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第2章《修行》編
第18話 声
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「カボナン?」
「あー、ルーサは食べたことないかな? カボナンっていう皮が固くて大きい野菜があるんだけど、中はシャキシャキしていておいしいの! それをね、肉と一緒に包んで焼くのよ」
そう言って見せてくれたカボナンと包むための生地。カボナンは茶色くて大きい。リラーナが切って見せてくれると、中身は黄色かった。
なにもかもが初めてで興味津々に眺める。
リラーナは使う野菜も色々と説明をしてくれながら、どんどん刻んでいく。見よう見まねで野菜を切るのを手伝いつつ、カボナンと肉をなにかの調味料と一緒に混ぜていく。
混ざったものをリラーナが器用に白い生地で包んでいった。私もやってみたが見事なぐちゃぐちゃ……。
「ハハ、すぐ慣れるよ!」
そう言いながらリラーナはどんどんと包んでいく。くぅ、わ、私だっていつか上手くなってやるんだから!
手伝っているのか邪魔をしているのかよく分からない状態になりながらも、なんとか夕食の準備が整いテーブルに並べていくと、ダラスさんが姿を現し、皆で夕食をいただいた。
カボナンと肉包みはフライパンで焼いたのだが、焼き面はカリッとしていて香ばしい。中身の具はジューシーな肉の旨味とカボナンの食感だろうかシャキシャキとするものがあり、とても美味しかった。
野菜スープもたくさんの野菜が旨味となりとても美味しい。
「どれも凄く美味しい!」
「フフ、良かった!」
家族と離れて寂しいけれど、リラーナとこうやって一緒に作る料理は楽しい。ちょっぴりお母様を思い出して寂しくもなるけれど、私はきっと大丈夫。頑張れるわ。そう自分に言い聞かせるように、この日の夕食を楽しんだ。
「明日は朝からウィスさんの作業場かぁ、楽しみ」
魔力の付与なんてものも見たことがない。だから楽しみで仕方がない。ウキウキしながらベッドへと潜り込むと……
『…………い』
「ん?」
なにか聞こえたような……なんだろう。
周りをキョロキョロと見回してもなにもない。気のせいかな。再びベッドに潜り込む。
『……おい!』
「え!?」
今度ははっきりと聞こえた!! な、なに!? 人の声だったような……こ、怖い……なんなの!
『くそっ、……だけか……』
「??」
あまりの怖さにガバッと飛び起き、部屋を飛び出るとリラーナの部屋に向かった。
「リラーナ!! リラーナ!!」
リラーナの部屋の扉をドンドンと思い切り叩く。
部屋のなかからは「ルーサ?」という声が聞こえ、扉が開いた。
「どうしたの、ルーサ? 眠れないの?」
寝る準備をしていたのだろうリラーナに、扉が開いた瞬間抱き付いた。
「リラーナ!! なんか変な声が!!」
「変な声?」
「う、うん、なんか男の人の声のような……」
怪訝な顔になったリラーナは私の肩を抱くと、ダラスさんの部屋の扉を叩き呼んだ。
「どうした?」
ダラスさんは部屋でまだなにかしていたのだろう、仕事着のままだった。
「なんかルーサの部屋で男の人の声がしたって」
ダラスさんは眉間に皺を寄せ、私の部屋を見に行った。
しばらくしてダラスさんは戻ってきたが、頭をガシガシと掻きながら言う。
「一応あちこち見てみたがなにもないぞ?」
「そうなの?」
「あぁ」
リラーナは「うーん」と言いながら私の顔を見た。
「な、なにもないなら良いの。ごめんなさい、私の勘違いかも」
「怖いなら一緒に寝る?」
リラーナがニッと笑った。
「良いの!?」
「アハハ、良いよ! ちょっと狭いけど我慢してよね」
「うん、気にしない!」
ダラスさんはポンと私の頭を撫でると自分の部屋へと戻って行った。
私とリラーナはリラーナの部屋でくっつきながら一緒に眠った。
それにしても一体なんだったのか……気のせい……なのかな。少しの不安を覚えたが、精製魔石の練習で疲れすぎていたのか、リラーナにくっついたままあっという間に眠っていたのだった。
翌朝、目覚めたときにはすでにリラーナはおらず、慌てて着替えて一階へと降りていった。
「あ、ルーサ、おはよう。眠れた?」
リラーナは朝食の準備をしながらこちらを見た。
「リラーナ、おはよう。うん、リラーナのおかげでぐっすり! 遅くなってごめんなさい、手伝うわ」
「ゆっくりでいいよ。顔を洗っておいで」
リラーナはひらひらと手を振り笑った。
リラーナに促されるままに、顔を洗い髪の毛を整えてから手伝いに戻る。朝はパンと果物と卵料理が並んだ。
「ルーサ、食べ終わったら早速ウィスさんのところに行くわよ!」
「ついでにこれも持っていけ」
私が返事をするよりも先に、ダラスさんがリラーナになにかを渡した。
「なにこれ?」
「どうせロンの店にも行くんだろ? ロンに渡してきてくれ」
そう言って渡したものはなにかの魔導具のようだ。
「ロンに修理を頼んできてくれ」
「ふーん、分かった」
その魔導具は手に乗るくらいの大きさのものだった。なんの魔導具なんだろう。
リラーナはいつものことのように、特に聞き返すでもなくダラスさんからそれを受け取ると、そのまま朝食の後片付けに向かった。私もそれを手伝い、二人で片付け終わると、ダラスさんに店番を頼み、いざウィスさんの作業場まで出発!
