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第4章 死者の街

48.セバスチャンは横綱

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第48話
 セバスチャンは横綱

「あっ、セバスチャンね」

「「セバスチャン?」」

 なんと、横綱の本名は、セバスチャンだった。

「アニーの言う通りじゃないか!」

――確か、そいつは、パトラッシュの飼い主では?


「セバスチャン、今までお疲れ様ね」
「わん」

 その時、オレはビリーの顔を見ていた。
 同じくビリーも、オレの顔を見ていた。
『ワォーン』でなく、『わん』だと!?

 尻尾を可愛くフリフリしているが、あの尻尾は、本気で叩くとゴブリンの顔面が砕ける破壊力があるんだが……

「朱美、教えてくれ。彼は、オレたちと、ずっと旅をして来たんだけど、君が飼い主なのか?」
「そうよ! 私、犬好きなのは知っているでしょう」

 いや、犬というような次元ではない。
 横綱は、ウルフだ!
 今は、大型犬サイズに縮小しているが、魔力解除したら、仔牛クラスのウルフなんだが。

「実は、この死後の世界に着て、セバスチャンに出会ったのだけど、3ヶ月ほど前に、やたらと落ち着きがなくなったの。そうしたら、夢で隼人くんが来るから、セバスチャンを迎えに行かせないと、危ないって夢を見たの。それで、慌てて……」

「その夢、辻褄があっているな……」
「えっ?」
「朱美の言うとおりだよ。彼がいなかったら、ソンビになっていたかもしれない」

「ハヤト、話は宿を探してからにしようよ」
「あぁ、そうだな。すまない宿を探すので、明日また来る」

「待って! 大丈夫。夢のお告げで、二人の部屋も用意しているわ」
「「えっ?」」

 オレたちは、横綱の方を見たが、横綱は知らん顔をしている。

 セバスチャン、お前が用意させたんだよな?
 また、オーク肉をおごってやるから。

 その時、セバスチャンでなく、"横綱”がウィンクしたような気がした。


 それにしても、この店の奥は広いな。

 雑貨屋は、それほどでもないと思っていたのだが、奥には、庭があり、二階には、部屋がある。

 オレたち二人が来るのを知っていたというだけあって、十分なスペースを確保していた。
 しかし、広い庭が洗濯だけにしか使っていないのはもったいない。

 さて、朝食も終わり、ギルドに行くことにした。
 野犬退治の話を聞くためだ。

 しかも、これはギルドからの依頼で、山の手のお金持ちが依頼したわけではない。

 何故か?

 彼らは、お高い税金を納めているわけで、街のギルドのスポンサー様ではないが、実質、彼らの税金でこの街のすべては回っている。
 ということで、改めて依頼などしなくとも、ギルドが率先して働くということである。

 ギルドの担当者から、討伐の説明があった。
「まず、山の手の住人から、その時の状況を詳しく聞き、野犬の数や出現方向などを確認して欲しい。その後、こちらで分析をして、情報を各人に渡し、討伐の日時を決めるので、それまでは待機していて欲しい」
との話だ。

 そして、オレとビリーは、この街の地理に詳しくないため、地図を借りて、聞き込み調査に出かけることにした。

 いざ、聞き込みを開始すると、分かったことは、
・野犬は、山から下りてきたが、人を襲ったわけでもなく、食料を求めてきたわけでもなかった。
・山から下りてきた野犬の群れは、隣の山に逃げるように走って行った。
・大きな声で吠えていた。

 わかったことは、それぐらいであった。
 他のハンターにも、聞いてみたが、皆同じで、「裏山から隣の山へ走って逃げた」これだけだ。

「ねぇ、ハヤト! 逃げた隣の山より、出てきた裏山の方が気になるんだけど」
「あぁ、オレも気になる」と、オレは、牧場の街での嫌なことを思い出していた。

 まさか、また、同じことの繰り返しなのではないのか? 
 つまり、魔物が裏山に陣取ったと……


***


 ギルドもお金持ちに対しての、ポーズなのだろう。
「ギルドとしても人を使い、カネを使い調査・討伐しました」というような。
 野犬の逃げた山には、既に野犬はおらず、小型動物がいつも通りいただけだった。

 そして、オレはビリーと横綱とで、野犬の出てきた裏山に入ることにした。
 無論、自分達の判断なので、何の成果も無ければ無報酬なのだが、牧場の街でジムやサンダンスの一件を思い出すと、無視することは出来なかった。
「何かあるのでは?」と言うも、このヤシアーでは聞く者はいなかった。

 この山は岩山だった。
 この一帯の山は元火山だったらしく、岩が多い。
 なので、この一帯を「岩の牛が横たわっているように見える」ので、“ロック・カウ”というらしい。

 そして、岩山はずるずると滑る上、急な勾配が多い。
 岩下に穴があるため、小動物が潜んでそうだ。おそらく、先日の野犬たちも、巣穴にしていたかもしれない。
 すると、ズシン、ズシンと地響きがした。
 これは、オーガクラスの巨体の魔物が近くにいるということだろう。

 オレたちは、様子を見るため、岩陰に隠れた。

 オレは『また、オーガだと、2体までにして欲しい』と考えていたが、岩の上を歩いて行ったのは、大型のミノタウロスとその部下らしい通常サイズが2体であった。

「牛か? ビリー、あいつらの戦闘力はどれほどなのか?」
「大型は強いよ。通常のサイズは人間の大人ぐらいの大きさだけど、力が強いから、武器無しでは闘わないよ」

 怪力相手だと、滑る岩山は良くない。パワー負けしたり、また、足元が滑って、崖から落ちることがある。落ちれば致命傷を負いかねない岩山だ。

 そうこう考えていると、三体のミノタウロスは、森へ入って行った。

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