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第34話 闇堕ち
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激しい突風に煽られたように私たちの身体は吹き飛ばされた。
「うぐっ」
シュリフス殿下の呻き声が耳元で聞こえた。
「シュリフス殿下!!」
私の上に覆いかぶさったシュリフス殿下の身体をなんとか抱き起す。
「うぅ……ル、ルシアさん……」
シュリフス殿下の顔が!! 黒い靄に憑りつかれてしまったのか、シュリフス殿下の目は赤黒く染まり、皮膚が黒ずんで行く。
「シュリフス殿下!! 嫌ぁあ!!」
そうだ!! 浄化魔法を!!
「私から離れて……」
苦しそうにシュリフス殿下は言う。
「嫌です!! 私は離れません!! 貴方が離れるなって言ったんじゃないですか!!」
シュリフス殿下に抱き付いた。ぎゅうっと抱き締め、祈りを捧げる。浄化魔法を!!
私の身体全身から光り輝く金色の粒が溢れ出て来た。それらは私の周りに広がり、抱き締めているシュリフス殿下の身体をも包む。金色の光に包まれたシュリフス殿下の身体からはジュウジュウと音を立てながら黒い靄が霧散していくのが見えた。
「あ、あぁ……ルシアさん」
身体を離すとシュリフス殿下のお顔は元に戻っていた。シュリフス殿下は自分の掌を見詰め顔を抑えた。そして顔を上げるとふわっと私を抱き締めた。
「ありがとうございます、貴女のおかげで私は魔の者にならずに済んだ」
良かった……シュリフス殿下が元に戻って良かった……背中に触れた手が温かい。あぁ、本当に良かった……。
「ルシア嬢!!」
安堵の涙が出そうになっているところに国王の叫び声が聞こえた。ハッとし、慌てて立ち上がる。
「アイリーン!!」
黒い靄に包まれたアイリーンはシュリフス殿下と同様に魔に取り込まれようとしていた!
そんな!! アイリーンの闇堕ちは回避出来ていたんじゃないの!? 駄目よ!! アイリーンは絶対助ける!!
走り出そうとした行く手をクラウド公爵に阻まれる。
「あぁ、貴女の力は本当に厄介だ」
そう言いながら再び魔石を持ち上げたクラウド公爵が、なにかをしようとした瞬間、背後から風を切るように飛んで来た雷撃!!
「!?」
ドオォォォォオオオン!! と激しい音を立て爆発。煙を巻き上げクラウド公爵の姿は見えなくなった。
「ルシア嬢!! 大丈夫ですか!!」
背後からはセルディ殿下たち四人が現れた。騎士団も揃っている。
「アイリーン!!」
煙の向こう側ではアイリーンが必死に耐える姿が見えた。魔の力に必死に抗おうとしている。もがき苦しんでいる。
「アイリーン様を浄化します!!」
アイリーンの元へと走った。しかし、突風に弾き飛ばされる。自身の周りの煙を薙ぎ払ったクラウド公爵は不敵に笑った。
「ルシア嬢! アイリーンを頼みます! クラウド公爵は我々がなんとか食い止めます!」
そう言ったと同時に一斉に総攻撃を仕掛けた。しかしクラウド公爵の周りには結界でも張ってあるのか攻撃が届いている様子がない。
魔石の力か、やはりあの魔石をなんとかしないときっと終わらない。
でも今はアイリーンが先よ!!
びくともしないとは言え、止むことのない攻撃にクラウド公爵は身動きが取れないようだった。その隙に一気にアイリーンの元まで走る。
「アイリーン様!!」
「あ、あ、あ……」
アイリーンは必死に意識を保っているようだが、もう危ないかもしれない。私に襲い掛かって来た! ゲームのなかでは闇堕ちしたアイリーンは姿形も変わっていた。今ならまだ大丈夫なはず!!
鋭い爪が生え私の身体に突き刺していく。しかしそれを必死に耐えて抱き締めた。
「うぐっ! うぅう!!」
必死に暴れるアイリーンをなんとか抑え込み抱き締める。そして浄化魔法を……暴れるアイリーンを抑えるために魔力の集中が出来ない……。アイリーン!! アイリーン!! お願いだからじっとして!!
必死に抑え込んでいると頭上から影が落ちた。
そして私の背後からぎゅっと力強く抱き締められる。
「シュリフス殿下!?」
「貴女ごとアイリーン嬢を抑えます!! 今のうちに浄化魔法を!!」
背中にシュリフス殿下の温かさを感じる。力強い、安心感、あぁ、やっぱり私は……。
魔力を集中。暴れるアイリーンを必死に抱き締めながら浄化魔法を放出する。光り輝く金色の光はアイリーンを包み、黒い靄を消し去っていく。
お願い!! 元に戻って!!
シュリフス殿下が私の手を上から握り締めた。祈りを……もっと、祈りを!!!!
アイリーンを包んでいた光はさらに広がり、王の間全体へと広がった!!
