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第2章《修行》編
第34話 魔傀儡疑惑!
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「え、な、なんですか、それ?」
ウルバさんは目を見開き、私の頭の上を凝視している。
「え、えっと……ぬいぐるみです!」
「え、でも今喋ってましたよね?」
「うぐっ」
ま、まずい、喜びのあまりルギニアスに喋りかけてしまったせいで! どうやって誤魔化したら、とあわあわしていると、なにやらウルバさんは目が輝き出した。ん?
「もしかして魔傀儡ですか?」
「え?」
魔傀儡……なんか聞いたことあるような……。
「獣人の国『ガルヴィオ』の人々は物づくりが得意と聞きます。魔傀儡というものもあり、人間そっくりの人形を魔石で動かすことが出来るとか」
嬉々とした目で私とルギニアスを交互に見ているウルバさん。
「そ、そう! それです!」
「は? 違……むぐっ」
余計なことを口走る前に、頭の上のルギニアスをむんずと掴み、口を塞ごうとした。そうすると勢い余って顔面を塞いでしまい、息が出来ず悶えたルギニアスが怒り心頭だった。
「ちょ、ごめんって! でも今は黙ってて!」
ルギニアスに顔を近付け小声で訴える。ウルバさんにはどうやら聞かれていないようだ。良かった。それよりも完全にウキウキ顔で耳に届いていないだけかもしれないけれど……アハハ……。
「やはりそうなのですね!! 凄い! 魔傀儡なんて初めて見ましたよ! どこで手に入れたのですか!?」
「え、あー、えーっと、私の両親が……どこかから手に入れてきて……」
しどろもどろになりながら必死に言い訳を考える。
「へぇ、ご両親はガルヴィオの方となにか交流があるのですかねぇ」
ウルバさんは色々考えを巡らせている。ご、ごめんなさい。私自身がルギニアスのことをよく分かってないのに、他の人に説明出来ない!
ダラスさんはそんな私たちのやり取りを見て怪訝な顔をした。真っ直ぐにルギニアスを見詰めている。
はっ! そ、そうか……魔石で動く魔傀儡なら魔石精製師のダラスさんが分からない訳ないじゃない! 魔石を感知出来るんだから! ルギニアスから魔石の気配などないことはすぐに分かったはず……。
ど、どうしよう……。でもダラスさんはなにも言わない。なにを考えているのか分からないけれど、ルギニアスのことを咎めようという気配はない。み、見逃してくれるのかしら……。
「もし良かったら今度魔導研究所に遊びに来ませんか? ぜひその魔傀儡を研究させていただきたいのですが」
「え……そ、それは……」
研究も困るし、修行中の身で勝手には出歩けないし……思わずルギニアスを握り締める手に力が籠り、眼下から「ぐえぇ」というなにかを踏み潰したかのような音が聞こえた……。
「『それ』の研究はやめておけ。研究所へ見学に行くのは修行の合間をみて行けばいい」
ダラスさんは私の頭にポンと手を置いて言った。『それ』ってルギニアスのことよね。魔傀儡と嘘をついているのに庇ってくれてる?
「ルーサは友人から預かっている大事な娘だ。『それ』もその友人のものなら勝手なことは出来ない」
ダラスさん……。
「あぁ、そうなのですね。それは失礼なことを言ってしまいました。ルーサさん、申し訳ありません。研究したいと言ったことは忘れてください」
ウルバさんは申し訳なさそうに謝ってくれた。私が嘘をついているのに……ごめんなさい……。ダラスさんもきっとなにか思うところがあるだろうに庇ってくれた……。それが凄く心苦しい……。二人とも本当にごめんなさい。
「でも魔導研究所には興味があればぜひ遊びに来てくださいね」
そう言ってニコリと笑ったウルバさん。
「はい、ありがとうございます」
お互い笑い合い、そして再び魔石感知を再開したのだった。
「おい、さっきの魔傀儡とか、余計なことを」
「だって仕方ないじゃない。それ以外に説明のしようがなかったんだもの」
「だから魔王だと何度も……」
「だから! それが本当だろうと嘘だろうと『魔王』なんて言えるはずがないでしょ! この世界では魔王は封印されているべき、とんでもない敵なんだから!」
「…………」
「なに? どうしたの?」
急に黙ってしまった。なんで? 私、なにか変なこと言ったかしら……。本当に魔王なのだとしたら封印されてないといけない存在……封印が解けているのならなんとかしないといけない。国に報告する必要があるのかもしれない。
でも……ルギニアスがそんな人物だとは到底思えない。ちんちくりんだし……プッ。だからこその発言だったんだけど……なんだかショックを受けているようにも見えるのがモヤモヤとする……。
「…………そうだな」
ルギニアスはそれだけ小さく呟くと、またしてもポンと姿を消してしまった……。
「ルギニアス?」
そう小さく呼んでも、ルギニアスはその後一度も姿を現さなかった……。
天然魔石の採掘が終わり、帰るころにはルギニアスがいないことをウルバさんから問い詰められ、しどろもどろになりながら鞄に入れたのだと言い訳するはめに。
今日だけでどれほど嘘をついたのだろう、と自分が嫌になったのでした……はぁぁ。
ウルバさんは目を見開き、私の頭の上を凝視している。
「え、えっと……ぬいぐるみです!」
「え、でも今喋ってましたよね?」
「うぐっ」
ま、まずい、喜びのあまりルギニアスに喋りかけてしまったせいで! どうやって誤魔化したら、とあわあわしていると、なにやらウルバさんは目が輝き出した。ん?
