【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~

樹結理(きゆり)

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第2章《修行》編

第38話 気付き

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「夢があるだろう? 事実がどうだったのかはその時代を生きている訳ではないから分かるはずもない。しかしそれを解明していくことに意味がある。正解にたどり着かなくともそれにたどり着くまでの道程が重要だ。そのときの人々がなにを見て、なにを感じ、どうやって生きてきたのか。それを調べるのが研究だ。
 魔導についても同じさ。どうやって魔素が生まれ、そこからどうやって魔力が生まれるのか。魔力が魔法となり発動される要因はなんなのか、私たちの研究所ではあらゆることを調べているのさ」

「「なるほど」」

 リラーナと二人でジオラスさんの言葉に聞き入ってしまった。

「そうよね、私も魔導具を作るときに、色々魔石の力を発動させるための構造を考えないといけない。研究と同じよね」

 リラーナの言葉に頷く。

「うん、私も魔石を精製するには魔石の魔素や魔力を感じたり、それを精製するには魔力を構築して練り上げていくのよ……あ、そうか」
「ん? どうかした?」
「構築……構築していくのね!」
「え? なになに?」

 頭のなかでパズルが綺麗に組み合わさったかのように、今理解出来たような気がする。魔石を精製するために……うん、今度ダラスさんに聞いてみよう!

「ちょっと、なに一人で納得してるの?」

 リラーナが不満げに口を尖らせた。それが少しおかしくて笑ってしまった。

「フフ、ごめん、魔石精製の話。まだ私自身も整理出来てないから、またはっきり分かったら言うね」
「そうなの? なにか一歩前進出来たなら良かったわね!」

「おや、なにか発見でもあったかな?」

 ジオラスさんが気になるのかワクワクした顔で聞いてくる。

「えぇ。ありがとうございます。こうやって色々お話を聞かせていただいたおかげで、気付けたことがありました」
「それは良かった! こうやって人との対話は様々なことが刺激になり、良い発見に繋がるからねぇ! こうやって研究も意見を出し合い進んでいくのさ」
「はい、ありがとうございます!」


 そうやって色々と話を聞いたり、書物を見せてもらったり、実験部屋を見学させてもらったりと魔導研究所を満喫させてもらい、皆さんへお礼を言って部屋を後にする。

「じゃあ次は魔石付与部へ行ってみますか?」
「はい! お願いします!」

 ウキウキになっている私を見て、ウルバさんとリラーナは顔を見合わせ笑っていた。

「ではその前にお昼にしましょうか。城従事者用の食堂があるのでそこでお昼にしましょう」
「「やった」」

 ウルバさんのその提案に、城で食事が出来るなんて、と、リラーナと二人で喜びの声を上げたのだった。

 研究棟から少し歩いた場所の建物に従事者用の食堂はあった。一階が広い空間となっていて、多くのテーブルが並ぶ。厨房が覗き見えるカウンターから注文していくスタイルのようだ。カウンターの隅にメニューが書かれていた。すでに多くの人が食事を始め、良い香りが漂っている。

「従事者用食堂でお金は必要ありませんので好きなものを食べてくださいね」

 ウルバさんはニコリと笑いながら、手本を見せるようにトレイを持ち促した。真似をするようにトレイを持ちカウンターへと並ぶ。
 リラーナが「なにを食べようかしら」とウキウキしながらメニューを見ている。私もどうしよう。

 メニューには様々なものが書かれているが、名前だけ見ても分からない。どうしようか悩んでいると、ウルバさんがおススメを教えてくれた。

「お昼ならサンドウィッチなども美味しいですが、チーズがお嫌いでないなら、チーズのたっぷりかかったクスフカという料理をおススメしますよ」
「クスフカ……」
「えぇ。とろとろのチーズがとても美味しいのです」
「じゃあそれにしてみます!」

 ウルバさんおススメのクスフカを厨房カウンターで注文する。人気がある商品だからか、それほど待つこともなく、すぐに出してもらえ、トレイに受け取ると席まで運んだ。

 ウルバさんはサンドウィッチ、リラーナは散々迷った挙句、結局私と同じウルバさんおススメのクスフカにしていた。

 ウルバさんが注文したサンドウィッチも薄切りにしたお肉と野菜がたっぷりと挟まれ、香ばしい匂いと甘辛いタレだろうか、食欲をそそる匂いに思わずお腹が鳴った。

「フフ、ではいただきましょうか」

 恥ずかしくもなったが、それよりも早く食べたいという気持ちのほうが勝った。

「「いただきまーす」」

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