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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第138話 アランの魔石屋
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アランから聞いていた住所を元に店を探す。エルシュは街の中心に大きな広場があり、そこから放射状に道が続いていた。広場の周りにあるのは王都で言う大通りの店と同じようなもので一等地に並ぶ有名店が多いらしい。そしてそれらの放射状に続く道を入り込むと、ララさんの店のように、それぞれ違う商店街が並んでいたりする。
ララさんの店は飲食店街。飲み屋や食事処が多く並ぶ。それ以外には武器や防具の店ばかりが並ぶ通り、薬や食品の店が並ぶ通りに、本や日用品などが売られている店の通りだったりと様々だ。
アランの店は魔石や魔導具の店が並ぶ通りだった。多くの魔導具屋が並び、リラーナがうずうずとしていた。
「アハハ、リラーナ、先に魔導具屋を見る?」
「え、良いの!?」
「うん、アランの店はそのあとでも良いし」
「じゃあ! ……いや、でもやっぱり先にアランのお店にしよう……」
勢い良く言ったかと思えば、急に真面目な顔になったリラーナ。
「え? なんで?」
「魔導具を見始めると終わらないからだろう」
リラーナが答えるよりも早くイーザンが言った。
「ブッ。確かにリラーナが魔導具を見始めたら止まらなそうだもんな!」
イーザンの言葉にディノは爆笑。リラーナは少しムッとしたが、開き直るように言い切る。
「だってこんな多くの魔導具屋が並んでいたら全部の店を見たくなるじゃない!!」
思わず私も噴き出してしまった。
「プッ。アハハ、確かにそれじゃあいつまでもアランの店には行けないかもね」
「もう! ルーサまで笑わないでよ!」
「アハハ、ごめんごめん。フフッ。じゃ、じゃあとりあえずアランの店に行っても良い?」
「うん」
なんだか納得いかないわ、といった顔のリラーナだが、皆笑いながらもリラーナがどれだけ魔導具好きかを知っているため、リラーナを宥めながらアランの店へと向かったのだった。
「ここだな」
ディノが住所を確認し、ひとつの店の前で止まった。
それほど大きくはないがなんだか可愛らしい雰囲気の店。三角屋根に大きな窓、扉には看板が掲げられ、店先を照らすためランプが灯されている。
扉を開けるとカランコロンと扉に付いたベルが鳴り、店内に足を踏み入れると薄暗いがランプが多く灯され、優し気な灯りとなんだか良い香りがし落ち着く。
「いらっしゃい……って、ルーサか! 来てくれたんだね」
店の奥からアランが出て来た。私たちを目にした途端、店主の顔から一気に緩み、友達として出迎えてくれているのが分かった。
「アランのお店、可愛いわね」
「そう? 色々頑張ったからそう言ってもらえると嬉しいよ」
ダラスさんのお店よりも店自体は小さい。しかしダラスさんの店よりもなんだか可愛く店内が飾られている。
ダラスさんの店は基本的に魔石が並んでいるだけで、特に店内に飾りを施したりとかはなかった。まあダラスさんがそんなことをしていたらちょっと引くかも……? と、苦笑した。
アランの店は魔石が様々なところに展示されている。メインであろう正面のカウンター部分にも魔石が並んでいるのはダラスさんの店とも同じなのだが、それ以外にも壁に棚がお洒落に飾られ、そのひとつひとつの棚にひとつふたつの魔石が飾られている。その棚にそれぞれ照明のランプが設置され、魔石の輝きがより一層際立っていた。
魔石を照らすランプの光が、魔石を通し輝きが反射し、店全体がキラキラと煌めいているようだ。
「父さんの店とは全く違うわねぇ。綺麗!」
リラーナも感心しながらきょろきょろと周りを見回し興奮している。
「ダラスさんのお店はやっぱりダラスさんの魔石があるから余計なことをしなくても、価値あるものとして認められているしね。僕の店はまだまだこれからだ。いかにお客さんに印象を残すか、が大事かな、と思って」
「なるほどねぇ、店を出すにもただ出すだけじゃなく色々考えないと駄目なのね……」
リラーナが真面目な顔で言った。
確かにそうよね。最初はやはり無名な訳だし、いかに固定客を付けるかが重要になってくるものね。だから最初の印象が大事な訳か。リラーナとも最終お店を出そうという話をしていることだし、私たちにとっても良い勉強になるわね。
「最初は師匠の店の常連さんが来てくれているから、そこから新規のお客さんに繋げられるように頑張らないとなんだ」
「そういえばアランのお師匠さんも近くに店があるの?」
「うん、ここからもう少し奥に行ったところにあるよ。あとで覗いてみて。師匠の魔石も凄いから」
そう言ってにこりと笑った。
アランの精製した魔石を眺めつつ、色々話しをしていると思い出したかのようにアランが言った。
「そういえばルーサが精製した魔石、もし売ったりするのなら僕に買い取らせてね?」
ララさんの店は飲食店街。飲み屋や食事処が多く並ぶ。それ以外には武器や防具の店ばかりが並ぶ通り、薬や食品の店が並ぶ通りに、本や日用品などが売られている店の通りだったりと様々だ。
アランの店は魔石や魔導具の店が並ぶ通りだった。多くの魔導具屋が並び、リラーナがうずうずとしていた。
「アハハ、リラーナ、先に魔導具屋を見る?」
「え、良いの!?」
「うん、アランの店はそのあとでも良いし」
「じゃあ! ……いや、でもやっぱり先にアランのお店にしよう……」
勢い良く言ったかと思えば、急に真面目な顔になったリラーナ。
「え? なんで?」
「魔導具を見始めると終わらないからだろう」
リラーナが答えるよりも早くイーザンが言った。
「ブッ。確かにリラーナが魔導具を見始めたら止まらなそうだもんな!」
イーザンの言葉にディノは爆笑。リラーナは少しムッとしたが、開き直るように言い切る。
「だってこんな多くの魔導具屋が並んでいたら全部の店を見たくなるじゃない!!」
思わず私も噴き出してしまった。
「プッ。アハハ、確かにそれじゃあいつまでもアランの店には行けないかもね」
「もう! ルーサまで笑わないでよ!」
「アハハ、ごめんごめん。フフッ。じゃ、じゃあとりあえずアランの店に行っても良い?」
「うん」
なんだか納得いかないわ、といった顔のリラーナだが、皆笑いながらもリラーナがどれだけ魔導具好きかを知っているため、リラーナを宥めながらアランの店へと向かったのだった。
「ここだな」
ディノが住所を確認し、ひとつの店の前で止まった。
それほど大きくはないがなんだか可愛らしい雰囲気の店。三角屋根に大きな窓、扉には看板が掲げられ、店先を照らすためランプが灯されている。
扉を開けるとカランコロンと扉に付いたベルが鳴り、店内に足を踏み入れると薄暗いがランプが多く灯され、優し気な灯りとなんだか良い香りがし落ち着く。
「いらっしゃい……って、ルーサか! 来てくれたんだね」
店の奥からアランが出て来た。私たちを目にした途端、店主の顔から一気に緩み、友達として出迎えてくれているのが分かった。
「アランのお店、可愛いわね」
「そう? 色々頑張ったからそう言ってもらえると嬉しいよ」
ダラスさんのお店よりも店自体は小さい。しかしダラスさんの店よりもなんだか可愛く店内が飾られている。
ダラスさんの店は基本的に魔石が並んでいるだけで、特に店内に飾りを施したりとかはなかった。まあダラスさんがそんなことをしていたらちょっと引くかも……? と、苦笑した。
アランの店は魔石が様々なところに展示されている。メインであろう正面のカウンター部分にも魔石が並んでいるのはダラスさんの店とも同じなのだが、それ以外にも壁に棚がお洒落に飾られ、そのひとつひとつの棚にひとつふたつの魔石が飾られている。その棚にそれぞれ照明のランプが設置され、魔石の輝きがより一層際立っていた。
魔石を照らすランプの光が、魔石を通し輝きが反射し、店全体がキラキラと煌めいているようだ。
「父さんの店とは全く違うわねぇ。綺麗!」
リラーナも感心しながらきょろきょろと周りを見回し興奮している。
「ダラスさんのお店はやっぱりダラスさんの魔石があるから余計なことをしなくても、価値あるものとして認められているしね。僕の店はまだまだこれからだ。いかにお客さんに印象を残すか、が大事かな、と思って」
「なるほどねぇ、店を出すにもただ出すだけじゃなく色々考えないと駄目なのね……」
リラーナが真面目な顔で言った。
確かにそうよね。最初はやはり無名な訳だし、いかに固定客を付けるかが重要になってくるものね。だから最初の印象が大事な訳か。リラーナとも最終お店を出そうという話をしていることだし、私たちにとっても良い勉強になるわね。
「最初は師匠の店の常連さんが来てくれているから、そこから新規のお客さんに繋げられるように頑張らないとなんだ」
「そういえばアランのお師匠さんも近くに店があるの?」
「うん、ここからもう少し奥に行ったところにあるよ。あとで覗いてみて。師匠の魔石も凄いから」
そう言ってにこりと笑った。
アランの精製した魔石を眺めつつ、色々話しをしていると思い出したかのようにアランが言った。
「そういえばルーサが精製した魔石、もし売ったりするのなら僕に買い取らせてね?」
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