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第2章《修行》編
第76話 修行の終わり
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ランバナスへと戻った私たちは各々部屋へと戻り、夕食時にエントランスで待ち合わせるということになった。
砂漠で砂まみれになったマントを脱ぎ、宿のお風呂を借りて汚れを落とす。
レインさんのおかげで暑さ対策や、砂対策、歩くときの対策なども完璧だった。それでもやはり疲労感というものは気が抜けるとどっとやってくるもので、お風呂で寝落ちし溺れそうになりました……。
服を着替え、エントランスへ降りるとすでに二人は待っていて、今日は違う店に行ってみるか、と街中をぶらぶらとすることになった。
辺りが次第に暗くなってくると街中のランプが灯り出し、幻想的な雰囲気となる。
「綺麗……」
「ランバナスは夜もこうやってあちこちにランプが灯っているから賑やかだよな。王都とはまた違う賑やかさというか」
「うん、お店の明るさもあるから、王都に負けないくらい夜でも明るいね」
でも王都とは違ったランプの温かみを感じる。
あちこちから夕食時の匂いが漂ってくるため、お腹が鳴りそうだわ。
「さて、今日はどうするかな。適当に入ってみるか。ルーサ、希望はあるか?」
「うーん、私は全然分からないし、任せるよ」
ディノは希望を聞いてくれるが、初めての街だし全く分からない。
「ランプが気に入ったのなら、好みそうな店がある」
イーザンが落ち着いた声で言った。
「ランプ? 行ってみたい!」
イーザンがフッと笑った気がした。くるりと踵を返し、小さく「こっちだ」と口にすると、スタスタ歩いて行く。私とディノは急いでその後に続いた。
しばらく歩いて行くと、多くの店が並ぶ中心地からは少し離れた場所に薄暗いなか、ひっそりと一軒の店があった。そこへ入るとなかはとても暗い……のだけど……
「凄い……綺麗……」
暗い店内は、テーブルの上に置かれた小さなランプだけの灯り。ふんわりと優しい光がまるで星のように浮かんで見える。
イーザンは一つのテーブルに向かい促した。ふわふわと不思議な感覚を覚えながら、椅子に座る。目の前にあるランプは優しい色をしていた。
「気に入ったか?」
「うん! とっても素敵! ありがとう、イーザン」
「あぁ」
「ちっ、どうせ俺はこんな洒落たとこ知らねーよ」
ブスッとした顔で拗ねているディノに思わず笑ってしまった。
「ディノも昨日のお店、凄く美味しかったよ、ありがとう」
「まあな」
フフンと自慢げな顔になったディノに、肩にいるルギニアスが鼻で笑った気がした……。
幻想的なお店にまったり心地好く過ごし、料理もとても美味しく満たされた。仕事終わりにこんなご褒美があるなら頑張る気力になるわよねー! と、ルンルンな気分で今回の採取を終えたのだった。
翌朝、再び乗合馬車へと乗り込み、ランバナスを後にした。
私の独り立ちでの第一歩、最高の形で踏み出せたんじゃないかしら。今後色々失敗もきっとあるとは思う。でもそれも修行よ。色々な経験を積んで最高の魔石精製師を目指すのよ!
王都へ着くと二人と別れる。二人とも、また一緒に採取へ行こうと言ってくれた。
そしてディノはいつか必ず一緒に旅をしよう、と、そう再び約束をし合ったのだった。子供の頃にした約束、それを今再び約束する。私が国家魔石精製師になれたときには一緒に旅へ出よう、そう誓い合った。
「おかえり、ルーサ!!」
無事に帰宅し、リラーナは抱き締め喜んでくれた。作業場から出てきたダラスさんにも頭を撫でられる。リラーナが色々聞いてくるのをダラスさんが制止し、今回採取した魔石を見てもらう。
ダラスさんは魔石を手に取り、じっくりと眺めた。二つとも確認すると私に返す。
「合格だ。お前は今後、修行も継続しつつ、試験の準備をしていけ」
「「!!」」
リラーナと二人で顔を見合わせた。そして再びダラスさんに向き直る。
「はいっ!! ありがとうございます!!」
ダラスさんは少し寂しそうな? 不安そうな? 複雑そうな表情だが、頭をワシワシと撫でながら、フッと笑った。
ついに……ついに、国家魔石精製師の資格取得へ挑戦許可が出た!!
