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第4章 死者の街

47.ベルトとワイド

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第47話
 ベルトとワイド

「朱美……」
「やはり隼人くんなのね。どうして隼人くんが、この町にいるの? ここは死者の町だよ」
「あぁ、オレも死んでしまったんだ」

 すると、朱美は跪き、座り込んでしまった。
 オレには、意外な反応だった。

 てっきり、また、オレの悪口でも言うのかと思ったからだ。

「朱美」と、オレは彼女の肩に手をやった。

「どうしてなの? 何故、死んだの?」
「あぁ、流行病でなッ」

「そんなッ、イヤよ」
「すまない。ギルドに報告に行かないとイケないんだ。後で、詳しく話そう。どこに居る?」
「あっ、そうね。私はね、その角を曲がって数件先の『雑貨カフェ ベルトとワイド』というお店をやっているわ」
「分かった。後で寄るよ」
「うん、来て」
 と言うと、オレはギルドへ急いだ。
 その間、朱美の視線を背中越しに感じていたので、振り向くと、彼女は、まだ、こちらを見ていた。

 ニッコリ笑う朱美。

 昔も、上野駅で、『こんなことをしていたな』と思うと、思わず苦笑した。

「ハヤトぉ、どうしたんだよ?」と、ビリーが聞いてくるので、
「いやなに、昔を思い出してね」と、笑って誤魔化した。


 そう言えば、横綱は、どこへ行ったんだ?

 数分歩くとギルドがあった。
 こじんまりとした良い街だ。

 ギルドへ報告すると、ギルドカードを見た受付の男性から、「あんた、C級ハンター補欠なのか?」

 何だそれは?

 オレは牧場の街でD級を受けたが、C級補欠なんて話は聞いてはない。

「C級補欠はスロープシティーで加筆された様だ。実は頼みたいことがあるんだ」

???

 オレはビリーと、顔を見合わせた。

 どうやら、オレとビリーは、牧場の街のギルドマスターから、推薦があり、オレはC級ハンター補欠で、ビリーはD級ハンター補欠とスロープシティーで承認されたようだ。

 この補欠というのは、試験さえ受ければ、認定されるということだ。
 当然、認定料金も必要なのだが。


「実は、山の野犬の群れの話なんだ」
「今日、届け先で聞いたよ。先週、大行進したらしいじゃないか?」
「そこで、調査討伐した方が良いのではと話が出ている」
「なるほど」

 受付の男性は、少し黙って、
「そこで、君たちにも参加してほしいんだ」
「悪くは無いが、いくらだ?」
「それが、依頼主はギルドになるので、それ程でもない。一日で3万ターラーで3日だ」
「怪我さえしなければ、悪くはない。怪我をすれば安すぎる」と、笑いい飛ばしてやった。

「ビリー、どうする?」
 初めてのギルドで初仕事なのだ。断ると、この後、仕事周りが悪くなりかねない。
 しかし、安請け合いして、自身の価値を落とすことになるのは、ゴメンだ。
 高単価高収入は、営業マンの基本だ。

 そこで、わざとビリーに振って、チクリと受付を牽制してやったのだ。

「3日とも参加するのなら、皆勤賞として、1万ターラー追加で、10万ターラーなら、良いと思うんだ」

 ビリーの奴、上手く言いやがったぜ!
 その通りだ!

「分かった。補欠とは言え、C級とD級だ。マスターには私から伝えておくよ」と、交渉成立した。

 詳しい依頼書を受取り、ギルドから出ることにした。

 いつもなら、ギルド宿に泊まるのだが、先程の金持ちの依頼を熟したので、やや懐に余裕があり、普通に飯付きの宿を探すことにした。
 おっと!
 その前に朱美の店に行くことにした。

「ハヤト、あの女の人は誰なの?」
「生きている時の婚約者だ」
「じゃあ、先に死んじゃったの?」
「そうだ」と、答えるも、ややこしい話は止めておいた。

 そして、彼女の店に着いた。
「この『ベルトとワイド』って、どういう意味なんだ?」
 店内は『ワイド』どころか、朱美の性格からか、こじんまりしていた。

 そして、雑貨と喫茶……

 手術後のSNSに、そんなことをやってみたいと言っていたとを思い出した。

「あっ、隼人くん。もう、終わったの?」
「あぁ、終わった」と、オレが言おうとした瞬間、オレとビリーは、驚いてしまった。

「「横綱ッ!」」

 なんと、どこか獲物でも見つけて、走り回っているかと思っていた横綱が、この店の飼い犬になっていた。

 どういうことなんだ?
「おい、ビリー。これは、どういうことかわかるか?」
「ハヤト、さっぱりだよ」


 次回の空手家は、セバスチャンは横綱。
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