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第五章 アイルランドの女海賊と海賊団結成

5-27.私掠船ですからね

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 さて、出来上がった剣を試してみたい。
 とは言え、真剣で立ち合いなど、危険極まりないので、同じ長さの木剣を作り、仲間と打ち合うことにした。

 間合いが違うので、勘が働かない。
「届く!」と思って踏み込んでも、さっぱり剣先が届いていない。
「これは苦労するわ」

 うん?

 ローズマリーが、先日、グラーニャに突っかかって行く、無鉄砲者だと知ったが、戦闘もするのか?
 武術など習得しているように思えないのだけれども。

 すると、彼女の愛用の武器は、皮の鞭だった。
 鞭とナイフだ。

 どう闘うのだ?

 すると、地元の海賊たちが、興味深そうに見ている。
「その鞭は、どう使うのだい?」と、不思議そうに見ている。
「では、お相手をしてくださる?」と、美少女に声をかけられ、気をよくしたのだろう。
 この海賊は、「えへへ」とでも言いそうな顔になってしまった。
「ダメだこりゃ」

「ねぇ、皮鎧はつけておいてね」
「へい、へい!」

 そして、木剣で海賊男がローズマリーに近づいて行くと、鞭が「ビシッ」」となったと思いきや、首に巻き付いていた。
 そして、寝かされると、ナイフを抜いて腸を割く真似をした。
「ひぃぃ」

 なんじゃ、こいつは?
 武術ではない。
 暴力でもない。

 これは、淡々とした作業だ。
 まるで肉屋が鹿や猪を解体しているのと同じだ。

 唖然としている私たちに、ローズマリーは、「こうやって猪や熊をさばきます」と、にこやかに言い放ったのだが。

 しかし、誰も何も言わなかった……
――誰かホローしてやれよ! ほら、エマリー! イリーゼでも良いからさ。

 すると、
「素晴らしい。こんな闘い方があったなんて、また、勉強になったよ」と言ったのはヤスミンだ。
「ヤスミンさん。ありがとうございます。うれしいです」

 ホッとしたわ。
 でも、この一件から、彼女は「花屋の店主」から「肉屋の店主」と言われるようになったとか、ならなかったとか。

 海賊男も解放されたので、すべては無かったことにしよう。

 すると、鐘が鳴った。

「イングランド海軍が近くに接近している」と。
 いわゆるスクランブル発進のようだ。

「エマリー! 私たちはどうするの?」
「い、いかん! あの船にスペイン国旗を揚げたままだわ」
「エマ姉さん、狙われるわ」

 それは、ダメじゃない。早く降ろさないと!


「おい、エマリー。お前たちも手伝え! 狩るぞ!」と海賊のえらいさんが声をかけてきた。

 しかし、
「了解したわ」と、答えたのはエマリーでなく、ローズマリーだ。
――この娘は、血の気が多いのか?

 かくして、私たちは、いつの間にか、オマリー海賊団としてイングランド海軍と戦闘をすることになった。

 ひぃぃ。
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