*******
第二章 完
砂漠で砂まみれになったマントを脱ぎ、宿のお風呂を借りて汚れを落とす。
レインさんのおかげで暑さ対策や、砂対策、歩くときの対策なども完璧だった。それでもやはり疲労感というものは気が抜けるとどっとやってくるもので、お風呂で寝落ちし溺れそうになりました……。
服を着替え、エントランスへ降りるとすでに二人は待っていて、今日は違う店に行ってみるか、と街中をぶらぶらとすることになった。
辺りが次第に暗くなってくると街中のランプが灯り出し、幻想的な雰囲気となる。
「綺麗……」
「ランバナスは夜もこうやってあちこちにランプが灯っているから賑やかだよな。王都とはまた違う賑やかさというか」
「うん、お店の明るさもあるから、王都に負けないくらい夜でも明るいね」
でも王都とは違ったランプの温かみを感じる。
あちこちから夕食時の匂いが漂ってくるため、お腹が鳴りそうだわ。
「さて、今日はどうするかな。適当に入ってみるか。ルーサ、希望はあるか?」
「うーん、私は全然分からないし、任せるよ」
ディノは希望を聞いてくれるが、初めての街だし全く分からない。
「ランプが気に入ったのなら、好みそうな店がある」
イーザンが落ち着いた声で言った。
「ランプ? 行ってみたい!」
イーザンがフッと笑った気がした。くるりと踵を返し、小さく「こっちだ」と口にすると、スタスタ歩いて行く。私とディノは急いでその後に続いた。
しばらく歩いて行くと、多くの店が並ぶ中心地からは少し離れた場所に薄暗いなか、ひっそりと一軒の店があった。そこへ入るとなかはとても暗い……のだけど……
「凄い……綺麗……」
暗い店内は、テーブルの上に置かれた小さなランプだけの灯り。ふんわりと優しい光がまるで星のように浮かんで見える。
イーザンは一つのテーブルに向かい促した。ふわふわと不思議な感覚を覚えながら、椅子に座る。目の前にあるランプは優しい色をしていた。
「気に入ったか?」
「うん! とっても素敵! ありがとう、イーザン」
「あぁ」
「ちっ、どうせ俺はこんな洒落たとこ知らねーよ」
ブスッとした顔で拗ねているディノに思わず笑ってしまった。
「ディノも昨日のお店、凄く美味しかったよ、ありがとう」
「まあな」
フフンと自慢げな顔になったディノに、肩にいるルギニアスが鼻で笑った気がした……。
幻想的なお店にまったり心地好く過ごし、料理もとても美味しく満たされた。仕事終わりにこんなご褒美があるなら頑張る気力になるわよねー! と、ルンルンな気分で今回の採取を終えたのだった。
翌朝、再び乗合馬車へと乗り込み、ランバナスを後にした。
私の独り立ちでの第一歩、最高の形で踏み出せたんじゃないかしら。今後色々失敗もきっとあるとは思う。でもそれも修行よ。色々な経験を積んで最高の魔石精製師を目指すのよ!
王都へ着くと二人と別れる。二人とも、また一緒に採取へ行こうと言ってくれた。
そしてディノはいつか必ず一緒に旅をしよう、と、そう再び約束をし合ったのだった。子供の頃にした約束、それを今再び約束する。私が国家魔石精製師になれたときには一緒に旅へ出よう、そう誓い合った。
「おかえり、ルーサ!!」
無事に帰宅し、リラーナは抱き締め喜んでくれた。作業場から出てきたダラスさんにも頭を撫でられる。リラーナが色々聞いてくるのをダラスさんが制止し、今回採取した魔石を見てもらう。
ダラスさんは魔石を手に取り、じっくりと眺めた。二つとも確認すると私に返す。
「合格だ。お前は今後、修行も継続しつつ、試験の準備をしていけ」
「「!!」」
リラーナと二人で顔を見合わせた。そして再びダラスさんに向き直る。
「はいっ!! ありがとうございます!!」
ダラスさんは少し寂しそうな? 不安そうな? 複雑そうな表情だが、頭をワシワシと撫でながら、フッと笑った。
ついに……ついに、国家魔石精製師の資格取得へ挑戦許可が出た!!
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第二章 完
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