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第2部 第ニ章 黄金郷を求めて

2-2-37.宵の明星

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第三十七話
宵の明星

 その頃、長崎では、南蛮料理の店“アナとヘマ子”は、屋台から店舗となり、繁盛していた。
 南蛮三味線が珍しいらしく、アンのギター演奏も人気のようだ。

 仕事が終わるとアナとヘマは、女同士で子作りをするのだけれど、なかなか、妊娠しないらしい……
「私がアナの子供を産むわ」
「いえ、私がヘマの子供を産んでみせるわ」

 頑張れ!
 きっと、君たちの願いは報われる
と、白いガレオン船は思っていた。


***


 在家信者が修行出来る施設では、朝に念仏を唱え、夕方には題目を唱える。
 あとは、坐禅に写経を行う。
 昼は、僧侶の説法を聞く。

 食事は一日二食。
 しかも、かなり質素だ。
 これは、覚悟していた。食べたいだけ食べれる修行などは無いだろう。

 それでも、このジパング全体に言えることだが、高脂肪で高タンパク質な食事は無い。

 おかけで、少し痩せたかもしれない。
 特に上半身は筋肉も落ちただろうか?

 その一方で、下半身はたくましくなった。
 山を歩くだけでも鍛えられる。
 そう、この施設は山の中なんだな。

 この山からは、先日の琵琶湖も京の都も見える。
 
 これが、出家者を苦しめるらしい。
 私達は、いずれここを降りるが、出家者はそんな訳には行かず、生涯ここで修行をする。
 誘惑に負ける者もいるそうだ。


 さて、時間は流れ、淡水真珠の競りの時期となった。
 バーナーには、「買えるだけ買っておいて」と連絡しておいた。

 競りの時期が終わり、そろそろ、長崎へ帰らなくてはならなくなった頃、施設ではイベントがあるようだ。

 暖かくなったので、夜通し琵琶湖で坐禅を組むというものだった。
 しかも、小舟の上で!

 何故、小舟の上なのか?
 おそらく、治安の問題か?

 そして、私もアガーテも、このイベントに参加した。
 静寂の中、時折、鳥の鳴き声が聞こえる。
 そのような中で、只管打坐する。

「ひとつ、ふたつ、みっつ……」と、心の中で100まで数える。
 そして、また、ひとつ目に戻る。
 それを、何十と繰り返しただろうか?

 “宵の明星”が輝く頃、辺りは、闇に包まれていた。

 湖岸に佇んでいた白鷺が、翼を広げ、水しぶきをあげ、大きく飛び立った時、私の中に、光り輝く“宵の明星”が飛び込んできた。

 私は、強く胸を打たれ、思わず息を大きく吐いた。

「今、何が?」

 西の空を見上げると、“宵の明星”は、依然と空に輝いている。

 しかし、今、何か、分かったような気がする。確かに分かったような気がするのだ。

 今、何故、白鷺が飛び立ち、何故、宵の明星が空から私の元に降りて来たのか?

 何故、ここに私が来たのか。
 何故、村上海賊が敵の子供を養子にしたのか。
 あぁ、すべてが、分かったような気がする。

 その事を反芻していたら、夜が明けてきた。

 そして、対岸を見ると、南蛮三味線を持った不審な女が!
 いや、ギターを持ったアンが、何かを演奏していた。

「お頭、おめでとうございます。お迎えに上がりましたわ」
「あぁ、アン。ご苦労さん」

 なんで、アンは私が、ここで大悟することが、分かったのだ?
 まあ、これが本当に大悟か、どうかは分からんけど。

 まあ、よかよか。


 次回の女海賊団は、帰路に着くことにします。
 久しぶりにバーナーに会います。 
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