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最終章 魔人と闘う空手家

77. Cランクのハンター

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77.
 Cランクのハンター


 最強を目指すコマンダーは、オレの張り手一発で沈んだ。
 当然、オレは首を掻っ切った。

「ふぅ」という嘆息がハンターから漏れ出たのが聞えた。
 後ろの魔人が文句を言いたげだったので、先に言ってやった。
「引負か? 格闘技の試合をしているのではない。戦争をしているのだ」と。

 実は、元軍人の最強野郎は、視野が狭かったのが敗因だ。
 闘って倒すことに特化したため、思いっきり殴り、投げ飛ばし、倒すことを考え、防具を全身に付けて闘っていたのだろう。

 しかし、防具を付けて闘うのと、素手素顔で闘うのは、また微妙に違う。
 だから、髪の毛を掴まれたり、耳を掴まれたりすることは想定外だ。
 あくまでも、格闘技をするつもりだったのだろう。

 しかし、戦場でルールはない。
 対戦相手に向かう途中に襲われることもある。

 そして、オレが今使った技が、ナイハンチの形の初手だ。
 相手の首根っこを掴み、引き寄せて顔を膝蹴りで沈める。
 そして、張り手は耳の鼓膜を破るのに最適な技だ。
 つまり、こいつは鼓膜を破られ、目が回っているところ首を斬られたのだ。

 これが護身の難しさだ。
 格闘技最強でも、自分の命は守れないことはあると思う。

 魔人は歯を食いしばっているようだが、さらにその後ろに、誰かが近づいてきた。
 あれは、リードの執事の時田だ!

「ブラッドリー、今、そこにいる男こそ、リード様が招待した蒼井隼人です」と時田が言った。
「なんと、時田様。彼が……しかし、Aクラスハンターが……」どうやら、ブラッドリーとかいう魔人は、オレのことをAクラスハンターとでも思っていたのだろうか?

「ブラッドリー、蒼井隼人はCランクのハンターです」
「Cクラスですか? リード様がCランクのハンターに招待状を送ったと?」
「そうです」
「まさか……」

 時田は続けて言った。
「コマンダー・サビィ―もこれでは、無念でしょう。彼には再戦の機会を与えましょう」

「なんだと? どういうことだ?」

「ゾンビとしてよみがえれ、コマンダー・サビィ―よ」と、時田が言うと、今、死んだはずのコマンダー・サビィ―が少しずつ動き出した。

「さあ、蒼井隼人殿。再戦をしてやってください。死んだばかりですので腐敗しておりません。ですので、多少の痛みも感じるはずです。ほぼ、人間に近い状態です。さあ、どうぞ」

――まったく、なんと言うことだ。余計なことを。

 そして、コマンダー・サビィ―が立ち上がり、構えた。脇を絞めて、構えている。
 打撃も組み打ちも出来る相手だ。
 それと、ゾンビの特性から、頭を破壊しないといけない。首を切って死ぬわけではない。
 オレは、無構えを取った。ただ、立っているだけだ。

 左足をスーッと前に出すと、コマンダーは片足タックルに来た。
 それほど、高速ではなかったが、左膝に手を伸ばしてきた。
 オレは無意識に、左手は髪を掴み、右手は拳の槌でこめかみを殴っていた。
 先ほど、膝蹴りが当たったところと同じだ。

 これが相当なダメージだったようで、暴れくるっている。
 その姿に、誰もが驚いていた。
 それは、ゾンビにした魔人たちが驚いているぐらいだから。

 おそらく、こいつは先の膝蹴りで、半分脳みそが壊れていたのだろう。
 さらにダメ押しをしたと解釈しておこう。
 暴れているので、突き蹴りの狙いが定まらない。面倒ということでロングソードを横殴りにして、頭部を破壊した。

「蒼井殿。私とリード様は地下道にいます。貴方の来るのを、楽しみに待っています」と言うと、いつの間にか、靄がかかり消えていた。


「くそ! 人間どもめ」とブラッドリーという魔人は、怒りが収まらない様だ。

ーー小物だな。

 すると、ブラッドリーは、
「今日、死んだハンターどもは、ゾンビとしてやる」というと、ハンターや兵士の死体からゾンビ兵を作り出し、オレたちを襲いだした。

「なんて、省エネなことをしよるんじゃい」と毒堀が叫んだ。

 このゾンビ騒動に紛れ、魔物たちはバリケードまで後退をしている。

 そこに、「私に任せなさいよ」と、アニーが前に出た。
 すると、アニーが「バースト」というと、ゾンビの頭が、次々に爆裂していった。

 これは、手っ取り早くゾンビが処理できる。
 正直、助かった。

 しばらくして、撤収の指示が出た。

 ついに、地下道の地図が手に入ったのだ。
 それは、オレに魔人の待つ地下道への招待状でもあった……


 次回の空手家は、いよいよリードたちの待つ地下道へ。
 とは、ならなかった。
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