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第2章《修行》編
第48話 初めての専用魔導具
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「ただいま!」
扉を開け、店のなかへと入るとリラーナがガバッとこちらに振り向き、驚いた顔をしたかと思うと駆け寄り抱き付いてきた。
「ルーサ! どこ行ってたのよ! 心配したのよ!?」
ぎゅうっと抱き締められ、物凄く心配をかけたのだと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。ダラスさんは大きく溜め息を吐くと、私とリラーナ両方の頭に手を置いた。
「ロンの店へ行った後、なにかあったのか?」
リラーナは身体を離し、私の両肩を掴んだまま、泣きそうな顔で私を見詰める。
襲われたことを正直に言うべきか……どうしよう……。
店へ戻るまでの道中に、ルギニアスには正直に言えと言われた。でないと、また襲われたとしたらダラスさんやリラーナも巻き込む可能性も出てくる、と。そんなことになったら嫌だ。二人を巻き込みたくなんかない……。でも余計な心配をかけるかもしれない……。どうしたら……。
「あ、あの……ロンさんの店を出た後に……その、見知らぬ人に追いかけられて……」
「え!?」
リラーナが驚いた顔になった。ダラスさんは怪訝な顔。
「そ、それって大丈夫だったの!? なにもされなかった!?」
リラーナは心配そうに私の身体を確認する。あぁ、やっぱり心配をかけてしまった。
「うん、大丈夫。助けてくれた人がいて」
命を狙われたことは黙っておこう。これ以上心配をかけたくないし。
「助けてくれた人?」
「うん、少し年上かな、って感じの男の子。凄く運動神経が良くて、大通りまで連れて行ってくれたの」
「へぇ、そうなんだ」
リラーナは先程の心配した顔からなんだかニヤニヤとした顔になった。な、なに?
「その追いかけてきた奴はお前になにか言ったか?」
そんなリラーナを無視し、ダラスさんが難しい顔をしたまま聞いてきた。
「え? い、いえ、なにも……」
殺されかけはしたけれど、なにか言われた訳ではない。嘘は言ってないわよね……。
ダラスさんは顎に手を当て考え込んだ。
「その……見知らぬ人からはなにも言われてないけれど、ロンさんから「魔石精製師の女の子を知らないか」って、見かけたことのない人から聞かれたから気を付けろって言われました」
「魔石精製師の……」
「なにそれ、ルーサのことを探してるってこと!?」
リラーナは驚いた顔をし、私の肩を抱き締めた。
「追いかけて来た奴にしろ、魔石精製師を探している奴にしろ、何者かは知らんが、今後一人では行動するな。外に出るときにはリラーナと共に行け」
「は、はい……すみません……」
「アハハ、なに謝ってんの! ルーサが悪い訳じゃないじゃない!」
「う、うん……」
申し訳なさいっぱいになっていると、リラーナはそれを吹き飛ばすかのように、バシバシと私の背中を叩いた。
ちなみに家や店には結界が張ってあるらしいので、一人でも問題ないとのことだ。商売柄、不審者対策としての結界魔導具が建物隅に数か所設置されているらしい。発動するとどんなことが起きるのかは教えてくれなかった……気になる……。
「あ、魔導具といえば、遅くなってすみません。ロンさんから受け取った魔導具です」
そう言いながらロンさんのお店で受け取った魔導具を鞄から取り出し、ダラスさんに差し出した。
ダラスさんは私の手からそれを受け取ると、箱の中身を確認する。しばらく確認していたかと思うと、再び箱に収め、私の前に差し出した。
「え?」
私の前に差し出されたその箱と、ダラスさんの顔を見る。
「この魔導具はお前にやるつもりで注文したものだ。開けてみろ」
「私に?」
そう言われ、再びその箱を受け取ると、そっと箱を開けた。
「これは?」
「方位計だ」
方位計! ウィスさんとロンさんから聞いたことがある。土魔法で地脈を感知出来る、その魔力を込めた魔導具として方位計があると聞いた。
その方位計は魔法陣のような綺麗な柄の円盤の上に針が乗り、方角を記す記号が綺麗な装飾文字で書かれてあった。そして針の乗る中心。そこには緑色の綺麗な魔石がキラキラと輝いていた。
「綺麗……」
私の掌に収まる小さな魔導具。しかし自分専用の魔導具なんて持ったことがない私からしたら、これほど嬉しいものはない。しかもこんな綺麗なもの!
