45 / 247
第2章《修行》編
第43話 精製魔石の組式
しおりを挟む
最近ルギニアスが出て来てくれないなぁ、あのとき「魔王は敵だ」って言ったことがよくなかったのかしら……あのときはルギニアスが魔王だなんて全く思っていなかったから、ああ言った訳で……本当にルギニアスが魔王……なの?
いやいや、そんなはず……ルギニアスが人間たちを殺そうとしていたなんて想像も出来ない。そもそも封印はどこにされているのかしら……私の周りに出てくる意味も分からないし……本当に魔王なのだとしたら……私はどうしたらいいんだろうか……。
お父様とお母様の行方も分からないままだし……もう! なんでこんなに分からないことばかりなのよ! 誰か教えて!
「なに百面相をしているんだ」
ギクッ。
ゴリゴリと精製魔石に勤しんでいたらダラスさんにいきなり声をかけられビクッとした。ゴリゴリしながらかなり考え込んでいたようだ。すっかり魔石原石は粉々になっていた。
「あ、いえ、なんでもありません!」
慌てて笑って取り繕う。
「そういえば……」
ゴリゴリと精製魔石を精製するのにも慣れてきていたため、先日研究所棟へ見学に行ったときに気付いたことをダラスさんに確認してみることにした。
「この前研究所棟に行ったときに気付いたんですけど、精製魔石って『構築』ですよね?」
「…………フッ、『精製』が分かってきたな」
ダラスさんが珍しく少し笑った! それを見て嬉しくなり私も満面の笑みに!
「お前の考えは?」
作業の手を止め自分の考えを、頭のなかで整理しながら口にしていく。
「えっと、まず精製魔石を精製したときに、結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力を同時に送ることが凄く難しかったんです。だから別々に送るのではなく、体内で先に混ぜ合わせ、練り上げて送ると成功したんですよ。そこから研究所棟でお話を聞いている間に、魔石を精製するには様々な要素を組み合わせていって、そこから練り上げていくんじゃないかな、と。だから『構築』していく、ということではないかな、と思って」
「ふむ、大体は合っているな」
「やった」
思わずガッツポーズ。そしてダラスさんは作業台に紙を置いて、色々な記号のようなものを書き説明していってくれる。
「結晶化の魔力を〇とする、魔力付与対応の魔力を×とする、そしてその魔力付与の種類によって変わる要素を△とする。ただしこの△はこれだけではない。そこに様々な要素があり、それらの組み合わせによって×が出来る。
〇と×が基本としてあるが、×は△であったり▽であったり、▲や▼でもある訳だ。
〇+×(△▽)
〇+×(▽▼▽)
〇+×(△△▼▼)……
であったりと、様々な形がある。そこにさらに魔素となるための元を組み合わせていくと魔力だけで練り上げて精製する魔石が出来上がる」
実際自分でろ過蒸留の精製魔石をしているので、今言われたことはおそらくやっているのだろうけれど、こうやって書き出して説明されるとなんだかとんでもないことをやっている気分になる。熱が出そうだわ……。
「魔素の元というのは……」
そんなものを精製出来るのかしら、と疑問になってしまう。
「魔素の元はこの魔力を組み合わせる前に練り上げる基本となる核だ。そこに先程の魔力の組式を混ぜ合わせていく。魔素の元は一種類しかない。天然魔石感知のときに感じただろう。あれを思い出せ。それを体内のなかで練り上げろ。魔石精製師は必ず出来る」
ダラスさんが一度手本を見せる、と椅子に座り集中し出した。
「魔力感知しながら追ってみろ」
そう言ったダラスさんは両手でなにかを包んでいるかのように、身体の前に拳一つ分の隙間を作るように両手を構えた。そして目を瞑り集中する。
言われるままに魔力感知を行ってみる。意識をダラスさんの身体、手の先に集中させる。
ダラスさんの身体のなかになにかがチリチリと揺らぎ出したのが分かる。これは……あの天然魔石を感知したときに感じた魔素……? 魔力とは少し違う力。それがダラスさんのなかで少しずつ大きくなってきたかと思うと、今度はまた違った力を感じる。
これは魔力ね!
結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力。それらが同時に体内に溢れ出し、じわじわと魔素を感じた辺りに集まってくる。魔力付与対応の魔力はそれをさらに深く感知すると、なにか不思議に色々な気配を感じた。これが様々な要素……。
次第にそれらすべての魔力が一か所に集まり混ざり合っていく。そして一つとなったそれはダラスさんの両手に集まっていき、掌から外へと放出されていく、魔力の気配が目に見える訳ではないのだが、その中心、ダラスさんの両手の中心部分にはチリチリと激しい魔力の渦が現れた。
とても小さな魔力渦。そこにとてつもない魔力量が集まっていることが分かる。小さな魔力渦は次第に大きくなっていき。激しい光を伴っていた。大きくなっていくと次第にそれは赤い魔力だと判別出来る。
赤い魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げダラスさんの手に収まった。
※組式=作者造語です
いやいや、そんなはず……ルギニアスが人間たちを殺そうとしていたなんて想像も出来ない。そもそも封印はどこにされているのかしら……私の周りに出てくる意味も分からないし……本当に魔王なのだとしたら……私はどうしたらいいんだろうか……。
お父様とお母様の行方も分からないままだし……もう! なんでこんなに分からないことばかりなのよ! 誰か教えて!
