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カナデ編
第二十話 一哉さんと洸樹さんと希実夏さん
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「えっと、あの、洸ちゃんとは洸樹さんのことですか?」
「うん、そうそう! 私ね、蒼汰とも幼馴染だけど、洸ちゃんともご近所さんだったから幼馴染でね」
希実夏さんがにこにこ答えてくれた。
「この前みんなで洸ちゃんのお店に行ったって直之から聞いてね、久しぶりに私も洸ちゃんに会いたいな~、と思って!」
なるほど、以前みんなで洸樹さんのお店に行ったときのことね。
「んー、じゃあみんなでまた洸ちゃんのお店で晩ご飯でも食べる?」
蒼汰さんが希実夏さんに向かって提案した。
みんなで……、ということは一哉さんも……、前回のあのギクシャクしていたときから恐らく洸樹さんと一哉さんは会っていないのでは……、少し気になり一哉さんをチラリと見た。
「あー、俺はやめとくわ」
一哉さんは少し考えた後、頭をガシガシと掻きながら言った。
やはり洸樹さんのことを気にしているのかしら。
「え、真崎さん行かないの? 今日の話とか今後の話もしようかと思ったんだけど」
蒼汰さんが不思議そうな顔で聞く。
「あー、すまん。また連絡してくれ」
「んー、じゃあ仕方ないね、そういえば水嶌さんとみんなで連絡先交換しとこうか」
蒼汰さんがスマホを取り出し、個別の登録とみんなでのグループに登録してくれる。そこに私も参加。記憶にはあるけれど「私」としては初めての経験でドキドキするわね。
「よし、登録完了。じゃあまた真崎さんには連絡するね」
「おう、よろしく」
皆さんが登録のためにスマホを触っている間、一哉さんにこっそりと聞いた。
「あの、洸樹さんのお店だから行かないのですか?」
「ん? 何か洸樹から聞いたか?」
「え、いえ、そういう訳では! この前何だかよそよそしい感じだったので!」
しまった、私が話を聞いたというのは、一哉さんには不愉快かもしれないのに。洸樹さんのイメージを悪くしてしまう! 仲直りしてもらいたいのに逆効果になってしまうわ! ど、どうしよう……。
焦りつつも、顔に出すと話を聞いたことがバレてしまいそうなので、必死に冷静を保つ。
「あー、あのときな、うん、まあ何というか、あいつが俺に会いたくなさそうだな、と思ってな」
「え! そ、そんなことは!」
一哉さんはその心配をしていたのね。で、でも勝手には言えないし、どうしよう……。
「……ないと思うのですけど」
うぅ、何だか物凄く中途半端な物言いになってしまった。あぁ、どう言ったら良いのかしら、私ってこんなときに上手く言えない……情けない。
「フッ、奏が気にするな。まあ十年会ってないんだしな、そりゃ今さら別にまた仲良くしようなんて思わないだろ」
そう言いながら一哉さんは頭を撫でた。
うぅ、違うんです! 違うんですよ! 言いたい! 言いたいけれど、言えない……。あぁ。
「さて、じゃあ水嶌さん行こうか。真崎さんはじゃあまた」
「あぁ」
あぁ、何も言えなかった……情けないです……。
真崎さんがひらひらと手を振り去って行く後ろ姿を眺めつつがっくり。
真崎さんを除いた四人で洸樹さんのお店へ向かう。
その間も蒼汰さんはずっと白皇様の話に夢中だった。それを横で頑張って聞いていたけれど、希実夏さんと直之さんはすっかり興味がないようで他の話をしていた。
洸樹さんのお店に到着し、店へと入るといつものようにカウンターから洸樹さんが「いらっしゃい」と声を掛ける。
「あら? 希実夏ちゃん?」
「洸ちゃん! 久しぶりー!!」
希実夏さんが洸樹さんの元まで笑顔で近付いて行った。
「本当に久しぶりね! いつぶりかしら? 前会ったのは小学生くらい? すっかりお姉さんになっちゃって」
あらやだ、みたいな仕草で洸樹さんが希実夏さんに話している。
「もう! そんな子供じゃなかったわよ! 高校入学のときに家の前で会ったじゃない!」
「あらそうだったかしら」
希実夏さんは「もう!」と言いながら洸樹さんを小突いている。洸樹さんはフフッと笑いながらとても嬉しそう。
「洸ちゃんて高校卒業したらすぐに実家を出ちゃったから、僕も佐伯も家は近所だけどほとんど会うことはなかったんだよね。まあ僕は避けてたんだけど、ハハ」
蒼汰さんが二人を眺めながら苦笑する。
とりあえず蒼汰さんと直之さんと三人で先に席に着く。希実夏さんは久しぶりの会話を楽しんでいるようだ。
「水嶌さんはこの後バイトなんだよね。なら早く食べないとね」
そう、今日は久しぶりに夜までバイトに入っているのだ。
「ちょっと佐伯、注文するよ」
「あー、ごめんごめん」
希実夏さんはとても楽しそうなまま席に着いた。洸樹さんもそれに続き注文を取る。
洸樹さんは少しキョロっと周りを見回し、注文をメモしてからカウンターへと戻った。
「さてと、今日の収穫は何と言っても白皇様だね! あれは絶対異世界から来たんだよ!」
「うーん、まああの角はちょっと奇妙だったよなぁ」
珍しく直之さんが蒼汰さんの意見を肯定しているわ。いつも否定的な感じだったのに。まあ確かにあの角の生えた生き物の絵を見てしまうと、信じてしまうかもしれない。
あれは一体何の生き物だったのかしら。本当に異世界から来たのかしら。
「異世界から来たのだとしたら、その方法と同じ方法で逆にこちらの人間が異世界に渡ったのかもしれない!」
「それが行方不明事件の真相ってこと?」
希実夏さんもあの生き物のおかげで少しは信じるようになってきたようだ。
「それはまだ分からないけど、調べてみる価値はあるだろうね。異世界へ行き来出来る何かがあるのか、あったにしてもその方法だよね。人為的なのものなのか、自然現象的なものなのか」
確かに行き来出来るにしてもそれが人為的なのか自然的なのか、それが大いに問題かもしれない。
「どちらにしても、本当に異世界なんかに行き来出来る何かがあったとしたら大問題じゃない?」
希実夏さんが少し真面目に言った。うん、それはそうよね、大問題だと思う。
本当にそんなことがあるのかしら。
「うん、まあ大問題だよね。でも基本的に行方不明事件は何年かに一人とかのペースで、しかもそれが全て異世界に関係あるとも思えない。だから原因不明なままなんだろうな、と思う」
「白皇様も何百年と昔の話ですもんね」
私がそう言うと、蒼汰さんが深い溜め息を吐いた。
「そうなんだよねぇ、何百年も前のこと、しかもあんな特殊な神社のことだから、調べても何か出てくるかどうか……」
ガックリとテーブルに突っ伏した蒼汰さん。そこに洸樹さんが注文した料理を持って来た。
「蒼ちゃんは、何をそんなに項垂れてるの?」
「あー、洸ちゃんは白皇神社知ってる?」
「ん? 白皇神社?」
「そう、僕らの実家近所の白皇稲荷神社」
料理を置いた洸樹さんは少し考え込んで何か思い出したのか、「あぁ」と声を上げた。
「普段からあまり目立たないあの神社ね?」
「知ってるんだ!」
蒼汰さんはガバッと飛び起き、洸樹さんを見上げた。
希実夏さんも私も洸樹さんを見詰める。ちなみに直之さんはすでに一人で食べ始めていました。
「な、何!? そんな食い付くとこ!? そんな見詰められたら照れちゃうんですけど!」
洸樹さんが「いやん」と頬に手を当て身をよじる。直之さんから「うぐっ」と変な声が聞こえました……。
「洸ちゃんは昔からあの神社知ってるの?」
希実夏さんはそんな直之さんを無視しながら洸樹さんに聞く。
「え? 知ってるというか、何かあの神社って変な噂がよくあるわよね」
「え?」
****************
後書きです
本編リディア編の登場人物紹介にイラストを追加しました!
さらにリディア編のキャラ初登場シーンにも一人ずつイラストを入れましたので、キャラをイメージしながら読んでいただけると楽しいかもしれません(^O^)
「うん、そうそう! 私ね、蒼汰とも幼馴染だけど、洸ちゃんともご近所さんだったから幼馴染でね」
希実夏さんがにこにこ答えてくれた。
「この前みんなで洸ちゃんのお店に行ったって直之から聞いてね、久しぶりに私も洸ちゃんに会いたいな~、と思って!」
なるほど、以前みんなで洸樹さんのお店に行ったときのことね。
「んー、じゃあみんなでまた洸ちゃんのお店で晩ご飯でも食べる?」
蒼汰さんが希実夏さんに向かって提案した。
みんなで……、ということは一哉さんも……、前回のあのギクシャクしていたときから恐らく洸樹さんと一哉さんは会っていないのでは……、少し気になり一哉さんをチラリと見た。
「あー、俺はやめとくわ」
一哉さんは少し考えた後、頭をガシガシと掻きながら言った。
やはり洸樹さんのことを気にしているのかしら。
「え、真崎さん行かないの? 今日の話とか今後の話もしようかと思ったんだけど」
蒼汰さんが不思議そうな顔で聞く。
「あー、すまん。また連絡してくれ」
「んー、じゃあ仕方ないね、そういえば水嶌さんとみんなで連絡先交換しとこうか」
蒼汰さんがスマホを取り出し、個別の登録とみんなでのグループに登録してくれる。そこに私も参加。記憶にはあるけれど「私」としては初めての経験でドキドキするわね。
「よし、登録完了。じゃあまた真崎さんには連絡するね」
「おう、よろしく」
皆さんが登録のためにスマホを触っている間、一哉さんにこっそりと聞いた。
「あの、洸樹さんのお店だから行かないのですか?」
「ん? 何か洸樹から聞いたか?」
「え、いえ、そういう訳では! この前何だかよそよそしい感じだったので!」
しまった、私が話を聞いたというのは、一哉さんには不愉快かもしれないのに。洸樹さんのイメージを悪くしてしまう! 仲直りしてもらいたいのに逆効果になってしまうわ! ど、どうしよう……。
焦りつつも、顔に出すと話を聞いたことがバレてしまいそうなので、必死に冷静を保つ。
「あー、あのときな、うん、まあ何というか、あいつが俺に会いたくなさそうだな、と思ってな」
「え! そ、そんなことは!」
一哉さんはその心配をしていたのね。で、でも勝手には言えないし、どうしよう……。
「……ないと思うのですけど」
うぅ、何だか物凄く中途半端な物言いになってしまった。あぁ、どう言ったら良いのかしら、私ってこんなときに上手く言えない……情けない。
「フッ、奏が気にするな。まあ十年会ってないんだしな、そりゃ今さら別にまた仲良くしようなんて思わないだろ」
そう言いながら一哉さんは頭を撫でた。
うぅ、違うんです! 違うんですよ! 言いたい! 言いたいけれど、言えない……。あぁ。
「さて、じゃあ水嶌さん行こうか。真崎さんはじゃあまた」
「あぁ」
あぁ、何も言えなかった……情けないです……。
真崎さんがひらひらと手を振り去って行く後ろ姿を眺めつつがっくり。
真崎さんを除いた四人で洸樹さんのお店へ向かう。
その間も蒼汰さんはずっと白皇様の話に夢中だった。それを横で頑張って聞いていたけれど、希実夏さんと直之さんはすっかり興味がないようで他の話をしていた。
洸樹さんのお店に到着し、店へと入るといつものようにカウンターから洸樹さんが「いらっしゃい」と声を掛ける。
「あら? 希実夏ちゃん?」
「洸ちゃん! 久しぶりー!!」
希実夏さんが洸樹さんの元まで笑顔で近付いて行った。
「本当に久しぶりね! いつぶりかしら? 前会ったのは小学生くらい? すっかりお姉さんになっちゃって」
あらやだ、みたいな仕草で洸樹さんが希実夏さんに話している。
「もう! そんな子供じゃなかったわよ! 高校入学のときに家の前で会ったじゃない!」
「あらそうだったかしら」
希実夏さんは「もう!」と言いながら洸樹さんを小突いている。洸樹さんはフフッと笑いながらとても嬉しそう。
「洸ちゃんて高校卒業したらすぐに実家を出ちゃったから、僕も佐伯も家は近所だけどほとんど会うことはなかったんだよね。まあ僕は避けてたんだけど、ハハ」
蒼汰さんが二人を眺めながら苦笑する。
とりあえず蒼汰さんと直之さんと三人で先に席に着く。希実夏さんは久しぶりの会話を楽しんでいるようだ。
「水嶌さんはこの後バイトなんだよね。なら早く食べないとね」
そう、今日は久しぶりに夜までバイトに入っているのだ。
「ちょっと佐伯、注文するよ」
「あー、ごめんごめん」
希実夏さんはとても楽しそうなまま席に着いた。洸樹さんもそれに続き注文を取る。
洸樹さんは少しキョロっと周りを見回し、注文をメモしてからカウンターへと戻った。
「さてと、今日の収穫は何と言っても白皇様だね! あれは絶対異世界から来たんだよ!」
「うーん、まああの角はちょっと奇妙だったよなぁ」
珍しく直之さんが蒼汰さんの意見を肯定しているわ。いつも否定的な感じだったのに。まあ確かにあの角の生えた生き物の絵を見てしまうと、信じてしまうかもしれない。
あれは一体何の生き物だったのかしら。本当に異世界から来たのかしら。
「異世界から来たのだとしたら、その方法と同じ方法で逆にこちらの人間が異世界に渡ったのかもしれない!」
「それが行方不明事件の真相ってこと?」
希実夏さんもあの生き物のおかげで少しは信じるようになってきたようだ。
「それはまだ分からないけど、調べてみる価値はあるだろうね。異世界へ行き来出来る何かがあるのか、あったにしてもその方法だよね。人為的なのものなのか、自然現象的なものなのか」
確かに行き来出来るにしてもそれが人為的なのか自然的なのか、それが大いに問題かもしれない。
「どちらにしても、本当に異世界なんかに行き来出来る何かがあったとしたら大問題じゃない?」
希実夏さんが少し真面目に言った。うん、それはそうよね、大問題だと思う。
本当にそんなことがあるのかしら。
「うん、まあ大問題だよね。でも基本的に行方不明事件は何年かに一人とかのペースで、しかもそれが全て異世界に関係あるとも思えない。だから原因不明なままなんだろうな、と思う」
「白皇様も何百年と昔の話ですもんね」
私がそう言うと、蒼汰さんが深い溜め息を吐いた。
「そうなんだよねぇ、何百年も前のこと、しかもあんな特殊な神社のことだから、調べても何か出てくるかどうか……」
ガックリとテーブルに突っ伏した蒼汰さん。そこに洸樹さんが注文した料理を持って来た。
「蒼ちゃんは、何をそんなに項垂れてるの?」
「あー、洸ちゃんは白皇神社知ってる?」
「ん? 白皇神社?」
「そう、僕らの実家近所の白皇稲荷神社」
料理を置いた洸樹さんは少し考え込んで何か思い出したのか、「あぁ」と声を上げた。
「普段からあまり目立たないあの神社ね?」
「知ってるんだ!」
蒼汰さんはガバッと飛び起き、洸樹さんを見上げた。
希実夏さんも私も洸樹さんを見詰める。ちなみに直之さんはすでに一人で食べ始めていました。
「な、何!? そんな食い付くとこ!? そんな見詰められたら照れちゃうんですけど!」
洸樹さんが「いやん」と頬に手を当て身をよじる。直之さんから「うぐっ」と変な声が聞こえました……。
「洸ちゃんは昔からあの神社知ってるの?」
希実夏さんはそんな直之さんを無視しながら洸樹さんに聞く。
「え? 知ってるというか、何かあの神社って変な噂がよくあるわよね」
「え?」
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