97 / 247
第3章《試験》編
第94話 ライとリース
しおりを挟む
ライとリースが護衛であろう三人と一緒に六匹のウルーに囲まれていた。ウルーは素早い動きで厄介ではあるが、護衛の人からしたら左程強い相手ではない。だけど、それは数が少ない場合だ。ウルーは群れで行動する。一対一ならばともかく、三人しかいない護衛と対数匹ともなると苦戦するのは間違いない。
しかも、どうやらリースが怪我を負っている。ウルーと対峙したときに攻撃されたのだろうか、脚から血が流れている。処置をした様子もない。ということは、今のこの群れに襲われ怪我をしたのだ。
「結構な数だ……先手必勝だな」
「あぁ」
そう言ってディノとイーザンは風上に移動していったかと思うと、ディノが大きく叫び煙玉を投げ込んだ。
「援護する!!」
投げ込んだ煙玉から煙が噴き出し、そしてディノの言葉に一瞬驚いた顔をしたがライたちは瞬時に理解したのか、リースを庇いながらウルーの群れのなかを抜けた。護衛が剣で攻撃しつつ、魔導師が風の刃で斬り裂く。ウルーが怯んでいる横を駆け抜け、森の木陰にライとリースは身を隠す。
護衛三人は再びウルーと対峙し、ディノとイーザン、ライたちの護衛三人の共闘が始まった。
私はというと慌ててライとリースの元へと走った。
「ライ! リース!」
「「ルーサ!?」」
リースに駆け寄り、怪我の具合を診る。服は斬り裂かれ、脚が深く抉られ血が流れている。鞄から慌てて回復薬を取り出し、直接傷にかける。
「うっ」
リースは苦悶の表情を浮かべた。大きな傷には飲むよりもかけるほうが即効性が高い。しかし飲むよりは効果が薄れる。ライも慌てて自身の鞄から回復薬を取り出し、リースに飲ませた。
「まさかルーサに会えるなんて、ありがとう」
リースは回復薬を飲み干し、脂汗を流しながらも落ち着いてきたのか顔を上げにこりと笑った。
「あぁ、驚いたよ。まあでもルーサもフェスラーデの森に行くって言ってたもんな。どこかで会うかな、とは少し思ってた」
ライも少しは安堵したのか、強張っていた表情が少し和らいだ。
「うん、私も会えるかな、とは思ってたけど、本当に会えるとは思わなかったよ。間に合って良かった」
そう言いながら私はディノとイーザンの様子を伺った。
ウルーたちは突然現れたディノとイーザンに驚いたのか、煙玉のせいなのか少し動きが鈍くなっていた。それを二人が見逃す訳がなく、先手必勝という宣言通りにディノとイーザンは次々ウルーをなぎ倒していき、イーザンの放つ業火により、辺り一面大爆発を引き起こした。ライたちの護衛もその爆発から逃れたウルーを仕留め、残り一匹というところでその一匹は逃げ出した。
「ディノ、イーザン、ありがとう、お疲れ様!」
「おう!」
ディノが高らかに拳を突き上げ、こちらに戻ってくる。それに続くイーザンとライたちの護衛三人。ライたちの護衛はにこやかにディノとイーザンに声をかけている。二人も顔見知りなのか、親し気に話していた。私たちは合流すると改めて、ライたちからお礼を言われた。
「本当にありがとう。俺たちだけじゃやられてた」
「ま、困ったときはお互い様だよな。それより一旦アシェリアンの泉に戻るぞ。さっき逃げた奴がまた仲間を連れて来るかもしれないしな」
ディノの言葉に皆が頷き、私たちは共にアシェリアンの泉まで戻ることにした。
「リース大丈夫?」
アシェリアンの泉に戻ってからは全員身体を休めるために、食事をしつつ休息となった。その間にリースの怪我の具合を聞く。傷はまだ完全には癒えてはいないが、もう血は流れていない。回復薬を飲んでいるため、もうしばらくしたら完全に癒えるだろう。
「うん、ありがとうね、ルーサ」
「良かった」
「あー、やっぱり私にはまだフェスラーデの森は厳しかったのかもね」
そう言いながら眉を下げる。
「厳しい?」
「うん。ライと共闘するから大丈夫と思ってたけど、明らかに私が足を引っ張っちゃった」
「リースが?」
「逃げるのが遅れて怪我を負った挙句、あの通り囲まれちゃったしね」
「…………」
なんて言葉をかけたらいいのか分からなかった。足手纏い、そうなのかもしれないけれど……
「それを言っちゃうと魔石採取なんて出来ないよ。私たちは自分で戦える訳じゃない。誰かに戦ってもらわないといけない。それはいつまで経ってもずっとそう。足を引っ張るかもしれない。誰かに怪我を負わせてしまうかもしれない。命の危険に晒すかもしれない……でもそれは魔石精製師として覚悟しないといけないことなんじゃないかな、と思う……」
「…………そうだね」
「あ、ごめん! 生意気なこと言って!」
シュンとしてしまったリースに慌てて取り繕う。なに偉そうなこと言ってんのよ、私!
