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第3章 山賊女王の街

34.アニー

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 アニーは美人だと思う。
 人気も高く、ファンも多い。
 女性にも人気だ。

 容姿の良さだけでなく、この若さで早いランクアップは、世間の女性にもかっこよく写り、女性ファンも多い理由だろう。


 アニー・オクレーは、牧場の町の近くの小さな農園で生まれ育った。
 しかし、彼女が7歳の頃、父親が肺炎を抉らせて、亡くなったそうだ。

 現代の日本なら、保険に加入しておくだろうが、この世界には家のローンの保険など無く、子供たちは学校を辞めて、働きに出ることとなった。

 上の兄2人と母は、農園の経営を、アニーと妹のドロシーは、他の町の診療所の住み込み手伝いに行くことになった。

 その診療所が問題だった。
 やたらと、死亡診断書の発行が多いのだ。

 ある日、診療所の診察時間が終わり、寝静まった頃、ドロシーが「寝付けない!」ので、夜、部屋から出で診療所内を歩いていた。
 いつもは来ることのない死体検案室だが、部屋からは、少しばかり灯りが漏れていた。

「消し忘れだとイケない」と、責任感の強いドロシーは灯りを消しに、死体検案室に入った時。
 そこには、診療所の経営者である医師と息子の若先生が、怪人を作っていたのだ。

 いや、5歳のドロシーには、この親子が死体から“怪人を作っていた”ように見えた。
 
「アッ」と、思わず声を上げてしまった。

 二人の医師は固まった。ソンビ作りを見られてしまった。この娘に……

 身元の無い死体はそう多くない。
 すぐにゾンビにするのでなく、死後数日して、ゾンビ化し、ここに戻るようにすれば、研究出来る。

 そして、この娘も口封じにと二人が考えた頃、アニーはドロシーが部屋にいない事に不安を覚えた。
「ドロシーの声が聞こえた」と言うと、部屋から飛び出した。

「ドロシー、どこ?!」

 正にドロシーがゾンビに噛みつかれようとした時、祖母が、昔、口ずさんでいた詠唱を、アニーが口ずさんでいた。
「ファイヤー」

 ゾンビは燃え、火の粉が医師親子の白衣を焦がす。
 医師親子が火事にならない様、燃えるゾンビを消化しようとしている隙に、アニーはドロシーの手を引き、逃げ出した。

 診療所は半焼となり、医師親子は生き延びたが、悪事がバレたようだ。
 その理由のひとつとして、アニーとドロシーが、家まで辿り着いたからだ。

 その後のアニーは、この事件のことを聞いた魔法使いの女が、「弟子にしたい」と申し出た。才能を感じるからだとかで。

 アニーは女から魔法を学びつつ、魔法で狩猟を行い家計を助けた。
 その腕前は、家のローンが15歳の時に完済するほどだったという。

 その後、ハンターとして自立し、現在、20歳だ。

 その凄腕ハンターのアニーが、宿に来てからおかしいのだ。
 酒を飲む前から酔っているというか、オレにやたら絡んでいる。

「隼人ぉ、これ食べなさいよ」
「さっき食べた」
「い、い、か、ら。ハイ、あーん」

 ビリーに、「席を変われ」と言う前に、逃げられてしまった。
 あっ、横綱……


 次回の空手家は、旅の宿です。
 四人は夜に何をしている?
 

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