王の間は光に包まれ眩い光にその場にいる者は皆、目を閉じる。光は爆発するかのように弾け、そして消えた。
「うぐっ」
シュリフス殿下の呻き声が耳元で聞こえた。
「シュリフス殿下!!」
私の上に覆いかぶさったシュリフス殿下の身体をなんとか抱き起す。
「うぅ……ル、ルシアさん……」
シュリフス殿下の顔が!! 黒い靄に憑りつかれてしまったのか、シュリフス殿下の目は赤黒く染まり、皮膚が黒ずんで行く。
「シュリフス殿下!! 嫌ぁあ!!」
そうだ!! 浄化魔法を!!
「私から離れて……」
苦しそうにシュリフス殿下は言う。
「嫌です!! 私は離れません!! 貴方が離れるなって言ったんじゃないですか!!」
シュリフス殿下に抱き付いた。ぎゅうっと抱き締め、祈りを捧げる。浄化魔法を!!
私の身体全身から光り輝く金色の粒が溢れ出て来た。それらは私の周りに広がり、抱き締めているシュリフス殿下の身体をも包む。金色の光に包まれたシュリフス殿下の身体からはジュウジュウと音を立てながら黒い靄が霧散していくのが見えた。
「あ、あぁ……ルシアさん」
身体を離すとシュリフス殿下のお顔は元に戻っていた。シュリフス殿下は自分の掌を見詰め顔を抑えた。そして顔を上げるとふわっと私を抱き締めた。
「ありがとうございます、貴女のおかげで私は魔の者にならずに済んだ」
良かった……シュリフス殿下が元に戻って良かった……背中に触れた手が温かい。あぁ、本当に良かった……。
「ルシア嬢!!」
安堵の涙が出そうになっているところに国王の叫び声が聞こえた。ハッとし、慌てて立ち上がる。
「アイリーン!!」
黒い靄に包まれたアイリーンはシュリフス殿下と同様に魔に取り込まれようとしていた!
そんな!! アイリーンの闇堕ちは回避出来ていたんじゃないの!? 駄目よ!! アイリーンは絶対助ける!!
走り出そうとした行く手をクラウド公爵に阻まれる。
「あぁ、貴女の力は本当に厄介だ」
そう言いながら再び魔石を持ち上げたクラウド公爵が、なにかをしようとした瞬間、背後から風を切るように飛んで来た雷撃!!
「!?」
ドオォォォォオオオン!! と激しい音を立て爆発。煙を巻き上げクラウド公爵の姿は見えなくなった。
「ルシア嬢!! 大丈夫ですか!!」
背後からはセルディ殿下たち四人が現れた。騎士団も揃っている。
「アイリーン!!」
煙の向こう側ではアイリーンが必死に耐える姿が見えた。魔の力に必死に抗おうとしている。もがき苦しんでいる。
「アイリーン様を浄化します!!」
アイリーンの元へと走った。しかし、突風に弾き飛ばされる。自身の周りの煙を薙ぎ払ったクラウド公爵は不敵に笑った。
「ルシア嬢! アイリーンを頼みます! クラウド公爵は我々がなんとか食い止めます!」
そう言ったと同時に一斉に総攻撃を仕掛けた。しかしクラウド公爵の周りには結界でも張ってあるのか攻撃が届いている様子がない。
魔石の力か、やはりあの魔石をなんとかしないときっと終わらない。
でも今はアイリーンが先よ!!
びくともしないとは言え、止むことのない攻撃にクラウド公爵は身動きが取れないようだった。その隙に一気にアイリーンの元まで走る。
「アイリーン様!!」
「あ、あ、あ……」
アイリーンは必死に意識を保っているようだが、もう危ないかもしれない。私に襲い掛かって来た! ゲームのなかでは闇堕ちしたアイリーンは姿形も変わっていた。今ならまだ大丈夫なはず!!
鋭い爪が生え私の身体に突き刺していく。しかしそれを必死に耐えて抱き締めた。
「うぐっ! うぅう!!」
必死に暴れるアイリーンをなんとか抑え込み抱き締める。そして浄化魔法を……暴れるアイリーンを抑えるために魔力の集中が出来ない……。アイリーン!! アイリーン!! お願いだからじっとして!!
必死に抑え込んでいると頭上から影が落ちた。
そして私の背後からぎゅっと力強く抱き締められる。
「シュリフス殿下!?」
「貴女ごとアイリーン嬢を抑えます!! 今のうちに浄化魔法を!!」
背中にシュリフス殿下の温かさを感じる。力強い、安心感、あぁ、やっぱり私は……。
魔力を集中。暴れるアイリーンを必死に抱き締めながら浄化魔法を放出する。光り輝く金色の光はアイリーンを包み、黒い靄を消し去っていく。
お願い!! 元に戻って!!
シュリフス殿下が私の手を上から握り締めた。祈りを……もっと、祈りを!!!!
アイリーンを包んでいた光はさらに広がり、王の間全体へと広がった!!
王の間は光に包まれ眩い光にその場にいる者は皆、目を閉じる。光は爆発するかのように弾け、そして消えた。
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