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本編 リディア編
第五十二話 料理は見た目も大事!?
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「と、とりあえずお前ら昼飯を食うんだろ!?」
ラニールさんは周りでニヤニヤしていたキース団長始め、騎士たちに怒鳴った。
そうだよ、お昼をいただきに来たのよ。
「私たちも一緒にいただいて良いですか?」
「ん? あ、あぁ」
ラニールさんは赤い顔のまま、そのままになった肉の調理を再開した。
急に振り返ったのは、後ろの棚から違う調味料を取ろうとしたのね。
邪魔をして本当に申し訳ない。
また邪魔になっては申し訳ないし、大人しく控えの間で待つことにした。
「リディア様、大丈夫でしたか?」
「え?」
キース団長が苦笑しながら聞いて来た。
「何がですか?」
「いや、その、大の男を支えるにはキツかったでしょう? お怪我とかないですか?」
けしかけた本人としてばつが悪いのか、少し遠慮がちに言う。
「そうですね、男の方を支えるのは大変でしたし……、初めて異性と抱き合ってしまいましたし……、シェスレイト殿下の婚約者なのに、何てはしたないことをしてしまったのかと……」
ショックを受けた、というように落ち込んで見せた。
「あ、あ、あの! 本当にすいませんでした!」
キース団長はおろおろし出した。少し可哀想かしら。でもこれでラニールさんがまたからかわれるのも可哀想だしな。
しかしあまりのおろおろした姿に団長としての威厳がなくなりそうだな、と心配になるので、この辺でやめておこう。
「フフ、冗談です。大丈夫ですよ。でもあまりラニールさんをからかうのはやめてあげてくださいね」
「ハ、ハハ。そうですね、やり過ぎました」
キース団長は苦笑しながら頭を掻いた。
そうこう話している内に控えの間に料理が運ばれて来た。
良い匂いが部屋中に広がる。
「うーん、良い匂い! ラニールさん、今日の料理は何ですか?」
他の料理人たちと共に料理を運んで来たラニールさんに聞いた。
「あー、今日は肉だな」
「それはさっき調理していたのを見てたから知ってます」
肉だな、って。それ料理の説明じゃないし。
しかしラニールさんはブッと吹き出し楽しそうだ。さっき散々からかわれて申し訳なかったけど、楽しそうだから良いか。
「ハハ、悪い。肉を揚げたやつだ。後はダッコルって野菜の焼いたやつだな。それとパン、スープ」
「ダッコル……」
「あー、リディアは食べたことないかもな」
そう言いながらラニールさんは苦笑した。
「ダッコルは安いので平民がよく食べるのですよ」
マニカが後ろから説明してくれた。
「へー、そうなんだ。食べてみたい!」
勢い良く言うと、周りにいる全員に笑われた。うーん、何かいつも笑われるわね。
「リディア様、では我々と一緒に食べましょう」
キース団長が笑いながら言う。
前回ここでラニールさんの料理をいただいた時とは違い、今度はちゃんと自分で取りに行った。
だって、騎士たちに先にどうぞ、と言うとキース団長が気を遣って取りに行ってくれるんだもの。
それは申し訳ないから、今度は自分で!
騎士たちの屈強な身体に囲まれながら、私を始め、イルもマニカ、オルガも同様に並んで料理を取り席に着いた。イルは騎士たちに囲まれ少し怯えてたけど……。
イルは私の横に、マニカとオルガ、そしてキース団長が向かいに座った。
料理に目をやると、今日の料理もまた美味しそう!
匂いもそうなんだけど、ラニールさんて意外と繊細? というか、料理の盛り付けや見た目が綺麗なんだよね。
うん、料理は見た目も大事! 美味しそうに見えるもの!
「いただきます!」
騎士たちはすでにワイワイとしながら食べ始めていた。
肉の揚げたもの……、肉の周りに衣のようなものが付いていてサクサクとしている。サクサクの中からはジューシーな肉が!
肉自体に味がしっかりと付いているのは、あの邪魔してしまったときに擦り込んでいた調味料かな?
周りのサクサクは何だろう、揚げたとは思えないくらいあっさりしている。
「美味しいぃ……、この衣は何を使ってるんですか?」
「ん? あぁ、それは…………秘密だ」
「えぇ!?」
「アッハッハ、冗談だ。クイという野菜を刻んだものを衣として使ってるだけだ」
ラニールさんがここで冗談を言うとは……。本気で声を上げてしまった。
周りの皆も驚いてるし。
それにしても「クイ」また聞いたことのない野菜。知らない野菜がたくさんあるなぁ。
まあ「リディア」はお嬢様だものね……、知らなくて当然よね。
まじまじと肉の衣を見詰めた。揚げ物なのにあっさりしている……。
「これ、お菓子に使えませんか?」
「ん? クイをか?」
「えぇ」
ラニールさんは少し考え……
「あぁ、いけるかもしれないな」
ラニールさんの言葉に嬉しくなった。
ダッコルも美味しそうだ。大きく丸い野菜なのかしら? 分厚く切られたダッコルをナイフとフォークでステーキを切るように切って食べる。
バターソテーされたダッコルは良い匂いが漂い、バターとダッコルの味だろうか、甘みと塩気が程よくとろとろの口当たりだった。
「これも美味しいー!」
平民しか食べないような言い方だったけど、十分美味しいんだから貴族たちも食べたら良いのに。
「ラニールさんが作るものは貴族の人たちにも食べてもらいたいですね」
「ん? 何だ急に?」
「だって、こんなに美味しいのに貴族の人たちは食べないなんてもったいない!」
「ハハ、こんなのを美味いなんて言う貴族はリディアくらいじゃないか?」
ラニールさんは笑った。
「僕も……美味しいと思う……」
イルが急に発言した。
「お? おぉ、イル……グスト殿下でしたっけ? ありがとうございます」
ラニールさんが褒められたことに戸惑っていた。
イルも自分から発言するなんて、余程美味しかったんだなぁ。
「だよね! ラニールさんの料理、美味しいよね!」
イルはコクンと頷いた。可愛い……。
ラニールさんも意外な人物に褒められたから、少し照れ臭そうにしている。
オルガなんてあっという間に食べ終わっているし。
ある程度食べ終わると、ラニールさんは、そうだ、と呟き厨房へ戻った。
そしてすぐに戻って来たかと思うと、硝子の皿に乗ったものを目の前に置いた。
「リディアだけに特別デザートだ」
「?」
その言葉を聞いたキース団長始め、騎士たちがガタガタ! と急に立ち上がり、全員がこちらを見た。
ラニールさんはそれに気付き慌てて言う。
「ち、違う!! そういう意味じゃない!!」
そういう意味ってどういう意味??
「??」
「いや、だから! お菓子作りの試作だ!」
「あぁ」
キース団長や騎士たちは「なんだ……」とばかりに、息を吐き、苦笑しながら座った。
目の前に置かれた皿を見ると、宝石のように透き通りキラキラした水色のぷるんとしたものだった。その中に水色の花が入った、とても綺麗なお菓子だった。
「これ、本当にお菓子ですか? お菓子に見えない……綺麗……」
皿を持ち上げ思わず見惚れた。
「本当に綺麗だな。これ本当にお前が作ったのか? こんな繊細そうなもの」
「どういう意味だ!?」
キース団長はどうやらラニールさんが作ったとは思えないらしい。
ラニールさんはキース団長を睨んでいるが、キース団長はそのお菓子に釘付けだ。
気付けば周りに騎士たちが集まって来ていた。
「これはゼリーですか?」
「あぁ」
「この入っているお花は?」
「ルベアというコランよりは劣るが、甘みの強い花だ。食用として使えるから、オーブンで焼いてゼリーに入れてみた」
「へぇぇえ!! ラニールさんてお菓子の知識まであって本当に凄いですね!」
ラニールさんが照れた。フフ、ラニールさんも可愛いな。
「でも綺麗で食べるのもったいない……」
「フッ、いや、食べてくれないと感想が聞けない」
「そうなんですけど……、もったいない~!!」
まじまじと見詰め、本当に綺麗でうっとりしてしまう。
「また作ってやるから」
「はぁい」
若干渋々スプーンをそのゼリーに差し込んだ。
「あぁ……」
崩れちゃった……。ラニールさんが笑いを堪えている……。
一口食べてみると、思ったよりは甘みは少なくあっさりとしたゼリーだった。しかしルベアの香りだろうか、爽やかな香りが鼻を抜ける。
「うん、爽やか! 美味しい!!」
「そうか、なら良かった。しかし……」
「?」
「今求めているお菓子作りには向かないかもな」
ラニールさんは周りでニヤニヤしていたキース団長始め、騎士たちに怒鳴った。
そうだよ、お昼をいただきに来たのよ。
「私たちも一緒にいただいて良いですか?」
「ん? あ、あぁ」
ラニールさんは赤い顔のまま、そのままになった肉の調理を再開した。
急に振り返ったのは、後ろの棚から違う調味料を取ろうとしたのね。
邪魔をして本当に申し訳ない。
また邪魔になっては申し訳ないし、大人しく控えの間で待つことにした。
「リディア様、大丈夫でしたか?」
「え?」
キース団長が苦笑しながら聞いて来た。
「何がですか?」
「いや、その、大の男を支えるにはキツかったでしょう? お怪我とかないですか?」
けしかけた本人としてばつが悪いのか、少し遠慮がちに言う。
「そうですね、男の方を支えるのは大変でしたし……、初めて異性と抱き合ってしまいましたし……、シェスレイト殿下の婚約者なのに、何てはしたないことをしてしまったのかと……」
ショックを受けた、というように落ち込んで見せた。
「あ、あ、あの! 本当にすいませんでした!」
キース団長はおろおろし出した。少し可哀想かしら。でもこれでラニールさんがまたからかわれるのも可哀想だしな。
しかしあまりのおろおろした姿に団長としての威厳がなくなりそうだな、と心配になるので、この辺でやめておこう。
「フフ、冗談です。大丈夫ですよ。でもあまりラニールさんをからかうのはやめてあげてくださいね」
「ハ、ハハ。そうですね、やり過ぎました」
キース団長は苦笑しながら頭を掻いた。
そうこう話している内に控えの間に料理が運ばれて来た。
良い匂いが部屋中に広がる。
「うーん、良い匂い! ラニールさん、今日の料理は何ですか?」
他の料理人たちと共に料理を運んで来たラニールさんに聞いた。
「あー、今日は肉だな」
「それはさっき調理していたのを見てたから知ってます」
肉だな、って。それ料理の説明じゃないし。
しかしラニールさんはブッと吹き出し楽しそうだ。さっき散々からかわれて申し訳なかったけど、楽しそうだから良いか。
「ハハ、悪い。肉を揚げたやつだ。後はダッコルって野菜の焼いたやつだな。それとパン、スープ」
「ダッコル……」
「あー、リディアは食べたことないかもな」
そう言いながらラニールさんは苦笑した。
「ダッコルは安いので平民がよく食べるのですよ」
マニカが後ろから説明してくれた。
「へー、そうなんだ。食べてみたい!」
勢い良く言うと、周りにいる全員に笑われた。うーん、何かいつも笑われるわね。
「リディア様、では我々と一緒に食べましょう」
キース団長が笑いながら言う。
前回ここでラニールさんの料理をいただいた時とは違い、今度はちゃんと自分で取りに行った。
だって、騎士たちに先にどうぞ、と言うとキース団長が気を遣って取りに行ってくれるんだもの。
それは申し訳ないから、今度は自分で!
騎士たちの屈強な身体に囲まれながら、私を始め、イルもマニカ、オルガも同様に並んで料理を取り席に着いた。イルは騎士たちに囲まれ少し怯えてたけど……。
イルは私の横に、マニカとオルガ、そしてキース団長が向かいに座った。
料理に目をやると、今日の料理もまた美味しそう!
匂いもそうなんだけど、ラニールさんて意外と繊細? というか、料理の盛り付けや見た目が綺麗なんだよね。
うん、料理は見た目も大事! 美味しそうに見えるもの!
「いただきます!」
騎士たちはすでにワイワイとしながら食べ始めていた。
肉の揚げたもの……、肉の周りに衣のようなものが付いていてサクサクとしている。サクサクの中からはジューシーな肉が!
肉自体に味がしっかりと付いているのは、あの邪魔してしまったときに擦り込んでいた調味料かな?
周りのサクサクは何だろう、揚げたとは思えないくらいあっさりしている。
「美味しいぃ……、この衣は何を使ってるんですか?」
「ん? あぁ、それは…………秘密だ」
「えぇ!?」
「アッハッハ、冗談だ。クイという野菜を刻んだものを衣として使ってるだけだ」
ラニールさんがここで冗談を言うとは……。本気で声を上げてしまった。
周りの皆も驚いてるし。
それにしても「クイ」また聞いたことのない野菜。知らない野菜がたくさんあるなぁ。
まあ「リディア」はお嬢様だものね……、知らなくて当然よね。
まじまじと肉の衣を見詰めた。揚げ物なのにあっさりしている……。
「これ、お菓子に使えませんか?」
「ん? クイをか?」
「えぇ」
ラニールさんは少し考え……
「あぁ、いけるかもしれないな」
ラニールさんの言葉に嬉しくなった。
ダッコルも美味しそうだ。大きく丸い野菜なのかしら? 分厚く切られたダッコルをナイフとフォークでステーキを切るように切って食べる。
バターソテーされたダッコルは良い匂いが漂い、バターとダッコルの味だろうか、甘みと塩気が程よくとろとろの口当たりだった。
「これも美味しいー!」
平民しか食べないような言い方だったけど、十分美味しいんだから貴族たちも食べたら良いのに。
「ラニールさんが作るものは貴族の人たちにも食べてもらいたいですね」
「ん? 何だ急に?」
「だって、こんなに美味しいのに貴族の人たちは食べないなんてもったいない!」
「ハハ、こんなのを美味いなんて言う貴族はリディアくらいじゃないか?」
ラニールさんは笑った。
「僕も……美味しいと思う……」
イルが急に発言した。
「お? おぉ、イル……グスト殿下でしたっけ? ありがとうございます」
ラニールさんが褒められたことに戸惑っていた。
イルも自分から発言するなんて、余程美味しかったんだなぁ。
「だよね! ラニールさんの料理、美味しいよね!」
イルはコクンと頷いた。可愛い……。
ラニールさんも意外な人物に褒められたから、少し照れ臭そうにしている。
オルガなんてあっという間に食べ終わっているし。
ある程度食べ終わると、ラニールさんは、そうだ、と呟き厨房へ戻った。
そしてすぐに戻って来たかと思うと、硝子の皿に乗ったものを目の前に置いた。
「リディアだけに特別デザートだ」
「?」
その言葉を聞いたキース団長始め、騎士たちがガタガタ! と急に立ち上がり、全員がこちらを見た。
ラニールさんはそれに気付き慌てて言う。
「ち、違う!! そういう意味じゃない!!」
そういう意味ってどういう意味??
「??」
「いや、だから! お菓子作りの試作だ!」
「あぁ」
キース団長や騎士たちは「なんだ……」とばかりに、息を吐き、苦笑しながら座った。
目の前に置かれた皿を見ると、宝石のように透き通りキラキラした水色のぷるんとしたものだった。その中に水色の花が入った、とても綺麗なお菓子だった。
「これ、本当にお菓子ですか? お菓子に見えない……綺麗……」
皿を持ち上げ思わず見惚れた。
「本当に綺麗だな。これ本当にお前が作ったのか? こんな繊細そうなもの」
「どういう意味だ!?」
キース団長はどうやらラニールさんが作ったとは思えないらしい。
ラニールさんはキース団長を睨んでいるが、キース団長はそのお菓子に釘付けだ。
気付けば周りに騎士たちが集まって来ていた。
「これはゼリーですか?」
「あぁ」
「この入っているお花は?」
「ルベアというコランよりは劣るが、甘みの強い花だ。食用として使えるから、オーブンで焼いてゼリーに入れてみた」
「へぇぇえ!! ラニールさんてお菓子の知識まであって本当に凄いですね!」
ラニールさんが照れた。フフ、ラニールさんも可愛いな。
「でも綺麗で食べるのもったいない……」
「フッ、いや、食べてくれないと感想が聞けない」
「そうなんですけど……、もったいない~!!」
まじまじと見詰め、本当に綺麗でうっとりしてしまう。
「また作ってやるから」
「はぁい」
若干渋々スプーンをそのゼリーに差し込んだ。
「あぁ……」
崩れちゃった……。ラニールさんが笑いを堪えている……。
一口食べてみると、思ったよりは甘みは少なくあっさりとしたゼリーだった。しかしルベアの香りだろうか、爽やかな香りが鼻を抜ける。
「うん、爽やか! 美味しい!!」
「そうか、なら良かった。しかし……」
「?」
「今求めているお菓子作りには向かないかもな」
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