギニアスの姿が見えないと疑問の目を向けた。
「ルギニアスはここ……」
鞄のなかからルギニアスを引っ張り出すと、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。船のなかでは傍にいやすいように小さい姿のままでいるらしい。
「うおっ、こ、これがルギニアスか!? はー、面白いやつだな」
身体を屈ませ、顔を近付けたヴァドは、ルギニアスをじーっと見詰めた。ルギニアスは明らかに嫌そうな顔をし、小さいまま片手を持ち上げ、ヴァドに掌を向けた。掌に魔力を込めたのが分かり、ヴァドが慌てて顔をひっこめる。
「お、おい、こんなところで魔法を放つなよ!?」
「フン」
ルギニアスは魔力をおさめると私の肩に乗った。
「あー、とりあえずじゃあ荷物を置いたら他を説明するから付いて来い」
苦笑しながらヴァドは気を取り直す。私たちは言われるがまま部屋へと荷物を運び入れる。部屋のなかは簡素な二段ベッドが両脇に並び、人ひとりが通る程度の通路があるだけで、部屋はベッドだけでいっぱいだった。部屋の一番奥には小さな丸い窓があり外が見える。
入り口付近の少しばかりある場所に荷物を置き、再び外へと戻った。
「風呂はない、浄化魔法を使えるやつがいるから、全身浄化してもらえ。トイレはこの階の通路前後に二ヶ所だ。階段は船首、船尾、両方から降りられる階段があるが、食堂は船首側にある。船員は交代制で作業をしているから、いつでも食事は出来るようになっている。好きなときに食べに行くといい」
歩きながら食堂も見せてくれ、説明をしてくれる。それなりに広さのある食堂は扉と反対側の奥に厨房らしきものがあったが、街で見かけるような店とは違い、厨房も丸見えだ。その場で作っているのが見える。料理をカウンターに並べ、各々自分で取って行くようだ。
「この階の下は荷室だから降りるなよ?」
リラーナが動力部を見たくてうずうずしているが、さすがにそれは見せてもらえなさそうだ。しかし以前外から船を眺めたときに感じた魔石はどうやらその動力部にあるようで、大量の魔石の気配が船底から感じる。どういった造りになっているのか私も気になってしまったのだった。
1
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる