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第2章《修行》編
第23話 爵位返上
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細長いもう一つの部品を取り出し、両手から魔力を流しているのか、ロンさんの手はウィスさんが魔力付与をしていたときのようにぼんやりと光り出す。そのまま手を動かしていくと、その部品は見事に円になっていく。まるで柔らかい素材なのかと思うほど、滑らかに曲がっていくのが不思議でしょうがない。
ロンさんはその円にした部品を先程のテーブルのような部品にはめ込み、さらに赤い魔石をはめ込んだ。
その魔石と円にした部品にさらに魔力を込めているようだ。赤い魔石から一瞬激しい光が放たれたかと思うと、円となった部品と魔石は干渉し合うように、お互いが赤く光り、そして落ち着いた。
「よし、これでコンロの完成」
リラーナに教えてもらった家にあるコンロと同じだわ!
「魔導具屋は魔石と連動させるための魔力が必要となる。魔石屋は魔石を扱う魔力、魔導師は魔石に魔力を付与させるための魔力、魔導具屋は魔石を活用させるための魔力。みんなそれぞれ魔力の質が違う。どいつも他の魔力は持てない。その才がある者しかその力は持てない。だからその仕事に誇りを持て」
ロンさんは私とリラーナに向かってニッと笑った。
「「はい!」」
私とリラーナは顔を見合わせ笑い合った。うん、なんだか嬉しい。頑張れそうな気がする。
「私も修行頑張る! ルーサに負けないわよ!」
リラーナは拳を握り締め嬉しそうな顔で私の前に拳を突き出した。
「私も負けない!」
同じく拳を突き出し、リラーナの拳にタッチした。
リラーナもロンさんの店で魔導具作りに励み、私はというと魔導具屋のなかを見学させてもらい、どんな魔導具なのか、どうやって作るのか、など色々教えてもらった。ウィスさんは他の仕事も残っているから、と、先に帰って行った。
その後満足したリラーナはダラスさんに渡されていた魔導具の修理をロンさんに頼み、二人でロンさんにお礼を言い帰路につく。もうすっかり夕方となり、二人で「お腹空いたね」などと笑いながら歩いていると、道行く人の噂話のような会話が耳に入った。
「そういえば聞いたか?」
「なにが?」
「ローグ伯爵家の話」
「ローグ伯爵家?」
ローグ伯爵家!? 思わずさらに耳を澄ませる。
「あぁ、王都からそんな離れてないところに領地があっただろ?」
「あー、そういえば。その伯爵家がどうしたんだ?」
「なんか伯爵と夫人が行方不明らしいぞ」
その言葉にガバッと振り返る。
「ルーサ? どうしたの?」
どういうこと!? ローグ伯爵と夫人が行方不明!? お父様とお母様が!?
「そ、それ、どういうことですか!?」
思わず見知らぬその人たちに話しかけてしまった。
「ル、ルーサ、どうしたのよ!?」
リラーナが私の肩を掴み止めようとする。しかし私はその噂話が気になって仕方ない。その人たちに詰め寄り聞く。
「ローグ伯爵と夫人が行方不明ってどういうことなんですか!?」
「え、君、誰?」
「あー、ハハ、すみません」
リラーナが謝ってくれるが、私があまりに必死の顔をしていたからか、その人たちは顔を見合わせ怪訝な顔をするものの、続きを話してくれた。
「いや、俺たちもよく知らないけど、伯爵と夫人が行方不明になって、屋敷の使用人たちが混乱しているとあっという間に国から使者が現れたそうだよ。その後、爵位返上となり、使用人たちは職を失ったとかなんとか」
「!?」
なんでそんなことに!? どういうこと!? お父様とお母様はどこへ行ったの!? 爵位返上って……みんなは!? 屋敷のみんなはどうなったの!?
「ルーサ!! ルーサ!! 大丈夫!?」
リラーナが心配そうに私の肩を掴む。そんなリラーナの声がとても遠くに聞こえる。どういうことなの!? 私はどうしたらいいの!? 確かめたい……屋敷に戻りたい……。
泣きそうになるのを必死に耐える。
話してくれたその人たちにお礼を言い、重い足取りで家へと向かう。その間、他にも同じ噂を話す人たちが多くいて、その噂の出所はどこなのか。
どうやら号外のように新聞が配られていたらしい。
「これね、さっきの噂が載ってる」
リラーナが配られているその新聞をもらってくると、そこには少し前まで住んでいたローグ伯爵家の話が書かれていた。
『ローグ伯爵家、爵位返上!?
王都からそう離れていないが緑豊かなローグ伯爵家の当主であるアグナ・ローグ伯爵とその妻であるミラ・ローグ伯爵夫人が行方不明に!!
彼らは数日前に姿を消し、屋敷の使用人たちは行方を知らない。使用人たちが混乱している間に、国から通達あり。伯爵家が爵位返上したという。
使用人たちは伯爵がそんなことをするはずがないと反論したが、すでに決定されたことだと屋敷を追い出され、各々次の職場を求めて離散。
事実上、ローグ伯爵領はなくなり、後任にランガスタ公爵が治めることとなった』
ロンさんはその円にした部品を先程のテーブルのような部品にはめ込み、さらに赤い魔石をはめ込んだ。
その魔石と円にした部品にさらに魔力を込めているようだ。赤い魔石から一瞬激しい光が放たれたかと思うと、円となった部品と魔石は干渉し合うように、お互いが赤く光り、そして落ち着いた。
「よし、これでコンロの完成」
リラーナに教えてもらった家にあるコンロと同じだわ!
「魔導具屋は魔石と連動させるための魔力が必要となる。魔石屋は魔石を扱う魔力、魔導師は魔石に魔力を付与させるための魔力、魔導具屋は魔石を活用させるための魔力。みんなそれぞれ魔力の質が違う。どいつも他の魔力は持てない。その才がある者しかその力は持てない。だからその仕事に誇りを持て」
ロンさんは私とリラーナに向かってニッと笑った。
「「はい!」」
私とリラーナは顔を見合わせ笑い合った。うん、なんだか嬉しい。頑張れそうな気がする。
「私も修行頑張る! ルーサに負けないわよ!」
リラーナは拳を握り締め嬉しそうな顔で私の前に拳を突き出した。
「私も負けない!」
同じく拳を突き出し、リラーナの拳にタッチした。
リラーナもロンさんの店で魔導具作りに励み、私はというと魔導具屋のなかを見学させてもらい、どんな魔導具なのか、どうやって作るのか、など色々教えてもらった。ウィスさんは他の仕事も残っているから、と、先に帰って行った。
その後満足したリラーナはダラスさんに渡されていた魔導具の修理をロンさんに頼み、二人でロンさんにお礼を言い帰路につく。もうすっかり夕方となり、二人で「お腹空いたね」などと笑いながら歩いていると、道行く人の噂話のような会話が耳に入った。
「そういえば聞いたか?」
「なにが?」
「ローグ伯爵家の話」
「ローグ伯爵家?」
ローグ伯爵家!? 思わずさらに耳を澄ませる。
「あぁ、王都からそんな離れてないところに領地があっただろ?」
「あー、そういえば。その伯爵家がどうしたんだ?」
「なんか伯爵と夫人が行方不明らしいぞ」
その言葉にガバッと振り返る。
「ルーサ? どうしたの?」
どういうこと!? ローグ伯爵と夫人が行方不明!? お父様とお母様が!?
「そ、それ、どういうことですか!?」
思わず見知らぬその人たちに話しかけてしまった。
「ル、ルーサ、どうしたのよ!?」
リラーナが私の肩を掴み止めようとする。しかし私はその噂話が気になって仕方ない。その人たちに詰め寄り聞く。
「ローグ伯爵と夫人が行方不明ってどういうことなんですか!?」
「え、君、誰?」
「あー、ハハ、すみません」
リラーナが謝ってくれるが、私があまりに必死の顔をしていたからか、その人たちは顔を見合わせ怪訝な顔をするものの、続きを話してくれた。
「いや、俺たちもよく知らないけど、伯爵と夫人が行方不明になって、屋敷の使用人たちが混乱しているとあっという間に国から使者が現れたそうだよ。その後、爵位返上となり、使用人たちは職を失ったとかなんとか」
「!?」
なんでそんなことに!? どういうこと!? お父様とお母様はどこへ行ったの!? 爵位返上って……みんなは!? 屋敷のみんなはどうなったの!?
「ルーサ!! ルーサ!! 大丈夫!?」
リラーナが心配そうに私の肩を掴む。そんなリラーナの声がとても遠くに聞こえる。どういうことなの!? 私はどうしたらいいの!? 確かめたい……屋敷に戻りたい……。
泣きそうになるのを必死に耐える。
話してくれたその人たちにお礼を言い、重い足取りで家へと向かう。その間、他にも同じ噂を話す人たちが多くいて、その噂の出所はどこなのか。
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彼らは数日前に姿を消し、屋敷の使用人たちは行方を知らない。使用人たちが混乱している間に、国から通達あり。伯爵家が爵位返上したという。
使用人たちは伯爵がそんなことをするはずがないと反論したが、すでに決定されたことだと屋敷を追い出され、各々次の職場を求めて離散。
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