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第27話 公爵邸へ
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結局ボロボロと泣き出してしまい、アイリーンに慰められるという訳分からん状態に……。
黒い靄には憑りつかれたりしてなさそうなのが幸いだ……。
「ルシアさん、私のために泣いてくれてありがとう。私は良いお友達を持ったわね」
フフっと微笑みながらアイリーンは私の手を握り返した。そしてそっと顔を近付け囁いた。
「ルシアさん、私のお話を聞いてくださる?」
耳元でそう呟いたアイリーン。顔を向けるとアイリーンはニコリと微笑んだ。
「一時、私は公爵邸へ戻ります。今晩、公爵邸まで来てくださらない?」
そうよね。このまま学園にはいたくないわよね。アイリーンの顔を見ながら頷いた。アイリーンは微笑み、「では後ほど」と言い去って行く。
セルディ殿下め!! どうしてくれようか!! ふんす!! と鼻息荒く寮へと戻る。
今さら卒業パーティに参加する気分でもないしね! あぁ、でも料理は食べたかった……美味しそうだったなぁ。
そんなことをブツブツ考えながら、寮へと戻るとアナが驚いていた。
「お嬢様、どうされたんですか!? こんなお早いお戻りとは!」
「ただいまぁ……ほんとどうなのよ……」
ぐったりしながらアナに卒業パーティでのことを話した。やはりアナも驚いた顔。
「えぇ……信じられません。あれほど仲が良さげでしたのに……」
「でしょ!? もう本当にセルディ殿下が信じられない!」
「なにか理由でもあるのでしょうか……」
「理由?」
「えぇ。あのセルディ殿下が理由もなく婚約破棄をあのような場で言い出すとは到底思えません……」
「だよねぇ……」
うーん、と二人して考え込んだが、あのときアイリーンですら理由は分からないと言っていた。アイリーンですら分からないものを私たちが分かるはずもなく……。
「とにかく何かお食事を用意致しましょう。そのご様子ではパーティでは何もお召し上がりにならなかったのでしょう?」
「えぇ、それどころじゃなかったから……」
アナは頷くと素早く食事の手配をしてくれ、そして卒業パーティで着用していたドレスを脱ぐ手伝いをしてくれた。
この後公爵邸に向かうことを伝え、外出用のワンピースを用意してもらい着替える。
食後、お茶をしながらまったりとしていたが、モヤモヤモヤモヤ……。公爵邸へ行くまでの時間、色々なことが頭のなかを巡り答えが出ない苛立ちにぐったりとしてしまった。
夕方に差し掛かるころ、アナに馬車の手配をしてもらい、公爵邸まで!
公爵邸は我が家の侯爵邸とは比べ物にならないほどの広さと豪華さだった。長期の休み中に何度かはお邪魔させてもらったことはあるため、慣れては来たのだが、やはりこのなんというか……規模が違い過ぎていつも腰が引ける。
門のところで名前を告げると、屋敷入口では執事長が出迎えてくれていた。
「ルシア様、お待ちしておりました。アイリーン様がお待ちです」
恭しく頭を下げた髪の白い執事長は、とても落ち着いた品のあるダンディなおじいちゃんだ。
執事長に案内されながら向かった先は応接室ではなくアイリーンの部屋だった。執事長が扉を叩き、なかへと声を掛けると、部屋のなかからアイリーンの声がした。
「どうぞ」
なかへと入る瞬間、なにやら違和感を感じたが、キョロっと周りを見回しても特になにもなかったため、気にせずなかへ。
部屋のなかにはアイリーンがいたが、一人だけではなかった。執事長が共に部屋へと入ると、しっかりと扉を閉めた。
「セルディ殿下!? それにみんなも……シュリフス殿下まで!?」
部屋のなかにはアイリーン、それにセルディ殿下、ロナルド、ラドルフ、アイザック、そしてシュリフス殿下がいた。
「お待ちしておりましたわ、ルシアさん」
にこやかにアイリーンは出迎え、私の手を取り部屋の中央へと促す。
「セバスチャン、人払いを。お茶の用意もいりません。呼ぶまではこの部屋に誰も近付かないように。セルディ殿下方が来られていることも内密に」
「分かりました、それでは失礼致します」
セバスチャンと呼ばれたのは執事長のことだ。恭しくお辞儀をした執事長は外へと出るとしっかりと扉を閉めた。
「セバスチャンは信頼出来る者ですのでご安心ください」
アイリーンはセルディ殿下に向かって言った。
「あぁ、彼は私も幼いころから知っている。信頼しているよ」
セルディ殿下がニコリと笑った。
ん? さっき卒業パーティであったことが嘘のように二人共穏やかだ。どういうこと?
