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3.バルト海を並び行く幽霊たち
3-9.魔のゴットランド島
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3-9.魔のゴットランド島
その後、黒ずくめの男、バーナー・シュバルツは、ドーバー港を出て、バルト海へ向かおうとしていた。
「バルト海で航行の自由を阻害している貴族令嬢とやらに、灸をすえるぞ。
マリーネ、現地の情報は?」
「はい、その貴族令嬢は、例のフランスの貴族です。船はキャラベルと思われます」
「わかった。引き続き情報を頼む。
カールハインツはイギリスに残り、あの超巨大戦艦を作れるドックと技師を探してくれ。ヨーゼフ! お前もカールハインツと頼む」
「「了解しました」」
「よし、正午の鐘で出港する」
さて、ケーニヒスベルクの女海賊団というと。
「行こう。ゴットランド島へ。何か手掛かりがあるかもしれないわ」
「うん、ミーナが言うなら、なんも意見なんてあらへんよ」と、エマリーが返した。
「でも、お頭、ゴットランド島って、昔、ドイツ騎士団が皆殺しをしたという噂がある島でがす。大丈夫なんで?」とイライザが、不安を吐露した。
ドイツ騎士団が、本当に皆殺しをしたのなら、噂ではなく、もっとも反ドイツ国が歴史として語られていておかしくないはず。
やはり、噂の範疇を超えていないと思う。
しかし、人々とは、しっかりした歴史より、尾ひれがつきやすい、しかも主観で話しやすい噂の方が、心に残るものだ。
今のイライザのように。
この様にドイツ人が不安になる中、ケルト人のローズマリーは平然としていた。
「私が改宗してやりますわ」と、鼻息が荒い。
彼女は、敬虔な旧教徒で、実家は花屋だ。
実は、古今東西、花屋は忌み嫌われている。
それは、葬儀屋がそうであるのと同じで、日本でも、つい100年ほど前は花屋と葬儀屋の違いなど差がなかったのだから。
彼女の実家も、教会から葬儀の際、多くの花を用意し、時に葬儀を取り仕切っていたようだ。
そんなことは、さておき。
バルト海の地図を開き、あたりを付けて幽霊船の隠れ家を探している。
入り江が多く、隠れる場所など多数ありそうだが、狭いということは、眺めが良ければ見えてしまう。
しかし、今は春霧の季節なのだ。ほんの少し先も見えない。
灯台や街の明かりが無ければ、昼間でも戻れない。
そのような中の捜索は困難を極めていた。
だから、今回のようにゴットランド島とあたりを決めて捜索することにした。
ケーニヒスベルクからゴットランド島へは、左程の距離ではない。
一度、ビスビューの港で聞き込みをしようと、入港した。
すると!
「やはり、噂通りだ」
「ドイツ騎士団の末裔が殺しに来るって、本当だったんだ」と、港がパニックになっている。
中には、叫びだすものが現れたりもした。
しかも、中には武装している。
「おい、エマリー。港の様子がおかしい。こちらの情報が洩れているぞ」
と、エマリーを呼ぶも、エマリーも返す言葉がない。
「何故?」と言う感じだ。
「このまま、入港するわけにいかない。停船だ」
「おもぉぉかぁじ」とイライザが舵輪を回し、減速させている。
「錨を下ろせ」
船は停まった。
だが、入港できそうにない。
そして、短気な奴がいたのだろう。
マスケット銃をこちらに発砲した奴がいたのだ。
"バァーーン"
私は銃を向けられて発砲されたことに、怒りが頂点に達したが、それ以上に、港がパニックになった。
悲鳴を上げるもの
走り出すもの
頭を抱えるもの
「よし、この機会に反転だ。一旦、下がるぞ」と、港から離れることにした。
島を一周、回って、隠れ家がないかと調べ、チャンスがあればボートで上陸しようかと思っていたので、大きく下がりたくは無かった。
だが、「こうも先に手を打たれるとねぇ」とエマリーに言うと、「こちらが騒ぎを起こしているということは、こちらに目を向けさせて、別の場所では、おそらく幽霊船が出ているということね」
行き違いになったのか?
「ということは、お頭、ここはヤマを掛けて、ケーニヒスベルクに全速で戻りませんか?」とエルメンヒルデが言った。
「ボートで上陸するために隙を狙うことまで、相手が読んでいる可能性があります。
なら、霧の濃い中、お互い姿が分かりません。正確な情報が分からないので、一か八かをする機会だと思います」
「やってみるか?」と言うと、私たちは、灯りを消し霧に紛れて来た道を帰ることにした。
そして、ゴットランド島からエーランド島方向へ向かうと、エーランド島とスカンジナビア半島の間から、中型船が三隻ほど、姿を現した。
「なんだ、こんな霧の中を」
「あの帆は」
「幽霊船?」
そう、この船の帆は、ボロけており、かなり年季の入ったもののようだ。
「見つけたぞ。幽霊船」
その後、黒ずくめの男、バーナー・シュバルツは、ドーバー港を出て、バルト海へ向かおうとしていた。
「バルト海で航行の自由を阻害している貴族令嬢とやらに、灸をすえるぞ。
マリーネ、現地の情報は?」
「はい、その貴族令嬢は、例のフランスの貴族です。船はキャラベルと思われます」
「わかった。引き続き情報を頼む。
カールハインツはイギリスに残り、あの超巨大戦艦を作れるドックと技師を探してくれ。ヨーゼフ! お前もカールハインツと頼む」
「「了解しました」」
「よし、正午の鐘で出港する」
さて、ケーニヒスベルクの女海賊団というと。
「行こう。ゴットランド島へ。何か手掛かりがあるかもしれないわ」
「うん、ミーナが言うなら、なんも意見なんてあらへんよ」と、エマリーが返した。
「でも、お頭、ゴットランド島って、昔、ドイツ騎士団が皆殺しをしたという噂がある島でがす。大丈夫なんで?」とイライザが、不安を吐露した。
ドイツ騎士団が、本当に皆殺しをしたのなら、噂ではなく、もっとも反ドイツ国が歴史として語られていておかしくないはず。
やはり、噂の範疇を超えていないと思う。
しかし、人々とは、しっかりした歴史より、尾ひれがつきやすい、しかも主観で話しやすい噂の方が、心に残るものだ。
今のイライザのように。
この様にドイツ人が不安になる中、ケルト人のローズマリーは平然としていた。
「私が改宗してやりますわ」と、鼻息が荒い。
彼女は、敬虔な旧教徒で、実家は花屋だ。
実は、古今東西、花屋は忌み嫌われている。
それは、葬儀屋がそうであるのと同じで、日本でも、つい100年ほど前は花屋と葬儀屋の違いなど差がなかったのだから。
彼女の実家も、教会から葬儀の際、多くの花を用意し、時に葬儀を取り仕切っていたようだ。
そんなことは、さておき。
バルト海の地図を開き、あたりを付けて幽霊船の隠れ家を探している。
入り江が多く、隠れる場所など多数ありそうだが、狭いということは、眺めが良ければ見えてしまう。
しかし、今は春霧の季節なのだ。ほんの少し先も見えない。
灯台や街の明かりが無ければ、昼間でも戻れない。
そのような中の捜索は困難を極めていた。
だから、今回のようにゴットランド島とあたりを決めて捜索することにした。
ケーニヒスベルクからゴットランド島へは、左程の距離ではない。
一度、ビスビューの港で聞き込みをしようと、入港した。
すると!
「やはり、噂通りだ」
「ドイツ騎士団の末裔が殺しに来るって、本当だったんだ」と、港がパニックになっている。
中には、叫びだすものが現れたりもした。
しかも、中には武装している。
「おい、エマリー。港の様子がおかしい。こちらの情報が洩れているぞ」
と、エマリーを呼ぶも、エマリーも返す言葉がない。
「何故?」と言う感じだ。
「このまま、入港するわけにいかない。停船だ」
「おもぉぉかぁじ」とイライザが舵輪を回し、減速させている。
「錨を下ろせ」
船は停まった。
だが、入港できそうにない。
そして、短気な奴がいたのだろう。
マスケット銃をこちらに発砲した奴がいたのだ。
"バァーーン"
私は銃を向けられて発砲されたことに、怒りが頂点に達したが、それ以上に、港がパニックになった。
悲鳴を上げるもの
走り出すもの
頭を抱えるもの
「よし、この機会に反転だ。一旦、下がるぞ」と、港から離れることにした。
島を一周、回って、隠れ家がないかと調べ、チャンスがあればボートで上陸しようかと思っていたので、大きく下がりたくは無かった。
だが、「こうも先に手を打たれるとねぇ」とエマリーに言うと、「こちらが騒ぎを起こしているということは、こちらに目を向けさせて、別の場所では、おそらく幽霊船が出ているということね」
行き違いになったのか?
「ということは、お頭、ここはヤマを掛けて、ケーニヒスベルクに全速で戻りませんか?」とエルメンヒルデが言った。
「ボートで上陸するために隙を狙うことまで、相手が読んでいる可能性があります。
なら、霧の濃い中、お互い姿が分かりません。正確な情報が分からないので、一か八かをする機会だと思います」
「やってみるか?」と言うと、私たちは、灯りを消し霧に紛れて来た道を帰ることにした。
そして、ゴットランド島からエーランド島方向へ向かうと、エーランド島とスカンジナビア半島の間から、中型船が三隻ほど、姿を現した。
「なんだ、こんな霧の中を」
「あの帆は」
「幽霊船?」
そう、この船の帆は、ボロけており、かなり年季の入ったもののようだ。
「見つけたぞ。幽霊船」
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