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最終章 魔人と闘う空手家

61.港町とリード様

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61.
 港町とリード様

 ヤシアーから港町の中心街までは15キロほどあるが、行政管轄ではヤシアーのギルドから数分歩いたら、港町の市内だ。
 つまり、この街は広い都市ということなのだな。

 ギルドのある市街地まで、馬車で1時間半、さらにギルドまで街馬車で10分と言ったところだろうか?

 さて、ギルドに着くと、今回の仕事の説明を受けた。
 今回の護衛任務には、三人のハンターが付くが、Cランクはオレだけだった。

 しかも、あとの二人は、AランクとBランクで、オレより若いハンターだ。

 なんか、気まずいな……

 その辺りはギルドの担当者からは、「蒼井さんは、死んで間もないので仕方がないですよ。あの二人は転生組ですし」
 そうなのだ。この死後の世界には、三つのパターンの人間がいるようなのだ。

 一つ目は、オレや朱美のように転移組。
 死ぬ前の記憶を持って、死んだ時点からこの世界で人生の続きを送るようだ。
 オレも朱美も病気が原因で死んでいることを考えると、死因が関係しているのだろうか?
 それと、死後の継続となると、朱美は乳がん手術失敗後の身体なのだろうか?

 それは気の毒すぎる。
 手術後の発狂ぶりは今も覚えている。

 オレは知らなかったのだ。
 女性が胸を失うと、冷静でいられなくなることを……

 それはさておき。

 二つ目は、転生組だ。
 生前の記憶はあるが赤子からこの世界に来た人間だ。
 このパターンは優秀になることが多い。
 今回の二人は、このパターンのようだ。
 なんか、死後の世界の方が、もっと不公平のようだな。

 三つ目は、この世界の人間同士の間に生まれた人間である。
 前世の記憶は全くないようだ。
 そして、この人間が一番多いのだ。


 まず、今回の仕事の内容の説明を受けた。
「明日、大型客船が港の中央突堤に入るので、現地スタッフの案内の元、依頼主のところに言ってもらうよ」と担当者が言うと、顔写真を受け取った。
 この異世界にも写真があったのか!? と驚いてしまった。

 写真の男の名前は、『リード』と言うらしい。
 薄い色のサングラスをかけている35才から40歳ぐらいの男性だ。
 この男を船が出航するまでの七日間、護衛すればよいということだ。
 ただ、金持ちだろうから、ジッとしているとは思えない。
 夜は、酒場で大騒ぎなのだろうか?
 オレとしては、夜は、空手の稽古をしたいものだが。

「では、明日の10時に、ここに一度来てから、船を出迎えに行くよ。それとチームリーダーはAランクを持っているサムハンにお願いするね」と担当者が言うと、
「あぁ、了解したよ」と、『当然だ!』という風にAランクのサムハンという男は答えた。

 そして、その日は、ギルドの宿に泊まることになった。
 この街のギルドは、牧場の町のギルドの宿とは大違いだった。

 食堂もある!

 おかげで夜も朝も食事に不自由はしなかった。
 しかし、割引はなかったな……


 そして、翌日、ギルドの担当者のところに行き、その後、リードと言う男の乗る船を突堤で現地スタッフと待っていた。

 船が到着すると、現地スタッフは「リード様 港町ギルド」と書かれたスケッチブックを出していた。
 ほう、慣れているもんだな。

 そして、タラップからオレたちに70万タ―ラ―支払う男、リードが降りてきた。
 雰囲気的に言えば、ブルース・リーが軽い長髪にした感じだろうか。
 なんか、気の難しそうな感じがする。
 そして、口数も少ないが、そこはサムハンに任せ、オレは営業スマイルで、ニンマリしておこう。
 まあ、“一番下っ端”のCランクだからな。

 しかし、ヤシアーには、Aランクなどいなかったが、ここ港町では、Aランクどころか、Sランクも数人いるらしい。
 Sランクと言えば、年に一度の試験で、全国で数人受かるか否かという程度だ。
 

 さて、リード様は、口数は少なく、助手なのか執事なのか年配の男性が、我々とコミュニケーションをとるようだ。
 この年配の男は、時田と言うらしい。

 まずは、食事に行くということで、ギルドが用意していた馬車で移動だ。

 この街は、港町ということだけあって、和洋中なんでも食事ができる。
 そして、リード様は、この街に寄った際、まず、中華レストランに行くそうだ。

 無論、個室だ。

 一人は部屋の中、一人は部屋の外、一人は店の入り口に立つことになる。
 正直、部屋の中で他人が、豪華な料理を食べるのを眺めるのは勘弁してほしいので、店の入り口が良いだろう。
「オレは、入り口が良いな。この街は初めてなので、外の方が、色々と刺激がある」と理由になったのかどうかわからん理由で、店から出ることに成功した。

 そして、その日は、夜の街に出かけるかと思いきや、ホテルで寝るらしい。
 
 さらに、驚いたことに、オレたちもその豪華なホテルで寝ることになった。
 まあ、護衛なのだからな。

 一人一部屋でハンター三人と執事、リード様で五部屋借りていることになる。
 両隣と迎えを押さえておけば、襲撃されにくいということなのだろうか?

 この人は、誰に襲われる危険があるのだろうか?

 次回の空手家は、市内見学に付き合います。
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