しかもこの場にこんなみんな勢揃いってなんなの一体。
アイリーンと二人だけだと思っていた私には全くこの状況を理解出来なかった。
「ルシアさん、こちらにお座りになって」
アイリーンは長椅子に私を促し、その隣に座った。それに合わせて、セルディ殿下とシュリフス殿下も向かいに座る。他三人は我々を囲むように立った。
「あの……これは一体……」
まずこの状況を説明してもらいたい。
黒い靄には憑りつかれたりしてなさそうなのが幸いだ……。
「ルシアさん、私のために泣いてくれてありがとう。私は良いお友達を持ったわね」
フフっと微笑みながらアイリーンは私の手を握り返した。そしてそっと顔を近付け囁いた。
「ルシアさん、私のお話を聞いてくださる?」
耳元でそう呟いたアイリーン。顔を向けるとアイリーンはニコリと微笑んだ。
「一時、私は公爵邸へ戻ります。今晩、公爵邸まで来てくださらない?」
そうよね。このまま学園にはいたくないわよね。アイリーンの顔を見ながら頷いた。アイリーンは微笑み、「では後ほど」と言い去って行く。
セルディ殿下め!! どうしてくれようか!! ふんす!! と鼻息荒く寮へと戻る。
今さら卒業パーティに参加する気分でもないしね! あぁ、でも料理は食べたかった……美味しそうだったなぁ。
そんなことをブツブツ考えながら、寮へと戻るとアナが驚いていた。
「お嬢様、どうされたんですか!? こんなお早いお戻りとは!」
「ただいまぁ……ほんとどうなのよ……」
ぐったりしながらアナに卒業パーティでのことを話した。やはりアナも驚いた顔。
「えぇ……信じられません。あれほど仲が良さげでしたのに……」
「でしょ!? もう本当にセルディ殿下が信じられない!」
「なにか理由でもあるのでしょうか……」
「理由?」
「えぇ。あのセルディ殿下が理由もなく婚約破棄をあのような場で言い出すとは到底思えません……」
「だよねぇ……」
うーん、と二人して考え込んだが、あのときアイリーンですら理由は分からないと言っていた。アイリーンですら分からないものを私たちが分かるはずもなく……。
「とにかく何かお食事を用意致しましょう。そのご様子ではパーティでは何もお召し上がりにならなかったのでしょう?」
「えぇ、それどころじゃなかったから……」
アナは頷くと素早く食事の手配をしてくれ、そして卒業パーティで着用していたドレスを脱ぐ手伝いをしてくれた。
この後公爵邸に向かうことを伝え、外出用のワンピースを用意してもらい着替える。
食後、お茶をしながらまったりとしていたが、モヤモヤモヤモヤ……。公爵邸へ行くまでの時間、色々なことが頭のなかを巡り答えが出ない苛立ちにぐったりとしてしまった。
夕方に差し掛かるころ、アナに馬車の手配をしてもらい、公爵邸まで!
公爵邸は我が家の侯爵邸とは比べ物にならないほどの広さと豪華さだった。長期の休み中に何度かはお邪魔させてもらったことはあるため、慣れては来たのだが、やはりこのなんというか……規模が違い過ぎていつも腰が引ける。
門のところで名前を告げると、屋敷入口では執事長が出迎えてくれていた。
「ルシア様、お待ちしておりました。アイリーン様がお待ちです」
恭しく頭を下げた髪の白い執事長は、とても落ち着いた品のあるダンディなおじいちゃんだ。
執事長に案内されながら向かった先は応接室ではなくアイリーンの部屋だった。執事長が扉を叩き、なかへと声を掛けると、部屋のなかからアイリーンの声がした。
「どうぞ」
なかへと入る瞬間、なにやら違和感を感じたが、キョロっと周りを見回しても特になにもなかったため、気にせずなかへ。
部屋のなかにはアイリーンがいたが、一人だけではなかった。執事長が共に部屋へと入ると、しっかりと扉を閉めた。
「セルディ殿下!? それにみんなも……シュリフス殿下まで!?」
部屋のなかにはアイリーン、それにセルディ殿下、ロナルド、ラドルフ、アイザック、そしてシュリフス殿下がいた。
「お待ちしておりましたわ、ルシアさん」
にこやかにアイリーンは出迎え、私の手を取り部屋の中央へと促す。
「セバスチャン、人払いを。お茶の用意もいりません。呼ぶまではこの部屋に誰も近付かないように。セルディ殿下方が来られていることも内密に」
「分かりました、それでは失礼致します」
セバスチャンと呼ばれたのは執事長のことだ。恭しくお辞儀をした執事長は外へと出るとしっかりと扉を閉めた。
「セバスチャンは信頼出来る者ですのでご安心ください」
アイリーンはセルディ殿下に向かって言った。
「あぁ、彼は私も幼いころから知っている。信頼しているよ」
セルディ殿下がニコリと笑った。
ん? さっき卒業パーティであったことが嘘のように二人共穏やかだ。どういうこと?
しかもこの場にこんなみんな勢揃いってなんなの一体。
アイリーンと二人だけだと思っていた私には全くこの状況を理解出来なかった。
「ルシアさん、こちらにお座りになって」
アイリーンは長椅子に私を促し、その隣に座った。それに合わせて、セルディ殿下とシュリフス殿下も向かいに座る。他三人は我々を囲むように立った。
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