「あー、ルーサは食べたことないかな? カボナンっていう皮が固くて大きい野菜があるんだけど、中はシャキシャキしていておいしいの! それをね、肉と一緒に包んで焼くのよ」
そう言って見せてくれたカボナンと包むための生地。カボナンは茶色くて大きい。リラーナが切って見せてくれると、中身は黄色かった。
なにもかもが初めてで興味津々に眺める。
リラーナは使う野菜も色々と説明をしてくれながら、どんどん刻んでいく。見よう見まねで野菜を切るのを手伝いつつ、カボナンと肉をなにかの調味料と一緒に混ぜていく。
混ざったものをリラーナが器用に白い生地で包んでいった。私もやってみたが見事なぐちゃぐちゃ……。
「ハハ、すぐ慣れるよ!」
そう言いながらリラーナはどんどんと包んでいく。くぅ、わ、私だっていつか上手くなってやるんだから!
手伝っているのか邪魔をしているのかよく分からない状態になりながらも、なんとか夕食の準備が整いテーブルに並べていくと、ダラスさんが姿を現し、皆で夕食をいただいた。
カボナンと肉包みはフライパンで焼いたのだが、焼き面はカリッとしていて香ばしい。中身の具はジューシーな肉の旨味とカボナンの食感だろうかシャキシャキとするものがあり、とても美味しかった。
野菜スープもたくさんの野菜が旨味となりとても美味しい。
「どれも凄く美味しい!」
「フフ、良かった!」
家族と離れて寂しいけれど、リラーナとこうやって一緒に作る料理は楽しい。ちょっぴりお母様を思い出して寂しくもなるけれど、私はきっと大丈夫。頑張れるわ。そう自分に言い聞かせるように、この日の夕食を楽しんだ。
「明日は朝からウィスさんの作業場かぁ、楽しみ」
魔力の付与なんてものも見たことがない。だから楽しみで仕方がない。ウキウキしながらベッドへと潜り込むと……
『…………い』
「ん?」
なにか聞こえたような……なんだろう。
周りをキョロキョロと見回してもなにもない。気のせいかな。再びベッドに潜り込む。
『……おい!』
「え!?」
今度ははっきりと聞こえた!! な、なに!? 人の声だったような……こ、怖い……なんなの!
『くそっ、……だけか……』
「??」
あまりの怖さにガバッと飛び起き、部屋を飛び出るとリラーナの部屋に向かった。
「リラーナ!! リラーナ!!」
リラーナの部屋の扉をドンドンと思い切り叩く。
部屋のなかからは「ルーサ?」という声が聞こえ、扉が開いた。
「どうしたの、ルーサ? 眠れないの?」
寝る準備をしていたのだろうリラーナに、扉が開いた瞬間抱き付いた。
「リラーナ!! なんか変な声が!!」
「変な声?」
「う、うん、なんか男の人の声のような……」
怪訝な顔になったリラーナは私の肩を抱くと、ダラスさんの部屋の扉を叩き呼んだ。
「どうした?」
ダラスさんは部屋でまだなにかしていたのだろう、仕事着のままだった。
「なんかルーサの部屋で男の人の声がしたって」
ダラスさんは眉間に皺を寄せ、私の部屋を見に行った。
しばらくしてダラスさんは戻ってきたが、頭をガシガシと掻きながら言う。
「一応あちこち見てみたがなにもないぞ?」
「そうなの?」
「あぁ」
リラーナは「うーん」と言いながら私の顔を見た。
「な、なにもないなら良いの。ごめんなさい、私の勘違いかも」
「怖いなら一緒に寝る?」
リラーナがニッと笑った。
「良いの!?」
「アハハ、良いよ! ちょっと狭いけど我慢してよね」
「うん、気にしない!」
ダラスさんはポンと私の頭を撫でると自分の部屋へと戻って行った。
私とリラーナはリラーナの部屋でくっつきながら一緒に眠った。
それにしても一体なんだったのか……気のせい……なのかな。少しの不安を覚えたが、精製魔石の練習で疲れすぎていたのか、リラーナにくっついたままあっという間に眠っていたのだった。
翌朝、目覚めたときにはすでにリラーナはおらず、慌てて着替えて一階へと降りていった。
「あ、ルーサ、おはよう。眠れた?」
リラーナは朝食の準備をしながらこちらを見た。
「リラーナ、おはよう。うん、リラーナのおかげでぐっすり! 遅くなってごめんなさい、手伝うわ」
「ゆっくりでいいよ。顔を洗っておいで」
リラーナはひらひらと手を振り笑った。
リラーナに促されるままに、顔を洗い髪の毛を整えてから手伝いに戻る。朝はパンと果物と卵料理が並んだ。
「ルーサ、食べ終わったら早速ウィスさんのところに行くわよ!」
「ついでにこれも持っていけ」
私が返事をするよりも先に、ダラスさんがリラーナになにかを渡した。
「なにこれ?」
「どうせロンの店にも行くんだろ? ロンに渡してきてくれ」
そう言って渡したものはなにかの魔導具のようだ。
「ロンに修理を頼んできてくれ」
「ふーん、分かった」
その魔導具は手に乗るくらいの大きさのものだった。なんの魔導具なんだろう。
リラーナはいつものことのように、特に聞き返すでもなくダラスさんからそれを受け取ると、そのまま朝食の後片付けに向かった。私もそれを手伝い、二人で片付け終わると、ダラスさんに店番を頼み、いざウィスさんの作業場まで出発!
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