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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!
2-1-21.マダガスカル島 弐
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第二十一話
マダガスカル島 弐
「よし、飯だ!」
「飯だ」
「飯」
マダガスカル島のタマタブ港に着いた海賊団は、ギニア以来の陸の飯にあり付けた。
ちなみに、ここには、船の調整も含めて一ヶ月いることになる。
出港は早ければ四月中、おそくても五月だ!
この時期は、インドへの季節風があるため、多くの船がこの時期にインドへ向かうのである。
さて、この二人は、アインス商会からの移籍型出向者で、父を海軍にさらわれた二人。
マリーとノエルである。
そんな二人は、ゾロゾロと海賊団の後方をついて歩いていた。
その時、「お父さん?」と言ったのは、マリーの方だ。
男数人が角を曲がっていったのだが、そのうち一人が、父に似ているような気がした。
しかしである。
父の他にも仲間がいたのだ。イングランドの海軍関係者だろうか?
今は海賊団の一員のマリー。
イングランド王国の私掠船をしているとは言え、“海軍関係者に会うことは避けた方が良い”と直感した。
だから、
『仲間が厄介事に巻き込まれたら』と思うと、追い掛けるのを躊躇ってしまった。
「マリーッ!」
「アッ、すぐ行くわ」と、海賊団のところに戻ってしまった。
そして、女海賊団はレストランで盛大に食事をした。
やはり、二代目キーナも個室を借切る。
平等が原則の海賊だが、襲撃対策として、見張りは交代で立たせている。
まあ、最後の方の見張りは、酔っているんだけれど。
「あぁ、それで見張りなのかい?」
「ウィッ! ご主人んん。そうでれす」
海賊団は、見張りに忙しい。
船の見張りも必要だ。
商品や支払うための銀を取られる訳には行かない。
この時代、振込みも出来なければ、全世界共通の貨幣などないので、銀で支払うのだ。
さて、宿屋の玄関の見張りをマリーがしていたが、暇なので玄関の外に出て、新鮮な空気を吸おうとした時のことだ!
「ん? 酔っぱらいか?」と、マリーは呟いたが、なんかおかしい。
先の男たち三人は、酒臭くないような?
「止せばの良いかもしれないが、気になるので跡を付けてみよう」と思い、酔っぱらいのあとを付けて行くことにした。
日も沈み、暗闇の中を進む三人の酔っぱらいだが、いつの間にか、普通に歩いていた。
酔いが冷めたのか?
それとも、初めから酔っていなかったのか?
しかし、マリーには問題があった。
尾行の知識が無かったことだ。
実は、尾行にはやり方もあれば、巻き方も、逃げ方も基本がある。
例えるなら、複数人で網を張ると言えば良いだろうか?
そして、尾行者を仕留める場合、背後から歩調を併せられるので、気配に気付かず刺されるわけだ。
そう!
だから!
マリーは、背後から襲われた。
「怪しい女だ」
「ウウウゥー」
前を歩いていた酔っぱらいは、
「おい、捕まえたか?」と、こちらへ寄ってきた。
『そんな、こんなところで、お父さんに会えずに』
宿屋では、次の見張りが交代しようと、降りてきたのだが、マリーがいないので、騒ぎになっていた。
「これは、宿の外に出ていったと?」
「ミーナちゃん、探した方が良いわね」
「よし! 三人一組になって捜索だ。クリスちぃは残って連絡担当になって」
「分かったわ」
「地図を出して、区分けするわ……」
担当も決まり、出掛けようとした際、ジャスミンがヴィルヘルミーナを呼び止めた。
「お頭、これを! 役に立つかも知れない」
「これは、なに?」
「試作品のハンドカノンだよ。マスケット銃の片手版だな。一発撃てば弾込めをしないとイケないけど、その一発を上手く使ってほしいんだ」
「わかったわ。活用させてもらうわ。ありがとう」
そういうと、私はアガーテとアンナを連れて、夜の闇に出撃して行くのであった。
次回の女海賊団は、ハンドカノンが炸裂です。
マダガスカル島 弐
「よし、飯だ!」
「飯だ」
「飯」
マダガスカル島のタマタブ港に着いた海賊団は、ギニア以来の陸の飯にあり付けた。
ちなみに、ここには、船の調整も含めて一ヶ月いることになる。
出港は早ければ四月中、おそくても五月だ!