「どうしてこれを私に?」
「お前は魔石精製師として才があると思う。成長が早い。それだけお前が努力している証だろうがな。おそらく特殊魔石の採取もすぐ経験することになるだろう。そのとき方位計は必ず必要になってくる」
特殊魔石は怖いけれど、それよりもダラスさんに褒められたことが嬉しい!
「特殊魔石までたどり着いたら、後は自分がどこまで追求するか、だけだ」
「はい!」
自分がどこまで追求するか……、そう考えると特殊魔石も楽しみになってきたかもしれない。怖いのは怖いけれど、でもそれよりも魔石精製師としての技術が磨かれることが楽しくて仕方がない!
「良かったわね! ルーサ! 頑張れ!」
「うん! ありがとう、リラーナ! ありがとうございます! 師匠!」
そう叫び思い切りダラスさんに抱き付いた。ダラスさんはぎょっとした顔になったが、小さく溜め息を吐き、やれやれといった顔で頭を撫でてくれた。
◇◇
暗く静まり返った豪華な部屋で話す声がする。
「申し訳ございません。それらしき子供を捕まえようとしたのですが逃げられました」
「そうか……」
フードを目深に被り、顔を隠した男からの報告を受ける目の前の男は、豪華な椅子に座り、脚を組んだかと思うと、片手を肘置きに付き、顎に手をやり考え込んだ。
「これからどうすべきだと思う?」
椅子に座った男はフードの男から視線を外し、その後ろに視線を送った。
「そうでございますね、本人かどうかしばらく様子見をされたほうがよろしいかと」
フードの男の背後に立つその人物もフードで顔を隠してはいるが、少し高くしわがれた落ち着いた声。
ローブの袖から少し覗き見える手は皺が深く、年老いた女性であることが分かる。
「大丈夫だろうか……」
「さあ、それはなんとも……女神アシェリアンの御心次第ではないかと」
「うむ……そう、だな……」
男は小さく溜め息を吐いた。
「最近聖女の結界はどうだ?」
「……やはり弱まっておりますね……」
「……やはり駄目か……はぁぁ……頭の痛いところだが、今後のことも含めまた報告を頼む……下がって良いぞ」
「それでは失礼致します……陛下」
深々と頭を下げた老女は陛下と呼んだその男に少しの視線を送ったかと思うと、フードの男と共に部屋から退出していった……。
扉を開け、店のなかへと入るとリラーナがガバッとこちらに振り向き、驚いた顔をしたかと思うと駆け寄り抱き付いてきた。
「ルーサ! どこ行ってたのよ! 心配したのよ!?」
ぎゅうっと抱き締められ、物凄く心配をかけたのだと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。ダラスさんは大きく溜め息を吐くと、私とリラーナ両方の頭に手を置いた。
「ロンの店へ行った後、なにかあったのか?」
リラーナは身体を離し、私の両肩を掴んだまま、泣きそうな顔で私を見詰める。
襲われたことを正直に言うべきか……どうしよう……。
店へ戻るまでの道中に、ルギニアスには正直に言えと言われた。でないと、また襲われたとしたらダラスさんやリラーナも巻き込む可能性も出てくる、と。そんなことになったら嫌だ。二人を巻き込みたくなんかない……。でも余計な心配をかけるかもしれない……。どうしたら……。
「あ、あの……ロンさんの店を出た後に……その、見知らぬ人に追いかけられて……」
「え!?」
リラーナが驚いた顔になった。ダラスさんは怪訝な顔。
「そ、それって大丈夫だったの!? なにもされなかった!?」
リラーナは心配そうに私の身体を確認する。あぁ、やっぱり心配をかけてしまった。
「うん、大丈夫。助けてくれた人がいて」
命を狙われたことは黙っておこう。これ以上心配をかけたくないし。
「助けてくれた人?」
「うん、少し年上かな、って感じの男の子。凄く運動神経が良くて、大通りまで連れて行ってくれたの」
「へぇ、そうなんだ」
リラーナは先程の心配した顔からなんだかニヤニヤとした顔になった。な、なに?