「もしかして魔傀儡ですか?」
「え?」
魔傀儡……なんか聞いたことあるような……。
「獣人の国『ガルヴィオ』の人々は物づくりが得意と聞きます。魔傀儡というものもあり、人間そっくりの人形を魔石で動かすことが出来るとか」
嬉々とした目で私とルギニアスを交互に見ているウルバさん。
「そ、そう! それです!」
「は? 違……むぐっ」
余計なことを口走る前に、頭の上のルギニアスをむんずと掴み、口を塞ごうとした。そうすると勢い余って顔面を塞いでしまい、息が出来ず悶えたルギニアスが怒り心頭だった。
「ちょ、ごめんって! でも今は黙ってて!」
ルギニアスに顔を近付け小声で訴える。ウルバさんにはどうやら聞かれていないようだ。良かった。それよりも完全にウキウキ顔で耳に届いていないだけかもしれないけれど……アハハ……。
「やはりそうなのですね!! 凄い! 魔傀儡なんて初めて見ましたよ! どこで手に入れたのですか!?」
「え、あー、えーっと、私の両親が……どこかから手に入れてきて……」
しどろもどろになりながら必死に言い訳を考える。
「へぇ、ご両親はガルヴィオの方となにか交流があるのですかねぇ」
ウルバさんは色々考えを巡らせている。ご、ごめんなさい。私自身がルギニアスのことをよく分かってないのに、他の人に説明出来ない!
ダラスさんはそんな私たちのやり取りを見て怪訝な顔をした。真っ直ぐにルギニアスを見詰めている。
はっ! そ、そうか……魔石で動く魔傀儡なら魔石精製師のダラスさんが分からない訳ないじゃない! 魔石を感知出来るんだから! ルギニアスから魔石の気配などないことはすぐに分かったはず……。
ど、どうしよう……。でもダラスさんはなにも言わない。なにを考えているのか分からないけれど、ルギニアスのことを咎めようという気配はない。み、見逃してくれるのかしら……。
「もし良かったら今度魔導研究所に遊びに来ませんか? ぜひその魔傀儡を研究させていただきたいのですが」
「え……そ、それは……」
研究も困るし、修行中の身で勝手には出歩けないし……思わずルギニアスを握り締める手に力が籠り、眼下から「ぐえぇ」というなにかを踏み潰したかのような音が聞こえた……。
「『それ』の研究はやめておけ。研究所へ見学に行くのは修行の合間をみて行けばいい」
ダラスさんは私の頭にポンと手を置いて言った。『それ』ってルギニアスのことよね。魔傀儡と嘘をついているのに庇ってくれてる?
「ルーサは友人から預かっている大事な娘だ。『それ』もその友人のものなら勝手なことは出来ない」
ダラスさん……。
「あぁ、そうなのですね。それは失礼なことを言ってしまいました。ルーサさん、申し訳ありません。研究したいと言ったことは忘れてください」
ウルバさんは申し訳なさそうに謝ってくれた。私が嘘をついているのに……ごめんなさい……。ダラスさんもきっとなにか思うところがあるだろうに庇ってくれた……。それが凄く心苦しい……。二人とも本当にごめんなさい。
「でも魔導研究所には興味があればぜひ遊びに来てくださいね」
そう言ってニコリと笑ったウルバさん。
「はい、ありがとうございます」
お互い笑い合い、そして再び魔石感知を再開したのだった。
「おい、さっきの魔傀儡とか、余計なことを」
「だって仕方ないじゃない。それ以外に説明のしようがなかったんだもの」
「だから魔王だと何度も……」
「だから! それが本当だろうと嘘だろうと『魔王』なんて言えるはずがないでしょ! この世界では魔王は封印されているべき、とんでもない敵なんだから!」
「…………」
「なに? どうしたの?」
急に黙ってしまった。なんで? 私、なにか変なこと言ったかしら……。本当に魔王なのだとしたら封印されてないといけない存在……封印が解けているのならなんとかしないといけない。国に報告する必要があるのかもしれない。
でも……ルギニアスがそんな人物だとは到底思えない。ちんちくりんだし……プッ。だからこその発言だったんだけど……なんだかショックを受けているようにも見えるのがモヤモヤとする……。
「…………そうだな」
ルギニアスはそれだけ小さく呟くと、またしてもポンと姿を消してしまった……。
「ルギニアス?」
そう小さく呼んでも、ルギニアスはその後一度も姿を現さなかった……。
天然魔石の採掘が終わり、帰るころにはルギニアスがいないことをウルバさんから問い詰められ、しどろもどろになりながら鞄に入れたのだと言い訳するはめに。
今日だけでどれほど嘘をついたのだろう、と自分が嫌になったのでした……はぁぁ。
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