「フフ。ううん。その通りだと思う。あーあ、私ってまだまだ甘ちゃんだったんだなー」
リースは大きく伸びをし、笑った。
「どうしたんだー?」
ライが飲み物を持ってこちらにやって来た。
「ルーサに叱られたー」
「叱ってないし!!」
リースが意地悪そうな笑顔でそう言い、慌てて反論する。ライは「??」といった顔だった。
しかも、どうやらリースが怪我を負っている。ウルーと対峙したときに攻撃されたのだろうか、脚から血が流れている。処置をした様子もない。ということは、今のこの群れに襲われ怪我をしたのだ。
「結構な数だ……先手必勝だな」
「あぁ」
そう言ってディノとイーザンは風上に移動していったかと思うと、ディノが大きく叫び煙玉を投げ込んだ。
「援護する!!」
投げ込んだ煙玉から煙が噴き出し、そしてディノの言葉に一瞬驚いた顔をしたがライたちは瞬時に理解したのか、リースを庇いながらウルーの群れのなかを抜けた。護衛が剣で攻撃しつつ、魔導師が風の刃で斬り裂く。ウルーが怯んでいる横を駆け抜け、森の木陰にライとリースは身を隠す。
護衛三人は再びウルーと対峙し、ディノとイーザン、ライたちの護衛三人の共闘が始まった。
私はというと慌ててライとリースの元へと走った。
「ライ! リース!」
「「ルーサ!?」」
リースに駆け寄り、怪我の具合を診る。服は斬り裂かれ、脚が深く抉られ血が流れている。鞄から慌てて回復薬を取り出し、直接傷にかける。
「うっ」
リースは苦悶の表情を浮かべた。大きな傷には飲むよりもかけるほうが即効性が高い。しかし飲むよりは効果が薄れる。ライも慌てて自身の鞄から回復薬を取り出し、リースに飲ませた。
「まさかルーサに会えるなんて、ありがとう」
リースは回復薬を飲み干し、脂汗を流しながらも落ち着いてきたのか顔を上げにこりと笑った。
「あぁ、驚いたよ。まあでもルーサもフェスラーデの森に行くって言ってたもんな。どこかで会うかな、とは少し思ってた」
ライも少しは安堵したのか、強張っていた表情が少し和らいだ。
「うん、私も会えるかな、とは思ってたけど、本当に会えるとは思わなかったよ。間に合って良かった」
そう言いながら私はディノとイーザンの様子を伺った。
ウルーたちは突然現れたディノとイーザンに驚いたのか、煙玉のせいなのか少し動きが鈍くなっていた。それを二人が見逃す訳がなく、先手必勝という宣言通りにディノとイーザンは次々ウルーをなぎ倒していき、イーザンの放つ業火により、辺り一面大爆発を引き起こした。ライたちの護衛もその爆発から逃れたウルーを仕留め、残り一匹というところでその一匹は逃げ出した。
「ディノ、イーザン、ありがとう、お疲れ様!」
「おう!」
ディノが高らかに拳を突き上げ、こちらに戻ってくる。それに続くイーザンとライたちの護衛三人。ライたちの護衛はにこやかにディノとイーザンに声をかけている。二人も顔見知りなのか、親し気に話していた。私たちは合流すると改めて、ライたちからお礼を言われた。
「本当にありがとう。俺たちだけじゃやられてた」
「ま、困ったときはお互い様だよな。それより一旦アシェリアンの泉に戻るぞ。さっき逃げた奴がまた仲間を連れて来るかもしれないしな」
ディノの言葉に皆が頷き、私たちは共にアシェリアンの泉まで戻ることにした。
「リース大丈夫?」