「その追いかけてきた奴はお前になにか言ったか?」
そんなリラーナを無視し、ダラスさんが難しい顔をしたまま聞いてきた。
「え? い、いえ、なにも……」
殺されかけはしたけれど、なにか言われた訳ではない。嘘は言ってないわよね……。
ダラスさんは顎に手を当て考え込んだ。
「その……見知らぬ人からはなにも言われてないけれど、ロンさんから「魔石精製師の女の子を知らないか」って、見かけたことのない人から聞かれたから気を付けろって言われました」
「魔石精製師の……」
「なにそれ、ルーサのことを探してるってこと!?」
リラーナは驚いた顔をし、私の肩を抱き締めた。
「追いかけて来た奴にしろ、魔石精製師を探している奴にしろ、何者かは知らんが、今後一人では行動するな。外に出るときにはリラーナと共に行け」
「は、はい……すみません……」
「アハハ、なに謝ってんの! ルーサが悪い訳じゃないじゃない!」
「う、うん……」
申し訳なさいっぱいになっていると、リラーナはそれを吹き飛ばすかのように、バシバシと私の背中を叩いた。
ちなみに家や店には結界が張ってあるらしいので、一人でも問題ないとのことだ。商売柄、不審者対策としての結界魔導具が建物隅に数か所設置されているらしい。発動するとどんなことが起きるのかは教えてくれなかった……気になる……。
「あ、魔導具といえば、遅くなってすみません。ロンさんから受け取った魔導具です」
そう言いながらロンさんのお店で受け取った魔導具を鞄から取り出し、ダラスさんに差し出した。
ダラスさんは私の手からそれを受け取ると、箱の中身を確認する。しばらく確認していたかと思うと、再び箱に収め、私の前に差し出した。
「え?」
私の前に差し出されたその箱と、ダラスさんの顔を見る。
「この魔導具はお前にやるつもりで注文したものだ。開けてみろ」
「私に?」
そう言われ、再びその箱を受け取ると、そっと箱を開けた。
「これは?」
「方位計だ」
方位計! ウィスさんとロンさんから聞いたことがある。土魔法で地脈を感知出来る、その魔力を込めた魔導具として方位計があると聞いた。
その方位計は魔法陣のような綺麗な柄の円盤の上に針が乗り、方角を記す記号が綺麗な装飾文字で書かれてあった。そして針の乗る中心。そこには緑色の綺麗な魔石がキラキラと輝いていた。
「綺麗……」
私の掌に収まる小さな魔導具。しかし自分専用の魔導具なんて持ったことがない私からしたら、これほど嬉しいものはない。しかもこんな綺麗なもの!
「どうしてこれを私に?」
「お前は魔石精製師として才があると思う。成長が早い。それだけお前が努力している証だろうがな。おそらく特殊魔石の採取もすぐ経験することになるだろう。そのとき方位計は必ず必要になってくる」
特殊魔石は怖いけれど、それよりもダラスさんに褒められたことが嬉しい!
「特殊魔石までたどり着いたら、後は自分がどこまで追求するか、だけだ」
「はい!」
自分がどこまで追求するか……、そう考えると特殊魔石も楽しみになってきたかもしれない。怖いのは怖いけれど、でもそれよりも魔石精製師としての技術が磨かれることが楽しくて仕方がない!
「良かったわね! ルーサ! 頑張れ!」
「うん! ありがとう、リラーナ! ありがとうございます! 師匠!」
そう叫び思い切りダラスさんに抱き付いた。ダラスさんはぎょっとした顔になったが、小さく溜め息を吐き、やれやれといった顔で頭を撫でてくれた。
◇◇
暗く静まり返った豪華な部屋で話す声がする。
「申し訳ございません。それらしき子供を捕まえようとしたのですが逃げられました」
「そうか……」
フードを目深に被り、顔を隠した男からの報告を受ける目の前の男は、豪華な椅子に座り、脚を組んだかと思うと、片手を肘置きに付き、顎に手をやり考え込んだ。
「これからどうすべきだと思う?」
椅子に座った男はフードの男から視線を外し、その後ろに視線を送った。
「そうでございますね、本人かどうかしばらく様子見をされたほうがよろしいかと」
フードの男の背後に立つその人物もフードで顔を隠してはいるが、少し高くしわがれた落ち着いた声。
ローブの袖から少し覗き見える手は皺が深く、年老いた女性であることが分かる。
「大丈夫だろうか……」
「さあ、それはなんとも……女神アシェリアンの御心次第ではないかと」
「うむ……そう、だな……」
男は小さく溜め息を吐いた。
「最近聖女の結界はどうだ?」
「……やはり弱まっておりますね……」
「……やはり駄目か……はぁぁ……頭の痛いところだが、今後のことも含めまた報告を頼む……下がって良いぞ」
「それでは失礼致します……陛下」
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