この時期は、インドへの季節風があるため、多くの船がこの時期にインドへ向かうのである。
さて、この二人は、アインス商会からの移籍型出向者で、父を海軍にさらわれた二人。
マリーとノエルである。
そんな二人は、ゾロゾロと海賊団の後方をついて歩いていた。
その時、「お父さん?」と言ったのは、マリーの方だ。
男数人が角を曲がっていったのだが、そのうち一人が、父に似ているような気がした。
しかしである。
父の他にも仲間がいたのだ。イングランドの海軍関係者だろうか?
今は海賊団の一員のマリー。
イングランド王国の私掠船をしているとは言え、“海軍関係者に会うことは避けた方が良い”と直感した。
だから、
『仲間が厄介事に巻き込まれたら』と思うと、追い掛けるのを躊躇ってしまった。
「マリーッ!」
「アッ、すぐ行くわ」と、海賊団のところに戻ってしまった。
そして、女海賊団はレストランで盛大に食事をした。
やはり、二代目キーナも個室を借切る。
平等が原則の海賊だが、襲撃対策として、見張りは交代で立たせている。
まあ、最後の方の見張りは、酔っているんだけれど。
「あぁ、それで見張りなのかい?」
「ウィッ! ご主人んん。そうでれす」
海賊団は、見張りに忙しい。
船の見張りも必要だ。
商品や支払うための銀を取られる訳には行かない。
この時代、振込みも出来なければ、全世界共通の貨幣などないので、銀で支払うのだ。
さて、宿屋の玄関の見張りをマリーがしていたが、暇なので玄関の外に出て、新鮮な空気を吸おうとした時のことだ!
「ん? 酔っぱらいか?」と、マリーは呟いたが、なんかおかしい。
先の男たち三人は、酒臭くないような?
「止せばの良いかもしれないが、気になるので跡を付けてみよう」と思い、酔っぱらいのあとを付けて行くことにした。
日も沈み、暗闇の中を進む三人の酔っぱらいだが、いつの間にか、普通に歩いていた。
酔いが冷めたのか?
それとも、初めから酔っていなかったのか?
しかし、マリーには問題があった。
尾行の知識が無かったことだ。
実は、尾行にはやり方もあれば、巻き方も、逃げ方も基本がある。
例えるなら、複数人で網を張ると言えば良いだろうか?
そして、尾行者を仕留める場合、背後から歩調を併せられるので、気配に気付かず刺されるわけだ。
そう!
だから!
マリーは、背後から襲われた。
「怪しい女だ」
「ウウウゥー」
前を歩いていた酔っぱらいは、
「おい、捕まえたか?」と、こちらへ寄ってきた。
『そんな、こんなところで、お父さんに会えずに』
宿屋では、次の見張りが交代しようと、降りてきたのだが、マリーがいないので、騒ぎになっていた。
「これは、宿の外に出ていったと?」
「ミーナちゃん、探した方が良いわね」
「よし! 三人一組になって捜索だ。クリスちぃは残って連絡担当になって」
「分かったわ」
「地図を出して、区分けするわ……」
担当も決まり、出掛けようとした際、ジャスミンがヴィルヘルミーナを呼び止めた。
「お頭、これを! 役に立つかも知れない」
「これは、なに?」
「試作品のハンドカノンだよ。マスケット銃の片手版だな。一発撃てば弾込めをしないとイケないけど、その一発を上手く使ってほしいんだ」
「わかったわ。活用させてもらうわ。ありがとう」
そういうと、私はアガーテとアンナを連れて、夜の闇に出撃して行くのであった。
次回の女海賊団は、ハンドカノンが炸裂です。
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