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最終章 魔人と闘う空手家

101.時田の魔法

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101.
 時田の魔法

「これはいけませんね」と言ったのは執事の時田だ。
「申し訳ございません」と誤ったのはコマンダー・キャンペル。

「仕方がありません」と時田が言うと、キャンベルの方を向いた。

 すると、キャンベルは人間の容姿から鳥人間に変わっていくではないか!
 顔は鳥のように、背中には折りたたんだ鳥の羽の様なものが付いている。

 そして、キャンベルが奇声を発した。
「キィーーーーッ!」

「超音波だ!」

 その時、横綱とミサキが斜め右を目で追っていたので、オレもそれに従った。

 そこには、この超音波攻撃にもめげず、女兵士がダーツ攻撃をしようとすると、
「イケませんね。背後がお留守です」と、いつの間にか時田がステッキで女兵士の背中から胸を貫いていた。

「あれだ。Aランクハンターのサムハンを一瞬で仕留めたステッキ攻撃だ」
 横綱とミサキには、時田の動きが見えていたようだ。
――凄いな。この二人。

 続いて、“ドカーン”という音がした。
 ミノタウロス二体が、タンク役の大楯に突っ込んだようだ。
 タンクは、ズズズーーーっと、数メートル下がってしまう。

 時田が来ただけで、魔物のパワーが上がっていないか?

 コマンダー・キャンベルは、空中に浮遊し、口から超音波や火球攻撃をしている。

「火球を受けて耐熱魔法を消耗するのはマズいな」
「そうじゃが……」
「オレの投擲でも届かないよ」

 すると、一瞬、ヒンヤリした。
 なぜだ?

「フフフ、少しは涼しくなった?」とミサキが言う。
「あぁ、どうして?」と、辺りを見ると、幽霊がオレたちの首筋を撫ぜていた……
 まったく、驚きだぜ。

「ミサキ、あの浮かんでいる奴は幽霊で拘束できるか?」
「無理ね。幽霊より動きが機敏だわ。余程、罠でも張っておかないと」

 罠か!?
 すると、横綱がオレを見ている。
『オレの背中に乗れ』とでも言っているのだろうか?
「よし、分かった」と言い、オレは横綱の背中に跨った。

 すると、横綱は縮小化を解除し、仔牛サイズになった。
 おそらく、ジャンプするのだろう。
 オレは思い出した。
 朱美にもらったバンダナを!

「すまん、横綱」と言い、首輪の代わりにして、それに捕まった。

 すると!
 横綱は風魔法を使い、空を飛んだ。
「飛べるのか?」とオレが言うと、「ふふん」と鼻を鳴らしたようだ。

 キャンベルは、こちらに羽手裏剣を飛ばしてきた。
 当然、その間は、ミノタウロスたちの指示が出来ない。

 羽手裏剣は、トルネードで飛ばし、接近戦でのロングソードで一撃でケリを付けるつもりだが、キャンベルの手足の爪攻撃が手強い。
 だが、接近戦になったことで、オレたちの勝ちだ!

 そう、幽霊の呪縛に捕まるのだから。
「くそ、なんだ。動けない」
「ほう、もう終わりか?」と、軽い挑発をしてやった。かなり、悔しそうだ。

 しかし、ミサキの顔から焦りがにじみ出た。
「危ない!」

 なんと、キャンベルは幽霊の呪縛拘束を自らの力で破ったのだ。
「なんという魔力量なの」
「なんじゃ、どういうことなのじゃ?」
「使った幽霊の力より、コマンダーの魔力が上だったということよ」
「そんなぁ。ハヤト、動いて」


 コマンダー・キャンベルがオレの相手をしていた頃、地上のミノタウロスは、指揮官がいないから苦戦しているかというと、そうでもなかった。
 むしろ、遊撃手の女兵士がいなくなり、やり易そうだ。

「おい、他の遊撃手。代わるんだ」とヤマモトが言った。
 そう、このパーティーでは、Aランクハンターが下働きをしている。
 他のパーティーでは、リーダーをしているような者が、ゴロゴロいるのだ。

 そして、ナイフを持った男が前衛に上がってきた。

「あれって、物量で勝つの?」
「すごいのぉ。しかし、パーティーとしての実力のほどは、どうなんじゃろうなぁ」
と、ビリーと毒堀が、ひそひそ話をしている。

 そして、暇を持て余している時田は、ヤマモトを指名した。
「お暇のようですね」
 いや、ヤマモトは暇ではない。指揮をしているのであって、組み合っていないだけなのだ。ここで、指揮官が抜けると、崩れてしまう。
 お互いそんなことは承知で言っているのだろう。

「お相手しても、構いませんよ。英雄どのッ」と、言葉は丁寧だが、軽くバカにしているようだ。
 すると、時田は駆け出し、ステッキで軽く、タンクと弓手を、バッシと叩いて、膝間づかせた。

「どう、なさいますか?」
「ふん、やるしかないのだろう」


 次回の空手家は、英雄と執事だ!
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