アシェリアンの泉に戻ってからは全員身体を休めるために、食事をしつつ休息となった。その間にリースの怪我の具合を聞く。傷はまだ完全には癒えてはいないが、もう血は流れていない。回復薬を飲んでいるため、もうしばらくしたら完全に癒えるだろう。
「うん、ありがとうね、ルーサ」
「良かった」
「あー、やっぱり私にはまだフェスラーデの森は厳しかったのかもね」
そう言いながら眉を下げる。
「厳しい?」
「うん。ライと共闘するから大丈夫と思ってたけど、明らかに私が足を引っ張っちゃった」
「リースが?」
「逃げるのが遅れて怪我を負った挙句、あの通り囲まれちゃったしね」
「…………」
なんて言葉をかけたらいいのか分からなかった。足手纏い、そうなのかもしれないけれど……
「それを言っちゃうと魔石採取なんて出来ないよ。私たちは自分で戦える訳じゃない。誰かに戦ってもらわないといけない。それはいつまで経ってもずっとそう。足を引っ張るかもしれない。誰かに怪我を負わせてしまうかもしれない。命の危険に晒すかもしれない……でもそれは魔石精製師として覚悟しないといけないことなんじゃないかな、と思う……」
「…………そうだね」
「あ、ごめん! 生意気なこと言って!」
シュンとしてしまったリースに慌てて取り繕う。なに偉そうなこと言ってんのよ、私!
「フフ。ううん。その通りだと思う。あーあ、私ってまだまだ甘ちゃんだったんだなー」
リースは大きく伸びをし、笑った。
「どうしたんだー?」
ライが飲み物を持ってこちらにやって来た。
「ルーサに叱られたー」
「叱ってないし!!」
リースが意地悪そうな笑顔でそう言い、慌てて反論する。ライは「??」といった顔だった。
0
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
ここは乙女ゲームの世界でわたくしは悪役令嬢。卒業式で断罪される予定だけど……何故わたくしがヒロインを待たなきゃいけないの?
ラララキヲ
恋愛
乙女ゲームを始めたヒロイン。その悪役令嬢の立場のわたくし。
学園に入学してからの3年間、ヒロインとわたくしの婚約者の第一王子は愛を育んで卒業式の日にわたくしを断罪する。
でも、ねぇ……?
何故それをわたくしが待たなきゃいけないの?
※細かい描写は一切無いけど一応『R15』指定に。
◇テンプレ乙女ゲームモノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
その力で人の身を焼く“悪魔”の聖女にしか、第三王子は救えない
カズヤ
恋愛
“角”が生えており、聖女の力を使えば人の体を焼き腐らせてしまう少女リディア。
彼女は周囲から、そして腹違いの妹から「悪魔」と呼ばれ笑われる毎日だった。
だがある時に魔物と戦い再起不能となった第三王子クライヴが入院してくることでリディアの運命が変わる。
「クライヴ王子を直せるのは“角つき”のリディアしか居ません」
院長が王子にそう告げたその日から、リディアは第三王子付きの聖女になる。
剣により英雄となった王子は、悪魔の聖女にこう告げる。
「悪魔よ!もう一度この体が動くなら、おまえに俺のすべてをくれてやってもいい……!」
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる