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六章 勇者
第四十八話
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次の日キシュクに戻った。
マリーさんたちに依頼は無事終わったと報告しに。
マリー亭に戻ると、みんなとても心配してくれていたらしく、姿を見るととても喜んでくれた。
ディルアスともまだ一緒にいることを伝えると、異常なくらいに驚かれた。でもまあ分かるかも。私も驚くし。一緒に行動するようになってからのディルアスの言動や行動については言うまい。
報告が済んで、これからまたしばらく王都にいると伝えた。隣国に行くと伝えたらまた心配させそうだし。
そして再び王都エルザードに戻った。
街の中を通り過ぎる途中でディルアスを見かけた。何やら買い出し中? 薬屋から出て来たようだ。ディルアスがこちらに気付いた。
「ユウ」
「ディルアス、薬を買ってたの?」
「薬というか魔力回復薬だな」
「魔力回復薬……」
オブを治癒したとき以外に魔力切れになったことがなかったから、使ったことなかったな。
「私も買ってみようかな」
考えながらブツブツ言っていると、ディルアスが腰に手を回し歩くよう促した。
「必要なら俺のを分けたら良い」
「ん? え、あぁ、ありがとう?」
なぜか肩を抱かれながらグイグイと若干足早に歩くよう促される。
近いんですけど! この距離感にディルアスは気付いてない?
何だろう、何で急いでるのか周りの気配を探ってみた。いくつかの視線を感じた。何だろうか。
横を歩くディルアスの顔を見た。綺麗な横顔だな、何て呑気なことを考えていたら、どうやらかなり見詰めていたらしい。
ディルアスがこちらに振り向き目が合った。ドキリとしたが、それ以上にディルアスの顔が面白かった。いや、面白いは失礼か。
ディルアスは目が合った瞬間に目を見開き真っ赤になった。挙動不審な動きでギシギシ音がしそうだ。やっぱりこの距離感に気付いてなかったのね。
「す、すまない」
慌てて肩を掴んでいた手を離した。顔を赤くしたまま横を向いた。
この前の背中密着のほうが恥ずかしかったんですけど! と思ったが、やたら照れているディルアスが可笑しくて笑ってしまった。
「フフ……アハハ、ディルアスって可愛いね」
「か、可愛い!?」
赤い顔を手で隠しながらディルアスはこちらを見た。
「あ、ごめん、フフ、可愛いって失礼だよね、ごめん」
「……いや」
笑いが止まらなかった。あれだけ無表情だったディルアスがよくよく見てるとこんなにも表情豊かだとは。
しかも距離感間違えて赤くなるって! 前も思ったけど、思春期の男の子みたい。歳上なんだけどさ。何か可愛いんだもん。
そう思うと笑いが止まらなくなってしまった。
「笑うな」
ディルアスは顔を片手で隠しながら、さらに耳まで赤くなってしまった。
「フフ、ほんとごめん……」
やっとの思いで笑いを抑えるとディルアスも顔から手を離した。相変わらず少し赤いけど。顔背けてるけど。
「それで、何だったの? 何か視線を感じたけど」
「あ、あぁ、恐らくオブを見ていたのだと思う。だからあの場から早く離れたほうが良いと」
「オブを……ドラゴンを狙う人だったのかな…」
「恐らくな……」
オブを見た。オブ自身はキョトンとしているがルナは少し警戒をしている。
「王宮に帰ろう」
「うん」
ディルアスが促した。
門の前では顔を覚えてくれている兵士さんが門を開けてくれた。
王宮の部屋へ戻るまでの間、マリー亭でのみんなの様子を話した。
ディルアスがまだ一緒にいることにみんながやたらと驚いていた、と伝えると、納得いかないというような顔をしていた。
あまり大きな表情の変化はないが、やはり無表情なようで実はそうではない、面白いな、と内心また笑ってしまった。
部屋に戻ると侍女さんから殿下がお待ちです、と言われ、ディルアスと共に案内された。
「あぁ、ユウ、ディルアス、待ってたぞ! 一緒に食べよう!」
アレンがすでにテーブルに着いていた。リシュレルさんの姿はない。
「リシュレルさんは?」
テーブルに着きながら聞いた。
「あぁ、リシュは仕事だ」
そう言いながら笑っていた。押し付けたな。可哀想にリシュレルさん……。
「俺の仕事は大体終わった。明朝出発するぞ!」
「分かった」
ディルアスが返事をし、私も頷いた。
「馬車で行こうかと思うがどうだ?」
「馬車……時間がかかりすぎるから、アレンはゼルに乗れば良い。ユウはルナがいるから大丈夫か?」
「おぉ! ゼルに乗せてくれるのか!? それは乗ってみたい!」
アレンは興奮気味。私はルナに、か、どうだろう、とチラッとルナを見た。
『我は構わんぞ。オブシディアンは抱きながら乗ると良い』
「ありがとう!」
ルナに乗るのはちょっと楽しみ! 前に一度乗ったときはオブが付いて来れなくて諦めたし。そっか、オブは抱っこすれば良かったんだね。
アレンと同じようにちょっと興奮気味になってしまったことを気付かれないように平静を保った。
ルナにはバレてそうだけど。
マリーさんたちに依頼は無事終わったと報告しに。
マリー亭に戻ると、みんなとても心配してくれていたらしく、姿を見るととても喜んでくれた。
ディルアスともまだ一緒にいることを伝えると、異常なくらいに驚かれた。でもまあ分かるかも。私も驚くし。一緒に行動するようになってからのディルアスの言動や行動については言うまい。
報告が済んで、これからまたしばらく王都にいると伝えた。隣国に行くと伝えたらまた心配させそうだし。
そして再び王都エルザードに戻った。
街の中を通り過ぎる途中でディルアスを見かけた。何やら買い出し中? 薬屋から出て来たようだ。ディルアスがこちらに気付いた。
「ユウ」
「ディルアス、薬を買ってたの?」
「薬というか魔力回復薬だな」
「魔力回復薬……」
オブを治癒したとき以外に魔力切れになったことがなかったから、使ったことなかったな。
「私も買ってみようかな」
考えながらブツブツ言っていると、ディルアスが腰に手を回し歩くよう促した。
「必要なら俺のを分けたら良い」
「ん? え、あぁ、ありがとう?」
なぜか肩を抱かれながらグイグイと若干足早に歩くよう促される。
近いんですけど! この距離感にディルアスは気付いてない?
何だろう、何で急いでるのか周りの気配を探ってみた。いくつかの視線を感じた。何だろうか。
横を歩くディルアスの顔を見た。綺麗な横顔だな、何て呑気なことを考えていたら、どうやらかなり見詰めていたらしい。
ディルアスがこちらに振り向き目が合った。ドキリとしたが、それ以上にディルアスの顔が面白かった。いや、面白いは失礼か。
ディルアスは目が合った瞬間に目を見開き真っ赤になった。挙動不審な動きでギシギシ音がしそうだ。やっぱりこの距離感に気付いてなかったのね。
「す、すまない」
慌てて肩を掴んでいた手を離した。顔を赤くしたまま横を向いた。
この前の背中密着のほうが恥ずかしかったんですけど! と思ったが、やたら照れているディルアスが可笑しくて笑ってしまった。
「フフ……アハハ、ディルアスって可愛いね」
「か、可愛い!?」
赤い顔を手で隠しながらディルアスはこちらを見た。
「あ、ごめん、フフ、可愛いって失礼だよね、ごめん」
「……いや」
笑いが止まらなかった。あれだけ無表情だったディルアスがよくよく見てるとこんなにも表情豊かだとは。
しかも距離感間違えて赤くなるって! 前も思ったけど、思春期の男の子みたい。歳上なんだけどさ。何か可愛いんだもん。
そう思うと笑いが止まらなくなってしまった。
「笑うな」
ディルアスは顔を片手で隠しながら、さらに耳まで赤くなってしまった。
「フフ、ほんとごめん……」
やっとの思いで笑いを抑えるとディルアスも顔から手を離した。相変わらず少し赤いけど。顔背けてるけど。
「それで、何だったの? 何か視線を感じたけど」
「あ、あぁ、恐らくオブを見ていたのだと思う。だからあの場から早く離れたほうが良いと」
「オブを……ドラゴンを狙う人だったのかな…」
「恐らくな……」
オブを見た。オブ自身はキョトンとしているがルナは少し警戒をしている。
「王宮に帰ろう」
「うん」
ディルアスが促した。
門の前では顔を覚えてくれている兵士さんが門を開けてくれた。
王宮の部屋へ戻るまでの間、マリー亭でのみんなの様子を話した。
ディルアスがまだ一緒にいることにみんながやたらと驚いていた、と伝えると、納得いかないというような顔をしていた。
あまり大きな表情の変化はないが、やはり無表情なようで実はそうではない、面白いな、と内心また笑ってしまった。
部屋に戻ると侍女さんから殿下がお待ちです、と言われ、ディルアスと共に案内された。
「あぁ、ユウ、ディルアス、待ってたぞ! 一緒に食べよう!」
アレンがすでにテーブルに着いていた。リシュレルさんの姿はない。
「リシュレルさんは?」
テーブルに着きながら聞いた。
「あぁ、リシュは仕事だ」
そう言いながら笑っていた。押し付けたな。可哀想にリシュレルさん……。
「俺の仕事は大体終わった。明朝出発するぞ!」
「分かった」
ディルアスが返事をし、私も頷いた。
「馬車で行こうかと思うがどうだ?」
「馬車……時間がかかりすぎるから、アレンはゼルに乗れば良い。ユウはルナがいるから大丈夫か?」
「おぉ! ゼルに乗せてくれるのか!? それは乗ってみたい!」
アレンは興奮気味。私はルナに、か、どうだろう、とチラッとルナを見た。
『我は構わんぞ。オブシディアンは抱きながら乗ると良い』
「ありがとう!」
ルナに乗るのはちょっと楽しみ! 前に一度乗ったときはオブが付いて来れなくて諦めたし。そっか、オブは抱っこすれば良かったんだね。
アレンと同じようにちょっと興奮気味になってしまったことを気付かれないように平静を保った。
ルナにはバレてそうだけど。
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