「なに百面相をしているんだ」
ギクッ。
ゴリゴリと精製魔石に勤しんでいたらダラスさんにいきなり声をかけられビクッとした。ゴリゴリしながらかなり考え込んでいたようだ。すっかり魔石原石は粉々になっていた。
「あ、いえ、なんでもありません!」
慌てて笑って取り繕う。
「そういえば……」
ゴリゴリと精製魔石を精製するのにも慣れてきていたため、先日研究所棟へ見学に行ったときに気付いたことをダラスさんに確認してみることにした。
「この前研究所棟に行ったときに気付いたんですけど、精製魔石って『構築』ですよね?」
「…………フッ、『精製』が分かってきたな」
ダラスさんが珍しく少し笑った! それを見て嬉しくなり私も満面の笑みに!
「お前の考えは?」
作業の手を止め自分の考えを、頭のなかで整理しながら口にしていく。
「えっと、まず精製魔石を精製したときに、結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力を同時に送ることが凄く難しかったんです。だから別々に送るのではなく、体内で先に混ぜ合わせ、練り上げて送ると成功したんですよ。そこから研究所棟でお話を聞いている間に、魔石を精製するには様々な要素を組み合わせていって、そこから練り上げていくんじゃないかな、と。だから『構築』していく、ということではないかな、と思って」
「ふむ、大体は合っているな」
「やった」
思わずガッツポーズ。そしてダラスさんは作業台に紙を置いて、色々な記号のようなものを書き説明していってくれる。
「結晶化の魔力を〇とする、魔力付与対応の魔力を×とする、そしてその魔力付与の種類によって変わる要素を△とする。ただしこの△はこれだけではない。そこに様々な要素があり、それらの組み合わせによって×が出来る。
〇と×が基本としてあるが、×は△であったり▽であったり、▲や▼でもある訳だ。
〇+×(△▽)
〇+×(▽▼▽)
〇+×(△△▼▼)……
であったりと、様々な形がある。そこにさらに魔素となるための元を組み合わせていくと魔力だけで練り上げて精製する魔石が出来上がる」
実際自分でろ過蒸留の精製魔石をしているので、今言われたことはおそらくやっているのだろうけれど、こうやって書き出して説明されるとなんだかとんでもないことをやっている気分になる。熱が出そうだわ……。
「魔素の元というのは……」
そんなものを精製出来るのかしら、と疑問になってしまう。
「魔素の元はこの魔力を組み合わせる前に練り上げる基本となる核だ。そこに先程の魔力の組式を混ぜ合わせていく。魔素の元は一種類しかない。天然魔石感知のときに感じただろう。あれを思い出せ。それを体内のなかで練り上げろ。魔石精製師は必ず出来る」
ダラスさんが一度手本を見せる、と椅子に座り集中し出した。
「魔力感知しながら追ってみろ」
そう言ったダラスさんは両手でなにかを包んでいるかのように、身体の前に拳一つ分の隙間を作るように両手を構えた。そして目を瞑り集中する。
言われるままに魔力感知を行ってみる。意識をダラスさんの身体、手の先に集中させる。
ダラスさんの身体のなかになにかがチリチリと揺らぎ出したのが分かる。これは……あの天然魔石を感知したときに感じた魔素……? 魔力とは少し違う力。それがダラスさんのなかで少しずつ大きくなってきたかと思うと、今度はまた違った力を感じる。
これは魔力ね!
結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力。それらが同時に体内に溢れ出し、じわじわと魔素を感じた辺りに集まってくる。魔力付与対応の魔力はそれをさらに深く感知すると、なにか不思議に色々な気配を感じた。これが様々な要素……。
次第にそれらすべての魔力が一か所に集まり混ざり合っていく。そして一つとなったそれはダラスさんの両手に集まっていき、掌から外へと放出されていく、魔力の気配が目に見える訳ではないのだが、その中心、ダラスさんの両手の中心部分にはチリチリと激しい魔力の渦が現れた。
とても小さな魔力渦。そこにとてつもない魔力量が集まっていることが分かる。小さな魔力渦は次第に大きくなっていき。激しい光を伴っていた。大きくなっていくと次第にそれは赤い魔力だと判別出来る。
赤い魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げダラスさんの手に収まった。
※組式=作者造語です
0
お気に入りに追加
266
あなたにおすすめの小説
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる