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九章 遭遇

第七十二話

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「うっわー! 凄いっすねー! さっきの魔法! めっちゃ格好いい!! しかもドラゴンに銀狼っすか!? スッゲー!!」

 出て来たのは茶色の髪と瞳の男性だった。同い年くらいだろうか? 少し上くらいかな?
 やたらとテンション高いな、と少したじろいだ。

 ディルアスが残りの魔物を消滅させ、こちらに来た。

「誰だ?」
「あ、俺、サクヤって言います! お二人ともめっちゃ凄い魔法っすね! 俺、見とれちゃって!」

 サクヤと名乗った人物はどうやら魔物の気配を追って来たら、私たちが戦っているのを目撃し、入り込む隙がないからと、そのまま見物していたらしい。

「俺も少しは魔法使えるんですけど、お二人程凄くないんで、ほんと格好いいなって思って! 俺もそれくらい使えるようになりて~!」

 テンション高いな。
 しかし何かこの気配……この人の気配……何か気になる。
 チラッとルナを見た。ルナもこちらを向き目を合わせた。
 やっぱり……。

「俺に魔法教えてくれません!?」

 目を輝かせていた。

「無理です、行こう、ディルアス」
「え? あ、あぁ」

 サクヤはキョトンとした顔をしていたが、ハッとして叫んだ。

「またどこかで会ったら魔法教えてくださいね~!」

 大きく手を振っていた。

 私はディルアスの腕を引っ張りながら足早にその場を離れた。
 サクヤから見えなくなると、空間転移でロッジまで一気に帰った。

「ルナ、怪我見せて?」

 魔物に噛み付かれた痕が何ヵ所もあった。

『大したことはない』
「治癒するね。さっきすぐに治癒出来なくてごめんね」

 横たわるルナの横にしゃがみ、治癒魔法をかけた。

『いや、それはいい。それよりも……』
「うん……あの人……」

 ディルアスが治癒をしている私の横に立った。

「さっきのやつがどうかしたのか? 何者だ?」
「うん……多分……多分でしかないけど……」

 治癒が終わりルナは立ち上がり身体を伸ばした。
 私も立ち上がりディルアスの方を向いた。

「あの人……多分、新しい勇者……」
「!! 本当にか!?」
「多分……」
「なぜ分かった?」
『魔力の気配が似ていた』

 ルナが言った。ルナは昔の勇者とも繋がりがあり、私とも繋がりがある。勇者の気配を知っている。
 だからあの時ルナと目を合わせた。きっとルナも何か感じただろうと思って。
 やはりそうだった。

『過去の勇者とも、ユウとも、気配が似ている』
「なるほど、そうか……」

 ディルアスは考え込んでしまった。

「とりあえずアレンとイグリードに報告するか」

 椅子に座りアレンとイグリードを呼び出す。

「アレン、イグリード、聞こえる?」
「ユウか! どうした?」
「今大丈夫?」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」

 イグリードはどこかに移動しているようだ。

「すまない、私室に移動して空間隔離をかけていた。良いぞ」
「あ、俺もしとくか」

 アレンは忘れていたようだ。

「ついさっきなんだけど、魔物が大量に出て……」
「魔物が大量!? どうなったんだ!? 今連絡が来てるということは無事なんだな!?」
「あぁ、うん、それは何とか大丈夫」
「はぁ、さすがユウとディルアスだな。余裕な感じか?」

 アレンが笑いながら言った。

「そこまで余裕でもないけどね。大量過ぎたし、ルナは怪我したし」
「ルナが怪我!? 大丈夫なのか!?」
「治癒したから大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった」

「で、何かあったんだろ?」

 イグリードが聞いた。

「うん。勇者らしき人にあった」
「!?」
「勇者!?」
「うん」

 なぜ分かったのか、ディルアスに説明した時と同じように説明をした。

 しばらく沈黙が流れた。

「そ、そうか……いずれ現れてユウと接触があるかもとは思っていたが、こうも早々に接触することになるとはな」
「うん……」
「ユウのことはバレてないんだよな?」
「すぐに別れたから大丈夫だと思う」

「だがロッジ近くだったから危ないかもな」

 確かにロッジ近く、森を出てすぐのところだった。

「あの森は国所有だから、一般人は入れないが……用心するに越したことはないな。ユウは出来るだけ一人になるな」
「うん」
「用心しろよ! 何かあったら連絡してくれ。またこちらも何か分かったら連絡するよ」
「分かった」

 通信を終わり、ディルアスと話し合った。

「とりあえず索敵を強化しておこう。今は魔物や敵意のある人間にしかほぼ感知しない。普通の人間もはっきり分かるくらいに強化出来ないか考えよう」
「うん、でもそんな方法あるの?」
「分からない。でも索敵にも高位魔法があるからな、それを応用する方法はあるかもしれない」
「うーん、応用かぁ……図書館で調べてみるとか?」
「あまり街には行きたくないがな……手詰まりになったら行ってみよう」

 対人間に特化した索敵の研究をすることになってしまった……。
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