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第3章《試験》編

第107話 特殊魔石提出

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 翌朝、起きてからはリラーナと共にレインさんの元へと買い物へ出かけたり、ウィスさんやロンさんに今後の話を伝えに行ったり、としていると、皆驚いた顔をしたが、それでも私たちの成長を喜んでくれ応援してくれた。まるで皆が家族のような温かさ。それが嬉しかった。

 昼食をリラーナと共に食べた後、リラーナとは別れ、私は一人城へと向かった。
 魔石の提出のためだ。

 ルギニアスが見付かるたびに、皆が興味津々で聞いてくるため、城へ向かうときは鞄のなかに入っていてもらうことにした。毎回説明するのが大変なのよね……ごめん、ルギニアス。

 若干ふてくされてはいたが、毎回注目を浴びるのが自分でも嫌だったのか、大人しく鞄のなかへと隠れてくれた。

 門兵に国家魔石精製師試験の魔石を提出しに来たと伝え、受験票を見せるとすんなりと通してもらえた。
 会場はもう覚えている。前回と違いすんなり向かうことが出来た。

 試験会場には何人かの提出に来た人たちと会うことが出来たが、ライとリース、メルとアランの姿はなかった。

 会場には以前試験官をしていた人だろうか、ローブを着た人が一番前に立っており、こちらに気付くと視線を向けた。

「受験生だね? ここに受験番号と名前の書かれた箱がある。自分の番号の箱に入れて提出しなさい」
「はい」

 言われるがまま受験番号を探す。

『受験番号5 受験者名 ルーサ』

 あった。その箱に持って来た魔石を鞄のなかから取り出し入れる。ドラゴンの魔石はかなりの大きさのため、それだけでも箱いっぱいになりそうなほどだった。

「なんだこの魔石! スゲーな!」

 背後から他の受験者に驚きの声を投げかけられた。その場にいた他の受験者数名と試験官もわらわらと集まってくる。

 皆が口々に「なんだこれは」といった、驚愕の目を向けていた。自慢出来るほどメンタルが強くもなく、居た堪れない気分になり、慌てて試験官に提出する。

「お願いします!」

「あ、あぁ」

 試験官は目を見開いたまま箱を受け取り、明日の予定が書かれた紙を手渡した。それを受け取りそそくさと会場を後にする。

 結局ライたちには会えなかったわね。まあ提出するだけだものね。時間が合わないと会えないか。会場を出た後、きょろきょろと周りを見回してみても皆の姿はなかった。
 店へ戻るまでの道中、もらった用紙を確認する。

『〇月〇日〇時から合否発表。合格者は発表後、証明タグ発行を行うためその場に待機。注、合格後すぐに店を持つ者は店名、住所が登録に必要となる』

 明日昼前に合否発表か……。それにしても店の登録……すぐに店を持つ人もいるのか、凄いわね。まあでも王都に店を持つならともかく、地方から来ている人からしたら、登録のためだけに何度も王都に来るのは手間だものね。メルとアランも今回の試験に王都へやって来るだけでも大変だと言っていた。
 そういう意味でも王都で修行させてもらえた私は本当に運が良かったんだろうな。お父様のおかげか……。

 旅に出るようになったらお父様とお母様の行方ももっと情報が集まるかしら……。屋敷にいた皆も探せたら良いのにな……。

 そんなことをぼんやり考えながら店へと戻り、店番をしつつ何年もお世話になった店の掃除や魔石磨きを行った。

 店に並ぶダラスさんの魔石、幼い頃からずっとこの魔石を眺めるのが好きだった。これをまさか自分で精製出来るようになるなんて、あのときは思ってもいなかった。
 柔らかい布で優しく磨いてやると、魔石はさらに輝いて見えた。店のランプに照らされキラキラと煌めく魔石たち。

 今はもうただ純粋に『綺麗だ』と思うだけではなくなった。子供のころのようにただウキウキと綺麗なものを眺めているだけではなくなったの。
 それが寂しくもあるけれど、嬉しくもある。私はそれだけ成長したということだから。

 魔石の内部は魔力が揺らぐ。大きさも形も様々。綺麗な形となる精製魔石に、歪な形もある天然魔石。魔力量によって大きさも変わる特殊魔石。それぞれ強さも大きく違う。石それぞれに個性がある。

 そして……特殊魔石たちは魔獣や魔蟲の命と同じ。命をいただいているのだということを忘れてはいけないと思っている。私たち魔石精製師は討伐じゃない、魔石のために命を奪う。それだけ重い仕事だと思う。


 それを心に止めて、私は国家魔石精製師になる。


 そして翌日、昼前、場所は城、魔導師団演習場近くの一室。


 合否発表だ。

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